本記事の原稿は、コロナで学校の休校が始まった2020年4月に開校した、オンライン上(Facebook)で学校を提供するプロジェクト「緊急開校 オンライン学校」の立ち上げメンバーの方々に寄稿していただきました。
休校によって子どもたちが自宅に閉じ込められ、生活リズムと学びの習慣が失われていることに危機感を持って集まった有志によるこのプロジェクトは、最終的には延べ1000名を超える参加者を含む、大きな活動の輪となりました。
本記事を掲載する現在、多くの学校は再開していますが、このプロジェクトで実施された様々な学びの企画・実験は、今後の子どもたちの学びや教育を考えるうえで重要なヒントを多く含んだものになっていると考えております。
「緊急開校 オンライン学校」Webサイト
https://peraichi.com/landing_pages/view/online-school
(グーテンブック編集部)
プロジェクトWebサイト「緊急開校 オンライン学校」
本記事でご紹介していただいたプロジェクト「緊急開校 オンライン学校」のWebサイトです。
コロナによる休校が引き起こした「学びの機会の損失」
新型コロナウイルス感染症が日本にとって対岸の火事ではなくなったのは、2020年2月、ダイヤモンドプリンセス号が横浜港に来航した頃ではないかと思います。
教育現場ではまず「休校」を打ち出すことを第一に考え、児童・生徒達を自宅待機としました。学校に通うはずだった子ども達は、休校となったことで、月曜から金曜、朝から夕方までの予定がすべてなくなってしまったわけです。これまで当たり前だった「朝起きて、学校へ行き、友達と会い、授業を受ける」といった日常が一瞬で奪い取られたといっても過言ではありません。
また、学校に行くことで担保されていた「自分」と「学び」を結びつけることができなくなる子ども達も増えてきました。単に学校という「場」を失っただけでなく、共同体という形で提供されてきた学びの機会と内容を、主体的に探す必要に迫られることになったわけです。
つまり、学校というある種の共同体により、「学ぶ機会」と「学ぶ内容」を受動的に手にしてきた子ども達は、休校を機に突然「主体性」を求められるようになったわけです。単に「学びの機会の損失」とも言えるかもしれません。ここに新型コロナウイルス感染症が引き起こした、教育現場の問題があるように思います。
教育現場ではまず「休校」を打ち出すことを第一に考え、児童・生徒達を自宅待機としました。学校に通うはずだった子ども達は、休校となったことで、月曜から金曜、朝から夕方までの予定がすべてなくなってしまったわけです。これまで当たり前だった「朝起きて、学校へ行き、友達と会い、授業を受ける」といった日常が一瞬で奪い取られたといっても過言ではありません。
また、学校に行くことで担保されていた「自分」と「学び」を結びつけることができなくなる子ども達も増えてきました。単に学校という「場」を失っただけでなく、共同体という形で提供されてきた学びの機会と内容を、主体的に探す必要に迫られることになったわけです。
つまり、学校というある種の共同体により、「学ぶ機会」と「学ぶ内容」を受動的に手にしてきた子ども達は、休校を機に突然「主体性」を求められるようになったわけです。単に「学びの機会の損失」とも言えるかもしれません。ここに新型コロナウイルス感染症が引き起こした、教育現場の問題があるように思います。
「オンライン学校」の取り組みを共有する理由 ー「当たり前」をほどき、結び直す準備をー
「オンライン学校」は、Facebookを活用して双方向の授業を行うプロジェクトです。休校中の子ども達に対して、「学びの機会」を提供するため、想いに共感した大人達が集まり、本当の学びとは何か? 教育とはどうあるべきか? を自らに問い直し、親と子どもで共に学び育つことができる「共育」をコンセプトに作り上げました。
2020年上半期、世界は新型コロナウイルス感染症という未知の禍に直面し、社会を司るシステムのほとんどが機能不全に陥りました。実体経済が毀損され、企業の働き方すらも強制的に変えられ、”new normal”の言葉に代表されるように、新しい「何か」を始めなければいけない局面を迎えています。
このことは、これまでの価値観が揺らいでいるということなのではないかと考えています。危機によって生み出された、意識や価値観の揺らぎがある今だからこそ、子どもの教育、本当の学び、既存の教育制度や親の関わり方を問い直し、結び直す機会になると思います。新しいことを始めるには「ほどき」と「結び」が必要だと思います。今はまさにその「ほどき」の時期ではないでしょうか。正しい答えはありません。そして誰にもわからないでしょう。
今までの「当たり前」をほどき、結び直す準備に、本記事が少しでもお役立ていただけることを願っています。
2020年上半期、世界は新型コロナウイルス感染症という未知の禍に直面し、社会を司るシステムのほとんどが機能不全に陥りました。実体経済が毀損され、企業の働き方すらも強制的に変えられ、”new normal”の言葉に代表されるように、新しい「何か」を始めなければいけない局面を迎えています。
このことは、これまでの価値観が揺らいでいるということなのではないかと考えています。危機によって生み出された、意識や価値観の揺らぎがある今だからこそ、子どもの教育、本当の学び、既存の教育制度や親の関わり方を問い直し、結び直す機会になると思います。新しいことを始めるには「ほどき」と「結び」が必要だと思います。今はまさにその「ほどき」の時期ではないでしょうか。正しい答えはありません。そして誰にもわからないでしょう。
今までの「当たり前」をほどき、結び直す準備に、本記事が少しでもお役立ていただけることを願っています。
1日2回決まった時間で授業を始めたFacebook上の「オンライン学校」
「オンライン学校」の仕組みは、SNSであるFacebookに公開グループページを作り、そのページ上で授業をライブ配信するというものです。Facebookを利用した理由は、デジタル環境による学習の質の差を最小限にするためです。
平日は、国語・算数・理科・社会・英語の授業を実施し、授業の内容によって対象となる学年を分けました。各教科担当の先生は、自宅などからパソコンやスマートフォンを利用し、ライブ配信にて授業を行います。
授業中は、見ている子ども達とのやり取りができるよう意識しました。Facebook上でコメントを入れてもらい、質問・意見・回答などを求めていきます。既存のe-learningやアプリの授業との差はここにあります。ライブ配信という、先生からは子ども達の顔が見えない環境下であっても、双方向のコミュニケーションを大切にしたいと考えました。
また、土日には、教科の枠組みから離れた「特別授業」を実施しました。学校では出会えない大人との出会いの場を設けることで、お金のこと、働くこと、地球のこと、夢のことなど、実社会に近い内容を学べる時間としました。
平日は、国語・算数・理科・社会・英語の授業を実施し、授業の内容によって対象となる学年を分けました。各教科担当の先生は、自宅などからパソコンやスマートフォンを利用し、ライブ配信にて授業を行います。
授業中は、見ている子ども達とのやり取りができるよう意識しました。Facebook上でコメントを入れてもらい、質問・意見・回答などを求めていきます。既存のe-learningやアプリの授業との差はここにあります。ライブ配信という、先生からは子ども達の顔が見えない環境下であっても、双方向のコミュニケーションを大切にしたいと考えました。
また、土日には、教科の枠組みから離れた「特別授業」を実施しました。学校では出会えない大人との出会いの場を設けることで、お金のこと、働くこと、地球のこと、夢のことなど、実社会に近い内容を学べる時間としました。
「学びの本質」を提供するために
平日の教科は、国語・算数・理科・社会・英語に加えて「学び方」という独自コンテンツを入れていきました。これは、子ども達が学ぶ上でどこにつまずき、どんなことで学ぶ意欲や学ぼうとする思考が止まってしまうのかを言語化し、その「つまずき」を克服するための方法をお伝えするものです。学ぶことが楽しいと思える特効薬とでも言いましょうか。ちょっとしたことで、つまずきや「わからない」を防ぐことができるのです。
教科の授業も、一般の学校で行われる教科書学習ではなく、オリジナルの内容となっています。国語はなぜ必要なのか、理科とは何か、社会を学ぶ意味は、といったそれぞれの教科の在り方に立脚した授業を実施していきました。その教科から本来得られる学びとは何か?を追求し、実社会と学ぶ教科がつながるような仕組みを考えてきました。
教科の授業も、一般の学校で行われる教科書学習ではなく、オリジナルの内容となっています。国語はなぜ必要なのか、理科とは何か、社会を学ぶ意味は、といったそれぞれの教科の在り方に立脚した授業を実施していきました。その教科から本来得られる学びとは何か?を追求し、実社会と学ぶ教科がつながるような仕組みを考えてきました。
学校とはひと味違う「特別授業」
平日の五教科の授業とは別に、毎週土曜と日曜には特別授業を行ってきました。特別授業のコンセプトは、「大人との出会い」です。
テーマは多岐にわたり、「好奇心の大切さ」「ギフト経済」「食の大切さ」「働くことの意味」「お金とは何か?」といったものから「持続可能とはどういうことか?」「SDGsとは?」「気候変動」といった地球規模の話、そして「夢と志」「プロフェッショナルとは?」「幸福学」といった未来を生きる上で本当に必要な考え方についてお伝えしました。
この特別授業は是非親子で見てもらいたいと考えていました。親御さんにとっても学びの場としていただき、持ち帰った問いについて子どもと一緒に考えてほしいのです。
不確実な未来に生きる子ども達には、親子で共に考え育つ「共育」が不可欠なのではないか。益々不確実性が増し、答えがない社会。その時代に生きる子ども達に必要なことは、自分自身で「問い」を持ち「考え続ける」ことだと考えるようになりました。そのために親子で共に考え、共に育ってほしいという願いも、この特別授業に込めさせていただきました。
テーマは多岐にわたり、「好奇心の大切さ」「ギフト経済」「食の大切さ」「働くことの意味」「お金とは何か?」といったものから「持続可能とはどういうことか?」「SDGsとは?」「気候変動」といった地球規模の話、そして「夢と志」「プロフェッショナルとは?」「幸福学」といった未来を生きる上で本当に必要な考え方についてお伝えしました。
この特別授業は是非親子で見てもらいたいと考えていました。親御さんにとっても学びの場としていただき、持ち帰った問いについて子どもと一緒に考えてほしいのです。
不確実な未来に生きる子ども達には、親子で共に考え育つ「共育」が不可欠なのではないか。益々不確実性が増し、答えがない社会。その時代に生きる子ども達に必要なことは、自分自身で「問い」を持ち「考え続ける」ことだと考えるようになりました。そのために親子で共に考え、共に育ってほしいという願いも、この特別授業に込めさせていただきました。
(次回へ続く)
この記事の著者
■香坂 公嗣(こうさか まさし)さん
株式会社グローレン 代表取締役
18歳で実家を飛び出し、やりたい事が見つからずに1年近く放浪する。
20歳で大学に入学し、生物化学を専攻、25歳で大学院(修士課程)を修了。35歳で起業することだけを決めて、就職活動へ。自分の生い立ちを振り返った時に、恩師と思える人との出会いが転機になっている事に気づき、「教育」分野に興味を持ち、企業内教育、人材育成の分野を学ぶために人事系コンサルティング会社に入社。その後、外資系大手通信会社に転職し、世界規模で展開する企業の教育や世界における日本の立ち位置、多様性などを肌で感じる。在職時に副業として、子ども向け英会話スクールなどの運営等も携わり、子どもたちの可能性や才能の豊かさに触れる。35歳を機に退職し、教育分野での起業を決め、株式会社グローレンを創業。現在は、教育格差問題や地域活性化など様々な社会課題を「事業を通して解決する」ため多数のプロジェクトを行っている。
■及川 政孝(おいかわ まさたか)さん
株式会社シーエフエス 取締役/子別指導塾Abilis 代表
学生時代は勉強嫌いでずっと座っていることができず授業を妨害するのは日常茶飯事。「なんで勉強するの!?」と常に思っていた問題児。社会人になり約10年間で延べ1万人の経営者と出会い社会で必要な力は学校の成績とほとんど関係ないことを知る。様々な学びをする中で”学び方”というものに出会い勉強嫌いが無くなった経験から幼少期から「なぜ学ぶのか?」そして「どのように学ぶのか?」を身に付ける必要性を感じ学び方を伝える子別指導塾をスタート。その後公立中学校の学習支援授業にも関わる。その他日本各地に家庭内共育を浸透させるための講演会も開催中。【社会は企業がつくり 企業は人が創り 人格は家庭で創られる】のポリシーのもと事業を通じて社会課題に取り組む中小企業のコミュニティも運営し多面的な角度から持続可能な社会構築のため挑戦している。
株式会社グローレン 代表取締役
18歳で実家を飛び出し、やりたい事が見つからずに1年近く放浪する。
20歳で大学に入学し、生物化学を専攻、25歳で大学院(修士課程)を修了。35歳で起業することだけを決めて、就職活動へ。自分の生い立ちを振り返った時に、恩師と思える人との出会いが転機になっている事に気づき、「教育」分野に興味を持ち、企業内教育、人材育成の分野を学ぶために人事系コンサルティング会社に入社。その後、外資系大手通信会社に転職し、世界規模で展開する企業の教育や世界における日本の立ち位置、多様性などを肌で感じる。在職時に副業として、子ども向け英会話スクールなどの運営等も携わり、子どもたちの可能性や才能の豊かさに触れる。35歳を機に退職し、教育分野での起業を決め、株式会社グローレンを創業。現在は、教育格差問題や地域活性化など様々な社会課題を「事業を通して解決する」ため多数のプロジェクトを行っている。
■及川 政孝(おいかわ まさたか)さん
株式会社シーエフエス 取締役/子別指導塾Abilis 代表
学生時代は勉強嫌いでずっと座っていることができず授業を妨害するのは日常茶飯事。「なんで勉強するの!?」と常に思っていた問題児。社会人になり約10年間で延べ1万人の経営者と出会い社会で必要な力は学校の成績とほとんど関係ないことを知る。様々な学びをする中で”学び方”というものに出会い勉強嫌いが無くなった経験から幼少期から「なぜ学ぶのか?」そして「どのように学ぶのか?」を身に付ける必要性を感じ学び方を伝える子別指導塾をスタート。その後公立中学校の学習支援授業にも関わる。その他日本各地に家庭内共育を浸透させるための講演会も開催中。【社会は企業がつくり 企業は人が創り 人格は家庭で創られる】のポリシーのもと事業を通じて社会課題に取り組む中小企業のコミュニティも運営し多面的な角度から持続可能な社会構築のため挑戦している。
本連載は今夏に書籍化・出版を予定しています
本記事連載は、Webで繋がって作る100ページ本の出版を通して、コロナを乗り越えてゆく挑戦・活動を伝えるプロジェクト「SHIFT challenge book」で書籍化を予定しています。
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