コロナ休校に対して始めた1日2回のFacebook上の学校。取り戻したかったものは子どもの生活リズムと学びの習慣(連載第1回)

2020年3月、突然の休校により一変した教育現場。子ども達が奪われた「学びの場」を取り戻すため「オンライン学校」という新しい教育プロジェクトが立ち上がりました。既存のe-learnigとは異なり、リアルタイム配信、学びの本質の追求、双方向のコミュニケーションにこだわった画期的な取り組み。Withコロナの時代、これまでの学校と家庭の役割を見つめ直し、新しい教育の在り方を考えるきっかけとして、この記事を広く活用していただけることを願っています。

本記事の原稿は、コロナで学校の休校が始まった2020年4月に開校した、オンライン上(Facebook)で学校を提供するプロジェクト「緊急開校 オンライン学校」の立ち上げメンバーの方々に寄稿していただきました。
休校によって子どもたちが自宅に閉じ込められ、生活リズムと学びの習慣が失われていることに危機感を持って集まった有志によるこのプロジェクトは、最終的には延べ1000名を超える参加者を含む、大きな活動の輪となりました。
本記事を掲載する現在、多くの学校は再開していますが、このプロジェクトで実施された様々な学びの企画・実験は、今後の子どもたちの学びや教育を考えるうえで重要なヒントを多く含んだものになっていると考えております。

「緊急開校 オンライン学校」Webサイト
https://peraichi.com/landing_pages/view/online-school

(グーテンブック編集部)

コロナによる休校が引き起こした「学びの機会の損失」

新型コロナウイルス感染症が日本にとって対岸の火事ではなくなったのは、2020年2月、ダイヤモンドプリンセス号が横浜港に来航した頃ではないかと思います。

教育現場ではまず「休校」を打ち出すことを第一に考え、児童・生徒達を自宅待機としました。学校に通うはずだった子ども達は、休校となったことで、月曜から金曜、朝から夕方までの予定がすべてなくなってしまったわけです。これまで当たり前だった「朝起きて、学校へ行き、友達と会い、授業を受ける」といった日常が一瞬で奪い取られたといっても過言ではありません。

また、学校に行くことで担保されていた「自分」と「学び」を結びつけることができなくなる子ども達も増えてきました。単に学校という「場」を失っただけでなく、共同体という形で提供されてきた学びの機会と内容を、主体的に探す必要に迫られることになったわけです。

つまり、学校というある種の共同体により、「学ぶ機会」と「学ぶ内容」を受動的に手にしてきた子ども達は、休校を機に突然「主体性」を求められるようになったわけです。単に「学びの機会の損失」とも言えるかもしれません。ここに新型コロナウイルス感染症が引き起こした、教育現場の問題があるように思います。

「オンライン学校」の取り組みを共有する理由 ー「当たり前」をほどき、結び直す準備をー

「オンライン学校」は、Facebookを活用して双方向の授業を行うプロジェクトです。休校中の子ども達に対して、「学びの機会」を提供するため、想いに共感した大人達が集まり、本当の学びとは何か? 教育とはどうあるべきか? を自らに問い直し、親と子どもで共に学び育つことができる「共育」をコンセプトに作り上げました。

2020年上半期、世界は新型コロナウイルス感染症という未知の禍に直面し、社会を司るシステムのほとんどが機能不全に陥りました。実体経済が毀損され、企業の働き方すらも強制的に変えられ、”new normal”の言葉に代表されるように、新しい「何か」を始めなければいけない局面を迎えています。

このことは、これまでの価値観が揺らいでいるということなのではないかと考えています。危機によって生み出された、意識や価値観の揺らぎがある今だからこそ、子どもの教育、本当の学び、既存の教育制度や親の関わり方を問い直し、結び直す機会になると思います。新しいことを始めるには「ほどき」と「結び」が必要だと思います。今はまさにその「ほどき」の時期ではないでしょうか。正しい答えはありません。そして誰にもわからないでしょう。
 
今までの「当たり前」をほどき、結び直す準備に、本記事が少しでもお役立ていただけることを願っています。

1日2回決まった時間で授業を始めたFacebook上の「オンライン学校」

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オンライン学校はFacebook上の動画ライブ配信を使って開校した
「オンライン学校」の仕組みは、SNSであるFacebookに公開グループページを作り、そのページ上で授業をライブ配信するというものです。Facebookを利用した理由は、デジタル環境による学習の質の差を最小限にするためです。

平日は、国語・算数・理科・社会・英語の授業を実施し、授業の内容によって対象となる学年を分けました。各教科担当の先生は、自宅などからパソコンやスマートフォンを利用し、ライブ配信にて授業を行います。

授業中は、見ている子ども達とのやり取りができるよう意識しました。Facebook上でコメントを入れてもらい、質問・意見・回答などを求めていきます。既存のe-learningやアプリの授業との差はここにあります。ライブ配信という、先生からは子ども達の顔が見えない環境下であっても、双方向のコミュニケーションを大切にしたいと考えました。

また、土日には、教科の枠組みから離れた「特別授業」を実施しました。学校では出会えない大人との出会いの場を設けることで、お金のこと、働くこと、地球のこと、夢のことなど、実社会に近い内容を学べる時間としました。
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時間割
4月20日の授業スタートから、5月末までの約40日間の時間割です。子ども達が生活のリズムを作りやすいように、平日は10:00~11:00と13:00~14:00に二科目の教科学習を配信、土日は特別授業という形をとりました。

「学びの本質」を提供するために

平日の教科は、国語・算数・理科・社会・英語に加えて「学び方」という独自コンテンツを入れていきました。これは、子ども達が学ぶ上でどこにつまずき、どんなことで学ぶ意欲や学ぼうとする思考が止まってしまうのかを言語化し、その「つまずき」を克服するための方法をお伝えするものです。学ぶことが楽しいと思える特効薬とでも言いましょうか。ちょっとしたことで、つまずきや「わからない」を防ぐことができるのです。

教科の授業も、一般の学校で行われる教科書学習ではなく、オリジナルの内容となっています。国語はなぜ必要なのか、理科とは何か、社会を学ぶ意味は、といったそれぞれの教科の在り方に立脚した授業を実施していきました。その教科から本来得られる学びとは何か?を追求し、実社会と学ぶ教科がつながるような仕組みを考えてきました。

学校とはひと味違う「特別授業」

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平日の五教科の授業とは別に、毎週土曜と日曜には特別授業を行ってきました。特別授業のコンセプトは、「大人との出会い」です。

テーマは多岐にわたり、「好奇心の大切さ」「ギフト経済」「食の大切さ」「働くことの意味」「お金とは何か?」といったものから「持続可能とはどういうことか?」「SDGsとは?」「気候変動」といった地球規模の話、そして「夢と志」「プロフェッショナルとは?」「幸福学」といった未来を生きる上で本当に必要な考え方についてお伝えしました。

この特別授業は是非親子で見てもらいたいと考えていました。親御さんにとっても学びの場としていただき、持ち帰った問いについて子どもと一緒に考えてほしいのです。

不確実な未来に生きる子ども達には、親子で共に考え育つ「共育」が不可欠なのではないか。益々不確実性が増し、答えがない社会。その時代に生きる子ども達に必要なことは、自分自身で「問い」を持ち「考え続ける」ことだと考えるようになりました。そのために親子で共に考え、共に育ってほしいという願いも、この特別授業に込めさせていただきました。
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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部