本記事の原稿は、コロナで学校の休校が始まった2020年4月に開校した、オンライン上(Facebook)で学校を提供するプロジェクト「緊急開校 オンライン学校」の立ち上げメンバーの方々に寄稿していただきました。
休校によって子どもたちが自宅に閉じ込められ、生活リズムと学びの習慣が失われていることに危機感を持って集まった有志によるこのプロジェクトは、最終的には延べ1000名を超える参加者を含む、大きな活動の輪となりました。
本記事を掲載する現在、多くの学校は再開していますが、このプロジェクトで実施された様々な学びの企画・実験は、今後の子どもたちの学びや教育を考えるうえで重要なヒントを多く含んだものになっていると考えております。
連載3回目の今回は、「学ぶ楽しさ」を子どもたちに実感してもらうため、先生たちが試行錯誤したオンライン授業が面白くなる仕掛けについて、ご紹介いただきました。
「緊急開校 オンライン学校」Webサイト
https://peraichi.com/landing_pages/view/online-school
(グーテンブック編集部)
プロジェクトWebサイト「緊急開校 オンライン学校」
本記事でご紹介していただいたプロジェクト「緊急開校 オンライン学校」のWebサイトです。
「学ぶ楽しさ」をどう伝えるか
学校の休校対策として実施している「オンライン学校」ですが、学校の授業とまったく同じではなく、「学びの本質」を提供したいという考えが強くありました。「学びの本質」というのは、「学ぶ楽しさ」でもあり、「なぜそれを学ぶのか?」といった問いに対する一つの回答でもあります。
各教科担当の先生は、自宅などからパソコンやスマートフォンを利用し、ライブ配信にて授業を行います。授業中は、見ている子ども達とのやり取りができるよう意識しました。
各教科担当の先生は、自宅などからパソコンやスマートフォンを利用し、ライブ配信にて授業を行います。授業中は、見ている子ども達とのやり取りができるよう意識しました。
Facebook上でコメントを入れてもらい、質問・意見・回答などを求めていきます。既存のe-learningやアプリの授業との差はここにあります。ライブ配信という、先生からは子ども達の顔が見えない環境下であっても、双方向のコミュニケーションを大切にしたいと考えました。
このような仕組みのなかで、「学ぶ楽しさ」をどう実感してもらうか。試行錯誤の中、様々な工夫と仕掛けを考えて実践してきた成果を以下にお伝えします。
このような仕組みのなかで、「学ぶ楽しさ」をどう実感してもらうか。試行錯誤の中、様々な工夫と仕掛けを考えて実践してきた成果を以下にお伝えします。
先生そのものが楽しい
これは基本中の基本かもしれませんが、先生の人柄そのものに興味が持てないと話を聞こうとしません。また、どんなに優秀な先生であっても子どもとの距離が遠ければ、同様にどんなに良い授業をしても子ども達には届きません。
「オンライン学校」の先生は、「勉強きらいを公言する」「キャラクターを衣装から作り上げる」「先生もできなかったことをカミングアウトする」など子ども達との心的距離を縮め、親近感を持ってもらい、まず先生を楽しんでもらうことを徹底しました。難しい顔して授業する先生は一人もいませんでしたし、ある意味ですべての先生が自分自身をオープンにして授業をしていました。
「オンライン学校」の先生は、「勉強きらいを公言する」「キャラクターを衣装から作り上げる」「先生もできなかったことをカミングアウトする」など子ども達との心的距離を縮め、親近感を持ってもらい、まず先生を楽しんでもらうことを徹底しました。難しい顔して授業する先生は一人もいませんでしたし、ある意味ですべての先生が自分自身をオープンにして授業をしていました。
双方向の「フリ」と「ツッコミ」
先生に興味を持ってもらい、先生との距離を近くしてもらえたら、次は授業です。ただ講義をするだけの形では、せっかく築いた心的距離も遠ざかってしまいます。ここでは、オンラインの授業であっても、双方向のコミュニケーションを活発化させることで、授業そのものの流れを楽しんでもらいました。
対面での従業であれば、指名して答えを聞く、黒板に書いてもらう、グループで話し合ってもらうなど、様々な手法がとれますが、今回はオンラインでのライブ配信(受講者の顔すら見えない)という制約条件の中でどうやって楽しいプロセスを生むかを試行錯誤をくり返しました。
行き着いた答えは「ツッコミ」です。先生からの問いかけにどんどんコメント(テキスト)を入れてもらう、先生の絵や説明について聞きたいことをどんどん遠慮しないで入れてもらうということを総称して「ツッコミ」と呼んでいました。
必ずしも授業の中の問題を振って、答えてもらうという形だけではなく、今日食べたもの、今日見てる地域、誰と見てるか、兄弟何人?といったようなすぐに答えられる質問から、ときには先生の人生相談に似たようなことを問いかけるなど。とにかく、双方向の「フリ」と「ツッコミ」の回数を増やしていきました。
同時に入れてくれた「ツッコミ」をできる限り取り上げて、話題にすることも重要視していきました。子ども達が勇気を持って入れてくれた「ツッコミ」を楽しい先生が受けてリアクションする。このプロセスをくり返すことで、どんな授業であってもその進め方に対して、とても楽しんでもらえたと思っています。40分~50分の授業ですが、その間に200件を超す「ツッコミ」が寄せられることも珍しくなかったです。
対面での従業であれば、指名して答えを聞く、黒板に書いてもらう、グループで話し合ってもらうなど、様々な手法がとれますが、今回はオンラインでのライブ配信(受講者の顔すら見えない)という制約条件の中でどうやって楽しいプロセスを生むかを試行錯誤をくり返しました。
行き着いた答えは「ツッコミ」です。先生からの問いかけにどんどんコメント(テキスト)を入れてもらう、先生の絵や説明について聞きたいことをどんどん遠慮しないで入れてもらうということを総称して「ツッコミ」と呼んでいました。
必ずしも授業の中の問題を振って、答えてもらうという形だけではなく、今日食べたもの、今日見てる地域、誰と見てるか、兄弟何人?といったようなすぐに答えられる質問から、ときには先生の人生相談に似たようなことを問いかけるなど。とにかく、双方向の「フリ」と「ツッコミ」の回数を増やしていきました。
同時に入れてくれた「ツッコミ」をできる限り取り上げて、話題にすることも重要視していきました。子ども達が勇気を持って入れてくれた「ツッコミ」を楽しい先生が受けてリアクションする。このプロセスをくり返すことで、どんな授業であってもその進め方に対して、とても楽しんでもらえたと思っています。40分~50分の授業ですが、その間に200件を超す「ツッコミ」が寄せられることも珍しくなかったです。
イメージや見えないものを”見える化”する
イメージできないものに対して、人は楽しいと思いにくく、その先を学ぼうという考えが生まれません。そのため、ただ教科書に書いてある文字を並べるだけでは子ども達は退屈し、すぐに授業をドロップアウトしてしまいます。
そこで我々の授業では、あるあるネタやイメージしやすいイラストを多用し、「見えないものを見える化する」ことでおもしろさを実感してもらえるよう工夫しました。ときには実験なども取り入れ、実感を伴った理解につながるよう意識しました。
中学1年理科「雨が降る仕組み」の実践例を紹介します。
そこで我々の授業では、あるあるネタやイメージしやすいイラストを多用し、「見えないものを見える化する」ことでおもしろさを実感してもらえるよう工夫しました。ときには実験なども取り入れ、実感を伴った理解につながるよう意識しました。
中学1年理科「雨が降る仕組み」の実践例を紹介します。
雨が降る仕組みを説明するときに「空気中には水蒸気が存在し、空気の温度が低くなるとその水蒸気は冷やされて水の粒になったり、氷の粒になったりします。それが飽和水蒸気量の関係で下に落ちてくる現象が雨です。」などと伝えたところで、子どもはちんぷんかんぷんです。
「オンライン学校」の授業では、子ども一人ひとりに、コップに入った氷水を準備してもらいました。目の前にあるコップの周りに水滴がつくことで、空気中の水の存在を”見える化"するためです。先生の「あれ?コップの外に水滴がたくさんついていない?」という問いかけに対して、
子ども2「ほんとだ!!」
子ども2「テーブルがビショビショになった」
子ども3「コップが濡れてる」
というようなコメントが大量に寄せられました。
「全員のコップに穴が開いているっていうのは考えにくいよね。実は、目に見えない水が空気中に存在するからなんだよ。」と解説をし、実験を通じて理解してもらうことができました。小学校低学年の子どもからも「おもしろい!」「初めて知った!!」などのコメントが寄せられました。
ただし、わかりやすいと思って出したイラストが、ときには子どもにとってそこまで馴染みがなかったというようなこともありました。対象学年の幅を「小学4年~6年」などと広く設定していることとも関係してくるデメリットの一つなのかもしれません。子どもの実態に沿った資料の提示については、これからも追求していきたいと考えています。
「オンライン学校」の授業では、子ども一人ひとりに、コップに入った氷水を準備してもらいました。目の前にあるコップの周りに水滴がつくことで、空気中の水の存在を”見える化"するためです。先生の「あれ?コップの外に水滴がたくさんついていない?」という問いかけに対して、
子ども2「ほんとだ!!」
子ども2「テーブルがビショビショになった」
子ども3「コップが濡れてる」
というようなコメントが大量に寄せられました。
「全員のコップに穴が開いているっていうのは考えにくいよね。実は、目に見えない水が空気中に存在するからなんだよ。」と解説をし、実験を通じて理解してもらうことができました。小学校低学年の子どもからも「おもしろい!」「初めて知った!!」などのコメントが寄せられました。
ただし、わかりやすいと思って出したイラストが、ときには子どもにとってそこまで馴染みがなかったというようなこともありました。対象学年の幅を「小学4年~6年」などと広く設定していることとも関係してくるデメリットの一つなのかもしれません。子どもの実態に沿った資料の提示については、これからも追求していきたいと考えています。
(次回へ続く)
この記事の著者
■香坂 公嗣(こうさか まさし)さん
株式会社グローレン 代表取締役
18歳で実家を飛び出し、やりたい事が見つからずに1年近く放浪する。
20歳で大学に入学し、生物化学を専攻、25歳で大学院(修士課程)を修了。35歳で起業することだけを決めて、就職活動へ。自分の生い立ちを振り返った時に、恩師と思える人との出会いが転機になっている事に気づき、「教育」分野に興味を持ち、企業内教育、人材育成の分野を学ぶために人事系コンサルティング会社に入社。その後、外資系大手通信会社に転職し、世界規模で展開する企業の教育や世界における日本の立ち位置、多様性などを肌で感じる。在職時に副業として、子ども向け英会話スクールなどの運営等も携わり、子どもたちの可能性や才能の豊かさに触れる。35歳を機に退職し、教育分野での起業を決め、株式会社グローレンを創業。現在は、教育格差問題や地域活性化など様々な社会課題を「事業を通して解決する」ため多数のプロジェクトを行っている。
■及川 政孝(おいかわ まさたか)さん
株式会社シーエフエス 取締役/子別指導塾Abilis 代表
学生時代は勉強嫌いでずっと座っていることができず授業を妨害するのは日常茶飯事。「なんで勉強するの!?」と常に思っていた問題児。社会人になり約10年間で延べ1万人の経営者と出会い社会で必要な力は学校の成績とほとんど関係ないことを知る。様々な学びをする中で”学び方”というものに出会い勉強嫌いが無くなった経験から幼少期から「なぜ学ぶのか?」そして「どのように学ぶのか?」を身に付ける必要性を感じ学び方を伝える子別指導塾をスタート。その後公立中学校の学習支援授業にも関わる。その他日本各地に家庭内共育を浸透させるための講演会も開催中。【社会は企業がつくり 企業は人が創り 人格は家庭で創られる】のポリシーのもと事業を通じて社会課題に取り組む中小企業のコミュニティも運営し多面的な角度から持続可能な社会構築のため挑戦している。
株式会社グローレン 代表取締役
18歳で実家を飛び出し、やりたい事が見つからずに1年近く放浪する。
20歳で大学に入学し、生物化学を専攻、25歳で大学院(修士課程)を修了。35歳で起業することだけを決めて、就職活動へ。自分の生い立ちを振り返った時に、恩師と思える人との出会いが転機になっている事に気づき、「教育」分野に興味を持ち、企業内教育、人材育成の分野を学ぶために人事系コンサルティング会社に入社。その後、外資系大手通信会社に転職し、世界規模で展開する企業の教育や世界における日本の立ち位置、多様性などを肌で感じる。在職時に副業として、子ども向け英会話スクールなどの運営等も携わり、子どもたちの可能性や才能の豊かさに触れる。35歳を機に退職し、教育分野での起業を決め、株式会社グローレンを創業。現在は、教育格差問題や地域活性化など様々な社会課題を「事業を通して解決する」ため多数のプロジェクトを行っている。
■及川 政孝(おいかわ まさたか)さん
株式会社シーエフエス 取締役/子別指導塾Abilis 代表
学生時代は勉強嫌いでずっと座っていることができず授業を妨害するのは日常茶飯事。「なんで勉強するの!?」と常に思っていた問題児。社会人になり約10年間で延べ1万人の経営者と出会い社会で必要な力は学校の成績とほとんど関係ないことを知る。様々な学びをする中で”学び方”というものに出会い勉強嫌いが無くなった経験から幼少期から「なぜ学ぶのか?」そして「どのように学ぶのか?」を身に付ける必要性を感じ学び方を伝える子別指導塾をスタート。その後公立中学校の学習支援授業にも関わる。その他日本各地に家庭内共育を浸透させるための講演会も開催中。【社会は企業がつくり 企業は人が創り 人格は家庭で創られる】のポリシーのもと事業を通じて社会課題に取り組む中小企業のコミュニティも運営し多面的な角度から持続可能な社会構築のため挑戦している。
本連載は今夏に書籍化・出版を予定しています
本記事連載は、Webで繋がって作る100ページ本の出版を通して、コロナを乗り越えてゆく挑戦・活動を伝えるプロジェクト「SHIFT challenge book」で書籍化を予定しています。
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