魅力的なCSRウェブはこう作る。基本ポイント再チェック!

【連載第3回】近年、CSRの領域におけるWEB活用型コミュニケーション(デジタルコミュニケーション)の重要度が高まっています。この連載では、CSR情報のWEBサイト制作におけるポイント、ソーシャルメディアの活用方法など、具体的な事例を紹介しながら、CSR担当者が取り組むべき様々な課題について分かりやすく解説します。 連載第3回の今回は、より多くの人に適切に情報発信を行うための「4つのポイント」の中から、「②サイトの内容と見直しと充実」「③ユーザーとのコミュニケーションの強化」「④外部メディアの積極的活用」についてご説明します。

記事のポイント

●画像や動画を効果的に使い、ぱっと見て興味を持てるサイトに。
●現場に書いてもらうことで、伝わる内容に。
●アンケートなどを活用し、双方向コミュニケーションを。
●CSR専門の外部メディアを使い、さらに広く情報発信を。
●プレスリリースサイトや、検索エンジンマーケティングを利用して拡散していく方法も。

*この連載記事は2016年3月発行の書籍『CSRデジタルコミュニケーション入門(著:安藤 光展, 猪又 陽一, 江田 健二)』の内容をもとに再編集しお届けしています。
http://g10book.jp/book/info/release/csrbook

前回までの記事はこちら

●連載第1回:わかってはいるけれど・・・なかなか手が回らない!?CSR担当者の本音
http://biblion.jp/articles/BUa7G

●連載第2回:押さえておくべき「CSRウェブでの情報発信、4つのポイント」
http://biblion.jp/articles/9KWfP

ポイント②:サイトの内容の見直しと充実

ユーザーが興味を“もてない”サイトの内容とは

アクセス解析ツールで誰が・なぜ・どのように・どうやってサイトを閲覧しているのかを把握したら、その情報をもとにしつつ、ユーザーに興味を持ってもらえるようなサイトの内容を準備していきましょう。

ユーザーに興味をもってもらえるようなサイトの内容をイメージするには、まず逆にわかりにくいサイトの内容にどのようなものがあるかを考えてみるとよいでしょう。

例えば文字や文書ファイル(PDFファイル)そのものがずらっと並んでいるようなサイトは、パッと見た時に何を言いたいのかが汲み取りにくいですよね。せっかく大量の文字でデータの詳細を伝えても、サイト上で細かい文字を読むのは大変ですから、多くの人にとっては読む気がなくなってしまいます。【図1】

CSR報告書などの紙という媒体とウェブサイトという媒体の性質はかなり異なるものであるということを認識しておく必要があります。
図1

図1

テキストとPDFばかりの場合や更新が滞っている場合、ユーザーの興味を引くのが困難になる
また、最後の更新が1年前のものになっているウェブサイトはどうでしょうか。ウェブサイトが1年間、更新されないまま放置されている=あまり力を入れていないとの印象を与えることも避けるべきです。作り手が想像する以上に、ウェブサイトを訪れた人は、見やすさや情報の鮮度といった点を気にするものです。

動画や写真を活用しよう

では、どのようなページであればユーザーの興味を引くことができるでしょうか。最近のトレンドは動画や写真を活用することです。動画や写真はパッと見ただけで言わんとすることがわかりますし、閲覧者の印象にも残りやすいため、より多くの方に興味を持って見ていただけます。通信回線やパソコンの性能アップにより、動画の閲覧も以前に比べて、とてもスムーズになってきています。

活用事例としては、ライオン株式会社の「生物多様性保全への取り組み」について掲載したCSR情報のウェブサイトがあります。生物多様性という概念は多少複雑であるため、どうしても難しい表や文章で説明したくなってしまいがちですが、ライオンの「自社の取り組みをより多くの方に伝えたい」との要望を受け、生物多様性に関する取り組みをわかりやすく図にまとめるお手伝いをさせていただきました。関連性のあるイラストを加えることで、パッと見ただけでもどういうことをしているのかがわかるようになります。
また、ライオンでは各工場で生物多様性保全への取り組みを行なっています。それらの活動をよりわかりやすく伝えるため、各工場の工場長・職員と本部のCSR担当者の方が協力して、各工場の環境活動内容や写真を定期的にアップするという取り組みをしています。

このように、動画や写真を活用することは、より多くの方に見ていただけるようなサイトの内容を作り上げる方法の1つです。

記事制作の下書きは現場に任せてみよう

読ませるサイト、充実したサイトであるために、時にはCSR部以外の従業員の方に、記事の下書きに協力してもらうことも大切です。

CSR担当者が一方的に記事をまとめたサイトは、どうしても「活動紹介」の色が濃くなってしまいます。それに比べ、現場の従業員が書いた記事は、「現場からのCSR報告」として主体性をもった骨太のメッセージとなって、読者に伝わり、共感をもっていただけます。

お願いした従業員の方にとっては、CSRの記事を書くということは、自身の仕事や自社そのものについてCSRの目線で考えることになります。新たな働きがいを発見し、自社へのロイヤリティをもって自発的に行動するきっかけとなることはもちろん期待できます。また、ウェブサイトで従業員が発したメッセージは、紙媒体への掲載よりも、家族、友人など周りの人に広く拡散されることも見込まれます。

当然、現場の従業員にとって記事作成は負担増となりますので、反発もあるかもしれませんが、記事の内容は必ずCSR担当者がしっかりチェックするなど、バックアップを約束し、お願いしてみましょう。

ポイント③:ユーザーとのコミュニケーションの強化

ウェブサイトの双方向性を利用する

3つ目のチェックポイントはユーザーとのコミュニケーションの強化です。アクセス解析でウェブサイトを訪れる人のことを知り、その方々に合った内容を掲載したら、次はその方々とのウェブサイトを通じてのコミュニケーションに力を入れましょう。

ウェブサイトの良い点として、一方通行の情報発信を行なうだけでなく、ユーザーとの相互的なやりとりが容易であることが挙げられます。【図2】
図2

図2

双方向機能の実装により、ユーザーからの意見を積極的に取り入れている姿勢を自然と伝える事が可能になる。
CSR報告書(冊子)ですとなかなか双方向のやりとりは難しいのですが、ウェブサイトであれば、質問をできるお問い合わせフォームを作ったり、アンケートページを作ったり、Q&Aページを作ったりすることによって、サイトに訪れた方の声を比較的簡単に集めることができます。
また、色々な声に耳を傾けているという姿勢が、訪れたユーザーにも自然と好印象として伝わります。

アンケートの活用事例

コミュニケーションの方法として代表的なものの1つがアンケートの実施です。アンケートを有効活用しようとされている企業の例を2つご紹介します。

まずは任天堂の例です。任天堂のCSR情報のウェブサイトでは、自社のCSR活動に関するQ&Aページを公開しています。具体的にはアンケートフォームなどから寄せられた質問に答える形で公開されています。
もう1つの事例として、一部上場のアパレル企業の例をご紹介します。こちらの企業は自社の10万人近いメールマガジン会員とCSR活動についてコミュニケーションを行なっています。1年に1度、メールマガジンにてアンケートへの回答を依頼しています。このアンケートを行なうことで自社が行なったCSR活動を間接的に伝えることにも役立っています。

驚くことにアンケートは、60問におよび、回答には、10〜20分程度かかると思いますが、おおよそ10万人にこのアンケートを送ると、2,000人レベルで回答が返ってきます。そこで寄せられた生の声は、今後のCSR活動をどのように進めていくかにとても役立ちます。例えば、お客様の多くが社内で想定していたCSR活動とは異なる活動に高い興味をもっているという事実を発見することもあるそうです。また、競合他社のCSR活動に対する評価を聞くこともできます。

以上のように、ウェブサイトを活用することで、ユーザーの生の声を比較的容易に集めることができます。その声は今後の自社の活動に活かされますし、声を集めようとする姿勢そのものが自社のファンを増やすことにもつながります。

ポイント④:外部メディアの積極的活用

CSR専門外部メディアの例:CSR JAPANとオルタナ

ユーザーを把握し、ユーザーに合わせたサイトの内容を構築し、ユーザーとのコミュニケーションがある程度軌道に乗ったら、次はCSR活動を紹介している外部のメディアを活用してより多くの情報を発信していきましょう。

CSR活動への関心の高まりとともに様々な外部メディアが誕生しています。そのようなサイトで紹介してもらうことで、企業のCSR活動に関心の高いユーザーにPRすることができます。ここでは2つほど紹介させていただきます。

1つはアミタが運営している「CSR JAPAN」というサイトです。こちらではCSRの報告書や活動が紹介されています。CSR担当者へのインタビューなども行っているので、コンタクトをとってみてはいかがでしょうか。
もう1つはオルタナが運営されている「オルタナ」というウェブサイトです。こちらでは色々な会社のCSR活動を特集したりニュースを出したりしています。
こうしたCSR活動を専門的に発信するメディアと積極的に提携することで、効果的に情報を発信することができます。

もう一歩進めた施策

ウェブサイト広告の利用

さらに、もう一歩進めるための取り組みとして、ウェブサイト広告やネットプレスリリースなどの施策をとることもできます。

ウェブサイト広告は、年々進化しており、現在はターゲットや地域などを詳細に絞ってピンポイントで広告を表示することができます。また、一度、自社のCSR情報のウェブサイトに訪れたことのあるユーザーにのみ広告を表示させるテクノロジーなども普及しつつあります。
また、ウェブサイト広告は、これまでの広告に比べて、広告費の費用対効果が明確に把握できる(数値化できる)というメリットがあります。

●ネットプレスリリース

プレスリリースも活用することをおすすめします。
ここで、プレスリリースと広告の違いについて、理解しましょう。さきほどご紹介したウェブサイト広告などを含め、広告とは、一定のメディアのスペースを買い取り、そこで自社の商品やサービスを宣伝することを指します。それに対してプレスリリースとは、世の中に知らせたいことを、報道機関がニュースや記事の材料として使用してくれることを期待しつつ、公式情報として提示することです。

報道機関が「これは報道すべきだ」と判断したプレスリリースは、広告ではなく「記事」として掲載されるため、情報に客観性を伴います。そのため、受け手は、信頼性が高い情報としてその内容を受け取りやすくなるのです。

現在、多様なネットプレスリリースのまとめサイトがありますので、そこに自社のプレスリリースを投稿すること自体も広報活動となります。報道機関やジャーナリストの目にとまれば、多くのメディアに掲載され、拡散されます。広報部などと連携しながら、CSR活動のタイミングでリリースを出していくのがよいと思います。

●検索エンジンマーケティング

また、みなさんの会社でもすでに取り組まれていると思うのですが、検索エンジンマーケティングを行なうことも考えられます。
例えば「○○会社 CSR」と検索した時に自社のCSR情報のウェブサイトがしっかりと検索結果の上位に表示されるようにすることもできます。検索エンジンで自社のウェブサイトが上位に表示されれば、おのずとウェブサイトへのアクセスが増加します。そのような対策を実施することをSEO対策とも言います。

さきほどの外部CSR専門メディアとの連携がひと段落したタイミングで、それ以上に情報を伝えたいという場合にはこれらの方法も検討してはいかがでしょうか。

チェックリスト

ここまで述べてきたことをもう一度振り返りながら、自社の取り組みについてチェックしてみましょう。

1 自社のCSR関連ウェブサイトについて、アクセス解析で調べたいことは何か、整理してみましょう。また、すでにアクセス解析情報を得ている場合は、その情報で十分かどうか検討しましょう。

2  サイト更新頻度はどのくらいか、すぐに答えることはできますか?そして、その更新頻度はユーザーにとって最適かどうか、見直してみましょう。

3  サイトに掲載している動画や画像は、スマートフォンでも快適に閲覧できますか?

4  CSR部が主導となって、プレスリリースを発信したことはありますか?また、広報が発信しているプレスリリースに、目を通していますか?

(次回に続く)

CSRデジタルコミュニケーション入門

1,415
本書は、企業におけるCSR担当者はもちろんの事、広報やIR、経営企画など、コーポレートコミュニケーションに携わる全てのビジネスパーソンに役立つ内容となっています。現代のCSRについて、どなたにも読みやすく、理解しやすく、そしてすぐに実践できる内容としてまとめられた一冊です。
http://g10book.jp/book/info/release/csrbook
43 件

この記事のキーワード