人口が減るのに電気使用量が増える理由「電力コストダウン」と「利用デバイス増加」【スマホでサンマが焼ける日】

【第19回】電気・エネルギー業界は今、50年に1度の大転換期を迎えています。電力自由化をきっかけに各家庭へのスマートメーター導入が開始され、電力産業、電力関連ビジネスは一気にデジタル化の道を歩み始めました。本連載では、RAUL株式会社代表取締役の江田健二氏が、IoTとも密接な関係を持つ電力とエネルギーの未来を、ワイヤレス給電、EV(電気自動車)、ドローン、ビッグデータ、蓄電池、エネルギーハーベスティング、VPPといった最新テクノロジーの話題とからめながら解説します。

本連載は、書籍『スマホでサンマが焼ける日』(2017年1月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。

コストが下がれば需要が増える!

これから日本は人口減少に向かっていきます。ということは、電気の使用量、電力需要もそれにともなって減っていくのでしょうか。ある試算によると、今後日本国内の電力消費量は、人口減少や省エネなどによりマイナスに転じていくだろうという予測もあります。では電気の需要が増えなければ、ここまで話したように発電システムが多様化して発電量が増えても、せっかく作った電気が余ってしまう、つまり余剰電気が増えてしまうのでしょうか。そうなると、私がここまで話してきた「無駄がなくなる世の中」と反対に、無駄が生じる社会になってしまいます。

ですが、私は今後日本のみならず世界の電力需要はさらに増えていくと考えています。その理由は2つです。

一つは電気代、電力のコストが下がるためです。すべてのものはコストが高ければ自然と需要が減り、コストが下がれば需要が増えます。水道水も非常にコストが低いからこそ、多くの人は普段あまり水道代を気にせず水を使っています。インターネットも最初は通信量が高かったのが、今のように安くなったのでこれだけ普及したのです。

紙も、100年前、200年前はきっと非常に高くて、ごく一部の地位・身分の人や知識人しか手にすることができなかったはずです。今は1枚1円もしません。それによって需要が増えて本の文化や教育などが発展し、様々な仕事も増えました。それと一緒で、コストが下がれば今までそれを使えなかった人が使えるようになるのです。

電気も同じです。車もガソリン車だと人によっては月1万~2万円くらいをガソリン代に使っています。これが電気自動車だと月数百円ですむということになれば、みんな電気自動車に乗るようになるはずです。そうなると電気自動車が急速に普及していくでしょう。電気が安くなって電気の使用量、消費量が増え、それにともなって発電システムも発達して発電量も伸びていく。発電量が増えればさらに発電コストが下がるので使用量が増える、という好循環が生まれるのです。今はまだ、発電コストが下がらないので使用量も増やせないのです。今後、太陽光発電など再生可能エネルギーが普及し、分散型発電によって「消費量が増えることで地球環境が悪くなるわけでない」という社会になれば、ますます電力需要は増えていくはずです。

スマホでサンマが焼ける日 電気とエネルギーをシェアする未来の「新発想論」

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増え続ける電力消費量

もう1つ、今後電力需要が増えるだろうと考える理由があります。それは、これからのIoTを中心としたテクノロジーの発達、AI(人工知能)やスパコン(スーパーコンピュータ)の進化、普及により、電気エネルギーを必要とするマシン、デバイスが無限に増えていくと予測されるからです。

先にも述べたように、IoT化が進むことによって、現在の約3000倍のモノがインターネットにつながるようになります。ということは、電気を必要とするモノも3000倍に増えるということです。また、ロボットやAI搭載型の新しい機器、ウェアラブル端末など、今まで存在しなかった新しい電子機械も増えていくでしょう。それらが個々にどれほど電力を消費するものなのかは分かりませんが、地球上に電気エネルギーを動力とするマシンが膨大に増えていくことは確かです。

ドローンは今後急速に普及するマシンの中でもかなり電気をくうモノの一つですが、一方でこれから日本が世界をリードしていける分野であろうと期待されているスパコンも非常に電気量がかかるものの一つです。今後こうしたスパコンが世界的に増えていけば、それにともなって電力消費量も大きく増加していくでしょう。

今後ドローンやスパコンのような機器がさらに進化発展していくためには、電力コストがもっと下がる必要があります。今は電気代が高くて実現できないこと、実用化に向けて開発が進まない製品がたくさんあります。電気代が安くなれば、そうした製品の実用化が一気に進む可能性があるのです。
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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部