滞納にも時効が!マンション家賃滞納のケース別解決法【マンション管理のトラブルQ&A】

【連載第2回】マンションは多くの人にとって一生の買い物ですが、買っただけで終わりではなく、管理が必要です。しかも、様々な考えを持つ方々で管理していくため、トラブルや悩みは尽きません。 マンション管理特化型Q&Aサイト「みんなの管理組合.com」に寄せられた相談や疑問に、マンション管理士として10年以上の経験を持つ祖堅さんが、専門的な立場ばかりでなく、マンション組合員、住民としての立場からもアドバイスをした、実践的な回答をまとめました。

本連載は、書籍『わかった! 得した! マンション管理 疑問・トラブル解決ガイド ―実例250選 Q&Aで学ぶ管理組合のための問題解決ブック―』(2017年9月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。
マンション管理において、切っても切れない問題、家賃滞納。
滞納トラブルに巻き込まれたときは、どのように対応すべきなのでしょうか?

Q.管理費等の滞納の時効は何年?

管理費等の滞納が発生した場合、何年で時効にかかるのでしょうか。

A.時効は5年1ヵ月分ずつになります。

管理費等の債権は1ヵ月分ずつだということに気を付けてください。
1ヵ月、1ヵ月と増えていくわけで、時効は5年で古い方から1ヵ月ずつ迎えることになります。
滞納額そのままが時効になるわけではありません。滞納中に一部の支払いがあった場合に、古いものから順に充当するのはそういう理由があるからです。

この時に気を付けていただきたいのは、「古いものから充当しますよ」ということを、滞納者ご本人から了承を取っておくことです。
債務の支払いについては、支払う者がどの分に充当するか指定できるという民法の規定があります。督促の通知に一文を入れておけば、反論がない限り了承したと判断することもできます。
それよりも時効まで放っておくようなことがないように気を付けたいですね。
債権の支払いについて、支払う人がどの分に充てるのかを指定できるということは、意外と知られていませんね。払ってもらった後にトラブルが続かないよう、証跡を残しておくのも一つの手法かもしれません。

Q.滞納者に対する法的手段にはどのような方法があるの?

現在当マンションでは、100万円を超える滞納者に悩んでいます。
滞納者は、行方不明で全く連絡が取れないということで、法的手段に出ようと思いますが、どんな方法がありますでしょうか?
また、管理会社はお手上げ状態といった感じですが、どんな支援を要求すればいいのでしょうか?

A.もう弁護士さんに依頼した方がいいでしょう。

滞納者本人に対する法的手段は弁護士さんの領域になると思います。
管理会社さんに対しては、契約時の重要事項説明書に滞納に関する事項があると思います。
大体は6ヵ月までは対処をして、その後は管理組合の責任とするというところが多いのではないでしょうか。それでもほとんどの管理会社さんはその後も対応をしてくださると思います。

管理会社さんに支援を求めるとしたら、弁護士さんの手配でしょうか。管理会社さんは顧問弁護士さんと契約していることと思います。

それよりも、これほどまでの滞納になる前に、管理会社さんの報告で対処すべきことと思います。滞納については毎月報告を受けていませんでしたか。
滞納問題は、多額になる前に対応していかないと、払う側も、取り立てる側も負担が大きくなりますので、毎回の理事会で検討をしていただきたい問題と思います。
滞納の進み具合によって、対応を変えていく必要があるのですね。
法的手段が必要=取り返しがつかない状況になってしまった、と考え、そうならないために事前にどう対応していくのかが重要になってきそうです。

わかった! 得した! マンション管理 疑問・トラブル解決ガイド ―実例250選 Q&Aで学ぶ管理組合のための問題解決ブック― (NextPublishing) | 祖堅 千鶴子, みんなの管理組合.com |本 | 通販 | Amazon

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マンションは多くの人にとって一生の買い物ですが、買っただけで終わりではなく、管理が必要です。本書は、実際に寄せられたマンション管理についての250の質問への回答をまとめたものです。
今さら聞けない基本的な質問から、法律に関わる専門的な悩みまで、マンション管理士として10年以上の経験を持つ著者が、一つひとつ丁寧にアドバイスします。

Q.滞納への対処方法と解消方法を具体的に教えてほしい

どうやらうちのマンションでは管理費を払わない人がいるようです。
まだ高額には至っていないようですが、支払う側としても溜まってからでは厳しいでしょうし、マンションとしても回収できることに越したことはありません。
そこで、皆さんのマンションでの事例やマンション管理士様のお考えをお教えください。

①たまたま1ヵ月払わなかった人への対処
②→①が放置され溜まってきたときの対処、解決方法

A.溜まる前に話し合うことが重用です。

滞納問題は多くの管理組合で起こっています。
1ヵ月でしたら「うっかりミス」が考えられますので、管理会社から電話などで今月引き落としできませんでしたぐらいの軽いお知らせをしていただきます。2ヵ月目でも電話でいいかと思います。3ヵ月目に入りましたら、引き落としができない理由をお伺いします。連絡が取れないなどの場合には訪問も考えてください。

おっしゃるように溜まってしまうと払うのが大変になります。早期におしりを叩くように急き立てて解消していただくのもご本人の為かと思います。

半年ぐらいになるといろいろと厳しい方法を考えなければならなくなります。
督促状でダメでしたら、とにかくお会いして面談をする。そこではいきなりすべて払えというようなことではなく、生活状況などをお伺いして今後の支払い計画を立てていただきます。

滞納者も滞納したくてしているわけではないと思いますので、親身にお話を聞いてあげることが必要かと思います。寄り添ってあげることで、誠意を持って解消の努力をしてくださる方が多いです。

中には連絡しても返事も来ないという方もいます。そういう方には毅然とした対処が有効になります。
内容証明を出す、理事会で訴訟を検討するという段階になります。訴訟を検討していることを通知すると、慌てて連絡を取ってきます。
連絡をしてきましたら、話し合いに応じて支払い計画を出していただきましょう。

どうにもならなくなって、金額もかさんできてしまったら、最終手段として訴訟となりますが、できるだけそうならないよう連絡を取る努力をしていただきたいです。

滞納者は、どこに相談していいかわからず困っている場合が多く、そんな状況で「払え、払え!」と催促が来て、余計にどうしていいか悩んでしまっています。
一度に全額払わなければいけないと思っている方も多いです。
滞納額の回収ばかりを考えるのではなく、相談に乗ることが重要なことをご理解していただきたいと思います。
以前面談したケースでは、私と話をしたことで売却の決心ができたとのことで、そこを売り、新しい生活に踏み出した方もいました。

滞納は組合にとってとても困る問題ですが、滞納者も困っているという事を頭の隅にでも入れておいてくださればと思います。
早期に対応して高額滞納者を生まない管理をしていくこと、それでも深刻な滞納が発生した場合には、支払いを催促するだけではなく、どのように支払ってもらうのか、滞納者と今後の見通しを一緒に考えていくということが、管理者のとるべき対応なのですね。

Q.孤独死の方の滞納金回収はどうしたらいいのでしょうか?

2年ほど前に高齢の1人暮らしの居住者が孤独死されました。身寄りの方が1人もいらっしゃらなく、葬儀など市の福祉課にすべてお任せしたのですが、故人の所有されていた居室はそれ以来空室のままです。

管理組合では「身寄りのない方の遺産は国のものになり、国が競売を行うので、買受人が未収金を払ってくれるだろう」と考えていたのですが、2年たった今でも何の動きもありませんし、当時いろいろ動いてくれた市の福祉課に相談に行っても故人と縁故のない管理組合理事長にはお話しできませんと冷たい返事です。

この間も未収金は増え続ける一方ですが、管理組合としてただ行政の動くのを待ち続けるしかないのか、何か打つ手はあるのかアドバイスをいただけると幸いです。
ちなみに管理会社は行政が動くまで打つ手はないと考えているようです。

A.相続財産管理人の選任の申し立てができます。

これから増えてきそうな問題ですね。国とか役所はそう敏速には動かないと思います。

これは弁護士さんに相談に行かれた方が早いのではないでしょうか。
競売を申し立てることになると思いますが、管理組合は利害関係者(滞納されている)になりますから、相続財産管理人の選任の申し立てができるのではないでしょうか。

管理会社には顧問弁護士がいますので、管理会社に弁護士に依頼したいと相談してみてはいかがでしょうか。

わかった! 得した! マンション管理 疑問・トラブル解決ガイド ―実例250選 Q&Aで学ぶ管理組合のための問題解決ブック―

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