小室淑恵「地方移住のキーポイントは『教育』と『女性の仕事』」(連載4回)

【第4回】少子高齢化が進む中、日本社会全体の労働力不足や企業の生産性低下、それに伴う日本人の働き方の見直しが急務となっている。この課題に国や企業はどう対峙していけばよいのか? その課題解決の糸口を探るため、多くの企業や組織にワーク・ライフバランスに関するコンサルティングを提供する株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵氏にお話をうかがいました。

本連載のインタビュアーは、森戸裕一さん(JASISA/一般社団法人 日本中小企業情報化支援協議会)に担当いただきました。

地方ならではの自由な教育を

森戸:今、地方創生担当相(編集部注:2016年8月に退任)の石破茂さんが一生懸命、地方創生の推進をされています。
地方創生に取り組んでおられる方は皆「東京の人たちをもっと地方に!」と言うのですが、やはり生活基盤が東京にある人たちはそんなに簡単に地方に移住して働くことはできませんよね。どうしたらいいんでしょうか?

小室:やはり地方に移住しようと思った時に重視するのは、子供の教育なんです。それは地方がこれから最も力を入れるべき点であり、地方はもっと東京と一線を画した新しい教育をすることが重要になってくると思いますね。
私は中央教育審議会の委員でもあるのですが、本当にその辺には問題意識を持っています。

未だに校庭に子供たちを集合させて朝礼をやっている学校がありますが、あれは、いわゆる軍隊に送り込む人材をつくっていた頃の習慣です。子供たちを将来軍隊に送り込まないといけないから、個性を殺してだんだん嫌なこともできるように、嫌なことに慣れさせていく訓練があの朝礼なんです。
時代が変わったのに、未だに昔のままの教育がまかり通っているのは非常におかしなことです。
地方にはもっと国や中央に反抗してもらって、地方ならではの自由な教育というものを推進していけば、それに魅力を感じて自分の子育ての場は地方がいいと考え、地方移住する人がもっと増えると思います。
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女性が活躍できる仕事環境をつくる

地方移住にとってもう一つ重要なのが女性の就業場所の問題です。
多くの場合、男性が転勤などで移住を決めますが、その時に妻の就業が問題になります。
女性がリスペクトされながら仕事ができる環境というのが、地方にはまだまだ少ないので、それが原因でどうしても地方移住に消極的になる。地方に行ったら自分のやりたい仕事ができない、仕事のレベルが落ちると思うので、女性が一緒に地方に行きたがらず、一家での移住への合意が得られない、ということになるのです。

これから地方は、いかに女性が本当に輝いて仕事ができる場所になれるか、子供にとって自由で新しくクリエイティブな教育の場所になれるかが重要になってきます。
それこそITを教える授業が毎日1時間くらいあってもいいと思います。それくらい斬新なカリキュラムの教育をどれだけ地方が打ち出せるかによって、地方移住というものが万人にとって現実的になってくるか決まるのだと思います。
(次回へ続く)

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