本連載は、書籍『スマホでサンマが焼ける日』(2017年1月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。
世界は「集中から分散」へ向かう
これからの世界的トレンドを表すキーワードが「集中から分散」です。電力・エネルギー分野も集中から分散へのシフトが加速していくと思われます。
これまでは、火力発電所も水力発電所も、だいたい20年~30年くらいかけて、山奥や海の近くなど限定された場所に巨大な発電施設を作ってきました。
そこで10電力会社(北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)が常に何百万人分の電力を作って提供してきたのです。
それがここにきて、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーを中心とした小型、中型の発電所が全国各地に広がっています。それが「分散型発電」です。
こうした再エネ関連の発電だけでなく、身の回りの振動や熱から発電した微小な電力を収穫する「エネルギーハーベスティング」という考え方、仕組みも注目を集めています。
加えてそこで発電したものを蓄電できる蓄電池も次第に高性能化してきているので、いつでもどこでも手軽に発電できて、蓄電してそれを使いたいときに使う、といった新しいエネルギーシステムの時代に突入しようとしているのです。
これまでは、火力発電所も水力発電所も、だいたい20年~30年くらいかけて、山奥や海の近くなど限定された場所に巨大な発電施設を作ってきました。
そこで10電力会社(北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)が常に何百万人分の電力を作って提供してきたのです。
それがここにきて、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーを中心とした小型、中型の発電所が全国各地に広がっています。それが「分散型発電」です。
こうした再エネ関連の発電だけでなく、身の回りの振動や熱から発電した微小な電力を収穫する「エネルギーハーベスティング」という考え方、仕組みも注目を集めています。
加えてそこで発電したものを蓄電できる蓄電池も次第に高性能化してきているので、いつでもどこでも手軽に発電できて、蓄電してそれを使いたいときに使う、といった新しいエネルギーシステムの時代に突入しようとしているのです。
電気のロスがなくなる!分散型発電のメリット
こうした分散型発電が普及すると、いろいろなメリットが生まれます。
一つは電気を送るときに生じるロス(無駄)がなくなるということです。
あまり知られていないのですが、電気は電線を通って送られるときに、電線との抵抗によってロスが発生します。
山の中の発電所で発電した電気を、電線を使って何百キロも離れた場所に電気を送ると、その途中で水漏れのように少しずつ電気の量が減っていってしまうのです。
しかし分散型発電によって電気を使う場所のすぐ近くで発電すれば当然電気の移動距離も縮まるため、これまでのようなロスが大幅に減ります。電力の輸送(送電)がより効率的になるのです。
分散型発電のもう一つのメリットは、急に電気が必要になったとき柔軟に電気の調達ができる、ということです。
日本で最も電力需要が高まるのは、夏の甲子園が開催される約2週間だそうです。
今までは、1年のうち、このたった約2週間に備えて各地域の大型発電所の設備を準備し、その時期に必要となる電力に間にあうよう発電してきました。
しかし分散型発電が普及すれば、各地域または各自で使いたい分を使いたいだけ発電できるので、そうした対応も必要なくなります。
しかも、普段の生活で使わずに余っていた電気を蓄電池に貯めておくことができれば、その時期の電気を近所の人同士で融通し合ったりすることも可能です。
一つは電気を送るときに生じるロス(無駄)がなくなるということです。
あまり知られていないのですが、電気は電線を通って送られるときに、電線との抵抗によってロスが発生します。
山の中の発電所で発電した電気を、電線を使って何百キロも離れた場所に電気を送ると、その途中で水漏れのように少しずつ電気の量が減っていってしまうのです。
しかし分散型発電によって電気を使う場所のすぐ近くで発電すれば当然電気の移動距離も縮まるため、これまでのようなロスが大幅に減ります。電力の輸送(送電)がより効率的になるのです。
分散型発電のもう一つのメリットは、急に電気が必要になったとき柔軟に電気の調達ができる、ということです。
日本で最も電力需要が高まるのは、夏の甲子園が開催される約2週間だそうです。
今までは、1年のうち、このたった約2週間に備えて各地域の大型発電所の設備を準備し、その時期に必要となる電力に間にあうよう発電してきました。
しかし分散型発電が普及すれば、各地域または各自で使いたい分を使いたいだけ発電できるので、そうした対応も必要なくなります。
しかも、普段の生活で使わずに余っていた電気を蓄電池に貯めておくことができれば、その時期の電気を近所の人同士で融通し合ったりすることも可能です。
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スマホでサンマが焼ける日 電気とエネルギーをシェアする未来の「新発想論」
¥1,375
この連載では書籍からごく一部のキーワード解説を掲載しています。
50年に1度の大転換期を迎えた電気・エネルギー業界の未来のキーワードをチェックするならぜひご覧ください!
50年に1度の大転換期を迎えた電気・エネルギー業界の未来のキーワードをチェックするならぜひご覧ください!
金融のような電力システムを。電気のデジタル化で効率化できる
こうしたことが可能になれば、大型発電所の設備投資も小さくて済みます。
これはある意味で、電力自由化以降に注目されている「仮想発電所」(VPP)的な発想です。最近なにかとVR(仮想現実)技術が話題になっていますが、電力・エネルギーの世界でもこの「バーチャル」(仮想)がキーワードになっているのです。
VPPとは、各地に分散している小規模な再エネ発電や蓄電池、燃料電池等の設備と、電力の需要を管理するネットワーク・システムをIoTを活用して統合制御し、あたかも一つの発電所のように機能させることをいいます。
真ん中に大きな電気のプールがあって、そこにみんなが電気を入れて使う人は使ってその入れた電気と出た電気を数値的に合わせるというイメージ、考え方です。
VPPは、電力の活用方法をシステム化・効率化する上でも、またエネルギーハーベスティングなどによって作られた電気の有効活用にとっても、これから非常に重要な存在となっていくはずです。
VPPのメリットは、一つ一つでは小規模な発電施設や制御システムでも、それらを最新のIT技術によって連動させることで、電力網の需給バランスを最適化できるところにあります。
VPPを活用すると、これまでは電力を使うだけだった消費者が、時には電力供給する供給プレイヤーにもなるということが可能です。
消費者が節電や自家発電によって電力消費を減らした分を発電したものとみなして、電力会社が買い取ったり市場で取引したりすることを「ネガワット取引」といいますが、それを制御するのもVPPの使い方の一つです。
電力システムももっと金融と同じような考え方をすれば、電力・エネルギーの効率化が進むのではないかと思います。ただ、今までそれができなかった理由はスマートメーターがなかったからです。
これからはスマートメーターの「電気のデジタル化」によって、お互いがどれだけ電気をあげたか貰ったかが分かり、電気を融通し合う、分け合うといった電気のシェアができるようになるのです。
電気のデジタル化と分散型発電、VPPの普及などによって「電力・エネルギーのシェア」という新しい考え方、文化が生まれ広がっていくと私は考えています。
これはある意味で、電力自由化以降に注目されている「仮想発電所」(VPP)的な発想です。最近なにかとVR(仮想現実)技術が話題になっていますが、電力・エネルギーの世界でもこの「バーチャル」(仮想)がキーワードになっているのです。
VPPとは、各地に分散している小規模な再エネ発電や蓄電池、燃料電池等の設備と、電力の需要を管理するネットワーク・システムをIoTを活用して統合制御し、あたかも一つの発電所のように機能させることをいいます。
真ん中に大きな電気のプールがあって、そこにみんなが電気を入れて使う人は使ってその入れた電気と出た電気を数値的に合わせるというイメージ、考え方です。
VPPは、電力の活用方法をシステム化・効率化する上でも、またエネルギーハーベスティングなどによって作られた電気の有効活用にとっても、これから非常に重要な存在となっていくはずです。
VPPのメリットは、一つ一つでは小規模な発電施設や制御システムでも、それらを最新のIT技術によって連動させることで、電力網の需給バランスを最適化できるところにあります。
VPPを活用すると、これまでは電力を使うだけだった消費者が、時には電力供給する供給プレイヤーにもなるということが可能です。
消費者が節電や自家発電によって電力消費を減らした分を発電したものとみなして、電力会社が買い取ったり市場で取引したりすることを「ネガワット取引」といいますが、それを制御するのもVPPの使い方の一つです。
電力システムももっと金融と同じような考え方をすれば、電力・エネルギーの効率化が進むのではないかと思います。ただ、今までそれができなかった理由はスマートメーターがなかったからです。
これからはスマートメーターの「電気のデジタル化」によって、お互いがどれだけ電気をあげたか貰ったかが分かり、電気を融通し合う、分け合うといった電気のシェアができるようになるのです。
電気のデジタル化と分散型発電、VPPの普及などによって「電力・エネルギーのシェア」という新しい考え方、文化が生まれ広がっていくと私は考えています。
書籍著者:江田 健二さん
「環境・エネルギーに関する情報を客観的にわかりやすく広くつたえること」「デジタルテクノロジーと環境・エネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること」を目的に執筆/講演活動などを実施。富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクト等に参画。その後起業、環境・エネルギービジネスの推進や企業のCSR活動を支援している。RAUL株式会社 代表取締役、一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人エコマート運営委員。
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