小室淑恵「長時間労働は『勝つ手段』ではなく『負けの原因』」(連載1回)

【第1回】少子高齢化が進む中、日本社会全体の労働力不足や企業の生産性低下、それに伴う日本人の働き方の見直しが急務となっている。この課題に国や企業はどう対峙していけばよいのか? その課題解決の糸口を探るため、多くの企業や組織にワーク・ライフバランスに関するコンサルティングを提供する株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵氏にお話をうかがいました。

本連載のインタビュアーは、森戸裕一さん(JASISA/一般社団法人 日本中小企業情報化支援協議会)に担当いただきました。

株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長/小室淑恵さん

株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長/小室淑恵さん
今回の連載でお話を伺ったのは、「福利厚生ではない、経営戦略としてのワークライフバランス。」を謳い、様々な企業に働き方のコンサルティングを提供している株式会社ワーク・ライフバランス代表の小室淑恵さんです。

それをやらずに勝てるのか! という発想を捨てましょう

森戸:最初にうかがいたいのは、中小企業における働き方、ワークスタイルの変革についてです。
中小企業では少ない人数で分業せずに一丸となって働くことが多く、なかなか旧来の働き方を変えることができないように思います。
例えば社長が帰るまで社員もずっとそばにいないと仕事が回らないといった状況にも陥りがちです。このあたりはどうお考えですか?
小室:まさにそこが中小企業の問題、課題だと思います。
本当は、社員数の少ない小規模の会社だからこそ、リーダーの決断ひとつで社員はいくらでも柔軟に働けるようになるはずなんです。

私が以前コンサルティングした三重県の企業さんで、中部システムセンターという素晴らしい会社があります。
この会社はすごいワークスタイル変革をしたのですが、一番の肝は社長が一気に社員へ仕事の権限委譲をしたことです。以前は社長がほとんどすべての案件に絡んでいて、それはそれで会社としての機動力が高くてよかった面もあったのですが、社長が一人で仕事を抱え込み過ぎていて、なかなか会社全体の生産性が上がらないという問題がありました。ところが仕事を社員に任せて会社全体の働き方を改善した結果、生産性が132%までアップしたのです。

こうした例からも分かるように、社長や経営層から社員に権限委譲して属人化を排除できさえすれば、中小企業ほどワークスタイル変革の成果が高く出るところはないのではと思います。

イノベーティブな仕事に時間を使おう

森戸:そうですね。中小企業でもトップの決断ひとつで長時間労働を劇的に減らしながらも業績をアップするということはできるはずですよね。

小室:本当にそう思います。朝早くから夜は遅くまで働いて、深夜までお客さんを接待して、というスタイルでやらないと勝てない、と思い込んでいる中小企業経営者がまだまだたくさんいます。
そうやって無駄なところに時間を使った結果、自らの技術を磨く時間がなくなり、結局業績が落ち込むという本末転倒に陥っている会社が多いですね。でも、ほとんどの社長が「それをやらなくて勝てると思っているのか。仕事を甘く見るな!」と言うんです。いや、そうではなくて、それをやっているから、いつまでも長時間労働をしているから勝てないんですよ、と言いたいですね。

森戸:確かに、イノベーティブな仕事をしたい、新しい商品開発をしたいけれど忙しくてなかなかできないという中小企業さんは多いですよね。
だから昔取った杵柄で、「うちも昔はすごい物を作ったんだ!」と言って延々と同じ物を売り続けている。でも本当はITを活用して今の時間の使い方を変えて、空いた時間をもっとイノベーティブな仕事に割くことが重要だと思います。
thinkstock (1969)

小室:ちなみに私どもがコンサルティングする時は、相手先の企業のチームごとに「自分たちの本当の理想の時間の使い方は、どんな形なのか?」ということを最初に考えていただくんです。
すると皆さん「本当はこういう時間の使い方がしたい」という明確な考えをお持ちなんですよね。

例えば「うちは企画部なのに、時間の8割は会議と問い合わせ対応に追われているんです」と言う。そこで、本当は企画に時間の何割を使いたいんですか? と聞くと、企画にこれくらいの時間、企画を考えるためのインプットをしたいからこれくらいの時間には外に出て飲んだり買い物したりしたいと言う。
自分の本来のミッションにシンプルに向き合った時の、本来あるべき時間配分というのを聞くと、皆さんちゃんとご自身で分かっているんですよね。
(次回に続く・本連載は週1~2回の更新を予定しています)

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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部