【マネジメント】インテルで学んだグローバルリーダーシップ論 第9回:「部下の失敗を奨励していますか?」ベンチャー経営者に気づきを与える10の質問。(後編)

今やシリコンバレーでも当たり前になっているエクゼクティブコーチング。コーチングを受けると、相手を自分の思うように変えようとするのではなく、自分の側の行動と人との接し方を変えることによって得られる、周りの変化に初めて気づくことができます。 前編に続き、後編でも、リーダーに最短で最大の気づきと自信を与えるための具体的な質問をみていきます。

本記事は新しい働き方ぜんぶがわかるメディア「ビジネスノマドジャーナル」さんの提供で配信しています。

6.仮定の質問:「そのアクションをしたら、その後組織はどう変化しますか?」

仮定で考えるIF質問ですが、ビジョンをつくるとか、コミュニケーションを密にするとか、いろいろなアイデアがでてきた場合、そのアクションで組織がどういう風に変わるかをイメージしてもらいます。
「部下がもっと自律的、能動的にうごいてもらえる」とか、「成長の機会をもらってあとで感謝してもらえる」、「自分がいなくても大丈夫になる」など、そのアクションによってもたらされる結果の具体的で肯定的なイメージと、実際のフィードバックのギャップを考えてみることが大事です。

「必ず成功することが分かっていたら何をしますか?」やりたいことがあっても、過去の経験から、自分で制約条件を付けている場合があります。
「もしなにも制約がなかったら?」、「かならず成功したとしたら?」と思考の枠を広げてもらうことで、可能なオプションを広げてもらうのです。とくにこの質問は、自問自答よりも、第3者であるコーチがおこなうことで、よりはっきりします。

「プロジェクトの最初にもどれるとしたら何をしますか?」、組織がこわれてきた、プロジェクトがうまくいかない、リーダーが強引すぎて退職者が増加したなど、問題がおこってから相談される場合が多いです。
本人が失敗だと思っていても、つぎのプロジェクトでちがうトライアルをできる場合があるからです。もちろん、すでに改善不能の場合もありますが。

「それを誰と一緒にやりますか?」自分の行動を変革しようというほど、問題意識もたかいし、行動力もあるので、いわゆる「できる人」が多い。そういった人は、能力が高いので、なんでも自分でやりたい、完結したいという傾向があります。
そういった人たちに、誰と一緒にやれば成功できるのか、誰に協力をもとめなければいけないのかを考えてもらうことで、ちがう着眼点や可能性がひろがります。

7.育成についての質問:「部下の失敗を奨励していますか?」

新しいことに挑戦させると、ほとんどの場合失敗します。
失敗を糧として成長できるように我慢強くリスクをとって見守れるかが、人材の将来の成長には不可欠です。自分の失敗を笑って話せるようでないと、現場は怖がってあたらしいことに手もだせませんし、胆力もつきません。自分で決断して、実行して、当事者意識をもつ経験を積ませることが、部下の成長におおきく貢献します。

「どういう声をかけていますか?」仕事の進捗だけでなく、その日の気分や、家庭、趣味、週末など、相手によって関心があるところ、あるいは困っているところ、などを聞いているか確認します。
信頼関係がないリーダーは、忙しさにかまけて、あまりコミュニケーションをとらず、自分から声かけせず、仕事の指示だけするケースが多いです。

「部下の隠れた才能は何ですか?」日頃から本人があまり気づいていない才能や長所を探してあげ、それが会社の目標にうまく合致できる行動目標を設定するのがベストです。
引っ込み思案だと思っていても、正確性を求める特徴だと言い換えられます。根気が続かないのは、新しいものを試してみる好奇心が旺盛なのかもしれません。
リーダーは常に、部下が自信をつけられるような、隠れた才能(短所の裏側である場合が多い)を注意して探し、それを認めて勇気付ける役割があります。

「となりの部門の悪口を言っていませんか?」優秀で成果をあげるリーダーの中には、自分の部門をかわいがるが、他の部門の人材がバカだとか。よくわかっていないとか、悪口を言う人がいます。部下がそれを聞くと、マネします。
現在は、商品設計、チャネル、顧客対応など、部門を超えて協働で課題に対処するスピードが、以前よりも数十倍速くなっています。他をまきこむには、日頃から相手に対する尊敬の念が重要です。

8.考え方を聞く質問:「あなたにとっての成長とは何ですか?」

現在の若い人は、自分を成長させてくれる仕事や環境を第一に求めます。
しかし、その成長の意味は人それぞれです。できないことができるようになること、営業がうまくなること、人に気遣いができること、チームを運営すること、どのような具体的イメージがあって、なぜ求めるのかが、その後の目標や課題分析に重要です。

「会社で(これまで)一番つらかった経験は何ですか?」1番つらかった経験をたずねるとほとんどの人はある時間考えます。なかなか即答できる人はいません。
理由や背景を説明してもらってから、「今の状況(課題)はその時とくらべるとどんな感じですか?」と質問します。そうすると、ある程度客観的に、今の状況がそれほど悪くないことに気づきます。ボトムの経験を思い出してもらうことは、その意味から重要です。

「あなたのフィロソフィー(信条・哲学)は何ですか?」必要と思われるところで働きたい、人のためになりたい、信頼されたい、など。その信条がなぜ生まれたのかを聞いてみると、成功体験や達成感などがベースになっています。
私の場合は、キャリアの転換期に、先にオファーを出してくれたところにまず行ってみるという信義をまもるというのがあります。短期的には、給料や待遇がよいところをオファーされても、最初にオファーしてくれた人との約束をまもるというのが、結果的には自分のスキルとネットワークを広げるためにプラスになっています。それにとらわれすぎてもよくありませんが。

「今の仕事では、お金以外に何を求めますか?」会社には入ったが、自分の思った仕事や部署ではいいので、元気がなくなったり、意気消沈して再転職したり、辞めたりする若者が増えています。
就活の時点では、会社を研究して、面接官に気に入られるような対策を取り、内定をもらうのですが、その答えが本当に自分の心の中から出たものでななく、取り繕ったものであるため、綻んできます。ほとんどは自分の中で、回り道をしながら何を学んで身につけていくかを覚悟していくことになります。お金や福利厚生などの条件はあくまで二次的なものに過ぎないのです。

「もし自分を動物に例えると何ですか?」自分で思う感じが、ライオンのように堂々としている、一人が多い、羊のように静かにグループでいるなど。どういう風に見えるか、部下や同僚に聞くのも効果的です。私も、以前はコンドルのように一人でいると言われたので、あまり自分から交わっていないのだと気づくことができました。

9.意思決定させる質問「それは本当にやりたいことですか?」

自分で解決策を出しながら、本当はそれ以外のことを迷っている場合があります。もっと選択肢があるのではないか、リスクをとらなければいけないのではないか、など。特に、自分のキャリアの中で、まわりの環境のために、やりたいことを我慢していたり、迷っているケースなどです。

「背中を押されるには何が必要ですか?」やらなければならなくても、なかなかできない。行動に移せない場合には、どういう問題があるのか、なにがあればできるのか、そのきっかけを具体的にイメージしてもらいます。簡単なことがきっかけだったり、実はなにも制約はなく、自分のプライドを抑えて、「やる」と公言することが一番大事であることがわかるのです。

「XXさん自身のコミットメントはどれぐらいなんでしょうか?」最終的には、どれぐらい自分の行動に約束してくれるのか。そこが、行動を変える習慣を続けるくさびになるので、最後にこのコミットメントを確認してもらいます。そして励まします。

「何人ぐらいの人がそう思っているとイメージできますか?」どうも部下たちとの関係がしっくりいっていない、部下が自分の思ったとおりに動かない感じがするという場合、現実に何人ぐらいの人がそう思っているのか、具体的にイメージしてもらいます。その人自身の努力で、その周囲の部下との関係をどのぐらいまで変えていけるかをイメージしてもらいます。
このケースでは、「この人は本気だな」いうイメージ(本気度)がつたわってない、「口ばっかりだな」、「自分の右腕の人に集中的にコミュニケーションをとらなきゃいけない」、「タイミングを逸するといけない」、「苦しいときにコミュニケーションをとらないといけないな」などいろいろイメージを広げてもらえました。

10.気づきをまとめる質問:「これまで振り返ってみて、なにか気づきはありますか?」

タスクや問題ばかり話し始めたり、解決策がうかばなくて、どうどうめぐりになってしまうことがあります。途中で、一度立ち止まって、機能しているかどうか問いかけるのが有効です。「これまでなにか気づきはありますか?」、「このコーチングは機能していますか?」など、振り返りの中で、効果的かどうか、気づきがあったか考えてもらいます。自分の口から、気づいたことを話すことで、その後の行動変革への約束へとつながります。

また、「今まで話された中で、自分でよいと思われるアイデアはありますか?」と自分が考える一番よいと思うアイデアの理由を説明してもらうことも意味があります。それが相手自身が考える、現時点での最善の方法だからです。

「最後に何か言い忘れたことはありますか?」、一つ聞きたいのですが、とかふっと核心をつく質問や、なんとなく気になっていたことを質問します。昔のTVドラマのコロンボ刑事のように。油断しているので、本当の気持ちや、言いにくかったことなどを話してくれる場合があります。連発すると警戒されますが、思考の枠をはずす質問としては有効です。「ところで、何か恐れていることはありますか?」かかえている不安に直接話しかけるのです。

いかがでしょう。セルフコーチングや仲間同士で行う質問としても有効ですが、第三者のコーチから質問されることで、考えるスピードも密度も上がります。

次回はコーチングのまとめと、ノマドになってからの体験と今後の進め方についてはなしたいと思います。
(次回へ続く。本連載は週1回の更新を予定しています。)
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