「ちょっと電気貸してくれない?」が当たり前の世界に【スマホでサンマが焼ける日】

【第14回】電気・エネルギー業界は今、50年に1度の大転換期を迎えています。電力自由化をきっかけに各家庭へのスマートメーター導入が開始され、電力産業、電力関連ビジネスは一気にデジタル化の道を歩み始めました。本連載では、RAUL株式会社代表取締役の江田健二氏が、IoTとも密接な関係を持つ電力とエネルギーの未来を、ワイヤレス給電、EV(電気自動車)、ドローン、ビッグデータ、蓄電池、エネルギーハーベスティング、VPPといった最新テクノロジーの話題とからめながら解説します。

本連載は、書籍『スマホでサンマが焼ける日』(2017年1月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。

電気のシェアが始まる!

電気のやり取りがワイヤレスになることで非常に重要な変化が起きるはずです。それは、先に述べた「電気を人に分け合う」「共有がしやすくなる」=電気をシェアできるようになることです。
近い未来、カフェなどで給電・充電して課金できるようになると考えていますが、その場合も今のようにスマートフォンの電源をコンセントに差し込むのではなく、スマートフォンでWi-Fiと同じように、無線で電気を受け取れるようになるでしょう。

また、あなたがカフェで友人と話をしていたとして、そのときあなたのスマートフォンの電源が切れそうになっていたら、「ちょっと電気貸してくれない?」と言って、その友人のスマートフォンに貯まっている電気を、まるで赤外線通信のようにピピッと送ってもらう、といったこともできるようになるはずです。
貸し借りした電気の量はきちんとデジタルデータとして残っているので、後でまとめてきちんと返す。こうしたスマートフォンを介した電気の貸し借り、やりとりは近いうちにごく当たり前になるのではないかと思います。

そうなると、本当にスマートフォンがひとつのバッテリー兼、電気の送受信装置のような感じになり、スマートフォンに貯まった電気を他の家電製品に、まるでリモコンのようにピピッと飛ばして充電できるようになるでしょう。

繰り返しになりますが、こうしたことが可能になる前提条件が前述した電気の「デジタル化」です。
無線でお互い融通し合った電気でも、どれだけ誰が使ったかが分かるようになる、どの端末にどれだけ給電したかが分かるようになるからこそ、こうしたニーズに対応できるようになるのです。

スマホでサンマが焼ける日 電気とエネルギーをシェアする未来の「新発想論」

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この連載では書籍からごく一部のキーワード解説を掲載しています。
50年に1度の大転換期を迎えた電気・エネルギー業界の未来のキーワードをチェックするならぜひご覧ください!

デジタル化が「電気エネルギーのシェア化」を進める

外国人旅行者向けのワイヤレス給電サービスも、日本にいる間どんな場所で充電をしても、クレジットカードの明細のように帰国してから電気代の請求書が届いて、いつどこでいくら電気を使ったかが分かるようになるでしょう。
それもすべて電気のデジタル化が可能にするものです。かつそれが将来的には仮想通貨でオンライン上で決済されて払われるようになったらもっと便利ですよね。

先日、電気代を仮想通貨で支払うサービスを始めた会社が登場したというニュースが出ていましたが、今後そうしたシステムが急速に普及していくはずです。
こうしてデジタル化とワイヤレス給電技術が「電気エネルギーのシェア化」を後押しするのです。
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