【マネジメント】インテル で学んだグローバルリーダーシップ論 第3回:リーダーシップはスキルであり、才能ではない。

今注目を集めている、マネジメントコーチ(経営者コーチ)。 グローバル企業のインテル在社(21年)中は、オペレーション部門全般(管理/経理/予算)から、技術標準・新規事業開発など幅広く15以上の職務を歴任され、現在は複数の企業やエグゼクティブのマネジメントコーチとして活動される板越正彦さんによる連載です。

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第3回は、「リーダーシップはスキルであり、才能ではない。」です。

今回は日本も含めてアジアで学んだリーダーシップスキルの思い出から振り返ってみます。その中でも、特に印象が強烈だったものは何だったでしょうか。

コミュニケーション:まず「それは二つある(2things)」と言え

最初に私が納得したのは、質問されたら、まず自分の考える答えを「それは二つある(2things)」と言ってしまえと言われたことです。一つだと少ない、三つだと最後を思いつかなかったり、忘れてしまう時がある。だからいつも「2things」と言ってから考えろといわれました。

まず結論を言って、それから簡潔に理由を説明しないと理解してもらえません。よく日本人は、背景の説明からしてしまうので、「わかりにくい」と怒られがちです。また、リーダーはそれぞれ自分の成功体験をもっており、そのために非常に自信がある、だからこそ自分に自信のある人の言うことしか聞かないんですね。たとえまだ答えが見つかっていなくても、最初に 「二つある」とズバッと言ってしまう。これは、非常に役立っている教えです。よく日本のマネジメントでも、見ていて損だなあと思うのは、非常によいことを言っているのに、声が小さくて聞こえないとか、自信がなさそうなので、伝わらないケースです。

声を大きくして、自信をもっているふりをしないと、自信のある人たち(特に経営層)はそれだけでイライラして聞いてくれません。

そのためには3倍大きい声で、3倍ゆっくり、自信あるそぶりで話せるように何回も準備して練習しましょう。私も、かつてプレゼンテーションのワークショップで、ビデオで録画したものを一緒に見て目線やテンポを確認してもらうというレッスンを受けたのですが、これが非常に役に立ちました。

よくわかる旗を立て、簡潔で明快な言葉で周りを引っ張る

リーダーは、ビジョンや、例え(アナロジー)論理など、よくわかる旗を立てて、いろんな文化の人を引っ張っていかなければなりません。インテルでも他の会社でもそうだと思いますが、自分なりの仮説を立てて、それをイメージ化(目新しい表現やフレーズほど良い)して伝えられる人が、やはり評価されやすい傾向にあります。

記憶に残っているものとしては、前回のアンディ・グローブの「不況は必ず終わる(Recession always end)」もそうですが、「つながるために生まれてきた(Born to be wired)」、「無線はタダになる。(Radio Free)」など簡潔で明快な言葉は、印象を与えて周りを引っ張ることができるのです。
かつて、同じくアンディ・グローブが、ムーアの法則の限界について質問された時も、「ゴールは、今ははっきりと見えない。霧のようなものだ。そばまで行くと少し道が見える。少し行くともう少し見える。そうやってすこしずつ進んでいくと40年たったのだ。」 という解答も圧巻でした。

誰も気づいていない、誰も同意しない、あなただけの真実はなにか

時にリーダーは、周りの反対を押し切っても自分の中の真実を追及しなければいけないときもあります。著名な起業家のピーター・ティールも「誰も気づいていない、誰も同意しない、あなただけの真実はなにか」と語っています。

インテル時代、私の上司で日本人ではじめてアメリカ本部でコンシューマー製品事業部長に出世するほど頭が切れる方がいました。その方は、先ほどの「2things」を私に教えてくれた方でもあるのですが、彼は、そのあとも外資系の要職を歴任し、そうして60歳近くになった時に、意外な仕事に就きました、なんとパン屋になったのです。周りでは誰もが意外に思ったのですが、その後、彼は2年間のパン学校やパン屋の修行を経て、成功して今では鎌倉駅の前にビルをたてています。

彼の成功の秘訣はというと、立派な品質のパンというブランドをつくったことです。パン屋をつくるにあたって彼が持っていたのは、「CPUもパンもレシピ(配合)が命であり、最高の配合で最高の素材を使えば最高のものができる」という確信でした。
パン屋を始めるには、パンを作るための機械設備などの初期投資が必要なのですが、競合となる他のパン屋には、ブランドマーケティングの知識があり資本力がある人間が少ないので必ず競争に勝てるというのが、彼の分析でした。
彼がパン屋を始めた当時は、みんな「なんで?」とおもったのですが、彼には勝算があったのです。まさに周りは気づかなかった彼だけの真実があったのでしょう。

失敗から学び、立ち直りを早くする

私の上司であり、インテル日本法人の社長を10年勤めた吉田さん(元インテル株式会社代表取締役社長の吉田和正氏)も、著書にも書いてありますが3回の降格を経験しているそうです。
今年インテルを退任する副社長の宗像さんも、一度最低の人事評価(要改善:Improvement Required ※ほとんど退職勧告に近いため、これをもらって残っている人はあまりいない)をもらいながら、さらには度重なる新規事業の撤退・終息という大変な仕事ばかりを引き受け、長年副社長として業界内で高い評価を得てきました。

失敗、降格、誤解などは非常に辛い体験でもあるのですが、それをいいように意味づけして受け取り、向き合い、自分を磨いていく。最近は"折れない心"(レジリエンス:Resilience)という言葉もよく聞かれますが、「心の体幹トレーニング」を積んでいくのもグローバルリーダーには必要なスキルです。
私の体験で言うと、予算説明会議でうまく説明できなくて、次期CEOから、「私の説明してほしいやり方でやってくれ(Do not reformat my brain!)」 と顔を赤くして怒られたのもいい思い出です。

「早く失敗しろ(Fail faster)」という言葉もあります。失敗を早めにおこなうことで、試行錯誤を繰り返す回数が増え、短所を知り、より確度の高い試みができます。早めに失敗することで、学びの数が増えるのです。
浮動小数点エラーの問題で、インテルが危機に陥った時も、アンディ・グローブは社員全員に「危機にあった時ダメな会社は潰れる。良い会社は生き残る。優れた会社は改善される(Bad Companies are destroyed by Crisis; Good Companies survive them; Great Companies are improved by them.)」というキーホルダーを配りました。

しつこいほどにアピールする

私がアジアのボス(シンガポール人の華僑)の下で2年間勤務していた時、彼の自分の上司への成果のアピールは強烈でした。最上の顧客を落とす以上に、上司への説明力、プレゼンでのキャッチコピー、根回しがすごかったです。それを見て、逆にここまでやらないといけないのかと吹っ切れました。
それから、日本人の中では、大げさなアピール、演技的プレゼンも恥ずかしがらずにできるようになりました。インテルを辞めるときにも「空気を読まない力」についてかなり評価して頂きました。しかし、そのうちつけていると思っていた仮面が脱げなくなってそのまま地だと思われていたのが、送別会の私へのフィードバックでやっとわかりましたが。

一方で、インテルでは、「建設的対立(Constructive Confrontation)」と「賛成はしない、しかし約束する(Disagree but commit)」といった文化がありました。オープンな態度で上下関係なく議論し、上司であっても対立を恐れません。これは他のポリシーである「顧客指向(Customer Oriented)」や、 「冒険(Risk Taking)」などと比較しても「古き良き、成長期の時代の(Old good days)」のインテルのユニークな文化といえます。

インテルのリーダーにみられる最適解を求める偏執狂的な情熱

イーロン・マスク氏の元妻ジャスティンさんは、「あらゆる困難に喜んで挑み、やり遂げたいと思える、強迫観念にも似た強い執念が必要だ」と答えています。

インテルでのシニアリーダー500人が集まるサミットに、2年連続でたまたま出席したことがあるのですが、グループに分かれて、ゲームをやるとみんな非常に負けず嫌いです。勝者への景品はというと、ただ帽子をもらうだけなのですが、それにかかわらず皆がゲームといえども真剣に全知全能を使って限界までやります。インテルのリーダーは、限られた条件の中で、正解ではなく最適解を求めることに対する情熱がパラノイア(偏執狂)的でした。

リーダーシップはスキルであり、生まれもった素質ではない。

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