ビジネスパーソン必須スキル!下町ロケットで学ぶフレームワーク思考実践講座 第3回「マクロ環境を分析するフレームワーク『PEST分析』」

今回から、ビジネスシーンで有用なフレームワークを個別に紹介します。第3回はPEST分析です。 企業を取り巻く外部環境は、企業周辺のミクロ環境と、その外側にあるマクロ環境に分かれます。今回はそのうち、マクロ環境を分析するフレームワーク「PEST分析」を紹介します(ミクロ環境分析については第6回で紹介します)。

マクロ環境を抜け漏れなく分析するフレームワーク

企業業績は外部環境の変化に大きく左右されます。従って、企業活動をしていくうえで、マクロ環境を把握・予想することは非常に重要なことです。

上司に、
「当社の事業について、外部環境を分析し、来週月曜日に報告してくれ。」
と指示されたらどうしますか?

「外部環境か・・・、当社の外部の環境だから、マクロ環境を分析したらよいのかな??」
「マクロ環境か・・・、そうか、マクロ経済を分析してみよう!」
「為替とか、株価とか、景気指数とか。」
「あ、でも、○○技術の動向も外部環境か・・・、たくさんあるな~。月曜日まで間に合わないかも・・・」

と、フレームワークを知らないと路頭に迷うことでしょう。マクロ環境は非常に多岐に渡ります。
限られた時間で分析をするためには抜け漏れをなくすフレームワークが必要です。
そこで有効となるのが、PEST分析です。

意思決定において重要な外部環境の分析

PESTは
PはPolitics(政治)、EはEconomy(経済)、SはSociety(社会)、TはTechnology(技術)のそれぞれの頭文字をとっています。

マクロ環境を政治的環境、経済的環境、社会的環境、技術的環境に分けて分析することで、おおよそ網羅的に外部環境を把握できます。

•政治的環境(P)・・・法律、規制、税制、政府の動きなど
•経済的環境(E)・・・為替、金利、景気、株価動向など
•社会的環境(S)・・・人口動態、流行、文化、価値観など
•技術的環境(T)・・・技術動向、特許、生産技術革命など

PEST分析をする際に留意点があります。
直近の各環境を分析することも重要ですが、将来各環境がどのように推移するかを予測し、自社の戦略の前提とすることがより重要となります。

例えば、
・景気低迷が予想され、顧客の購買意欲が低下するので、事業参入を延期しよう
・働き方の多様化が進むことが予想されるので、早めに△△事業を立ち上げよう

もちろん、PESTだけの予想で戦略を決定するわけではありません。企業内部の状況など他の分析も加味して決定することになるでしょう。
ただし、経験則的に言うと、外部環境変化が企業の戦略を決定することが多いと思われます。皆さんの感覚もこれと合っているのではないでしょうか。

PEST分析の例:銀行向けスマホアプリ開発

さて、ここで、銀行向けのスマホアプリ開発を行う仮想の企業を例にとってPEST分析をしてみましょう。

▼政治的環境(P):
・銀行の公的資金返済が進み、投資余力があるだろう
・規制緩和により、銀行で扱う金融商品が増えるだろう

▼経済的環境(E):
・金利が低下傾向となり、銀行の収入が減っていくだろう
・景気がよくなり、優秀な人材が大企業へ流れ、中小企業の採用は難しくなるだろう

▼社会的環境(S):
・スマホの普及が進み、スマホアプリの需要が高まるだろう

▼技術的環境(T):
・セキュリティ技術が発展し、安全性への要求が高い銀行でもスマホアプリ採用が進むだろう

これらマクロ環境予測の中、この企業はスマホアプリ事業を継続していくのでしょうか?
撤退するのでしょうか?
継続するならどういった戦略となるのでしょうか?

前述したように、他に競合の状況、市場の大きさ、自社の状況など様々な分析の上、戦略が決定されることでしょう。

下町ロケットでPEST分析をしてみる

下町ロケットのマクロ環境をPESTで分析してみましょう。

大きく2つの事業分野のストーリー(ロケットエンジン事業、人工弁事業)がありました。

【ロケットエンジン事業】
帝国重工が自社製ロケットにこだわりを持ち、スターダスト計画と銘打ってプロジェクトを推し進めていました。

▼政治的環境(P):
アメリカ、ロシア、フランスなどの各国がロケット事業に力を入れる中、日本のものづくり品質を脅威に感じたフランスが、部品の輸出制限を行ってきた。そこで、日本は、国家戦略として国産ロケット事業を強化している。

▼経済的環境(E):
(景気に関する直接的な描写はないが、登場する企業をみると)中小企業を含めた企業は一定の忙しさがある。また、生産拠点が国内から海外へと移転しものづくり空洞化が進んでいると思われる。

▼社会的環境(S):
商用ロケット分野でアメリカ、ロシア、フランスが実績を競っている。しかし、ロケット打ち上げに国家予算を使っているため、打ち上げ失敗した時の世論の反発は大きい。

▼技術的環境(T):
ロケットエンジンには、非常に多くのデバイスが使われている。特に、バルブシステムは、ロケットエンジンにとって非常に重要なデバイスである。このバルブシステムは極めて過酷な使用環境に置かれる(真空~300気圧、-235~500度)ため、高い耐久性が求められる。
 (3310)

【人工弁事業】
小さい人工弁を必要としている日本の子供たちが大勢いますが、国内で医療機器として認められるには、高いハードルが立ちはだかります。

▼政治的環境(P):
医療機器は自由に開発し、販売することができない。例えば、日本では新しく医療機器を開発するには、PMDA(医薬品や医療機器の審査機関)が医療機器の達成レベルを評価し、厚労省が認可するシステムがある。また、医療機器は製作者が勝手に値付けできず、厚労省によって決められる。これら国の規制が、医療機器市場への積極的な参入を阻害している。従って、日本と海外では、生産される医療機器の技術レベルに大きな差がある。さらに、許認可を得るまでに、医療機器の研究開発に莫大な資金が必要となる。

▼経済的環境(E):
ロケットエンジン編後間もなく、一定の景気が継続している。

▼社会的環境(S):
日本には、小さい人工弁を欲している患者が約200万人存在する。特に、海外製の人工弁が合わない子供たちには急務の必要性あり。しかし、医療事故が起こると、製造元が賠償責任を負わされるリスクがあり、日本では積極的に人工弁を作ろうとする企業は少ない。

▼技術的環境(T):
海外製の人工弁はあるが、日本人患者、特に子供に適する大きさの人工弁はない。また、生命に関わるものなので、高耐久性、高精度が必須となる。
 (3312)

ロケットエンジン事業、人工弁事業をPESTでマクロ環境分析をしてみました。同じ会社のマクロ環境分析でも、事業が異なると分析結果が異なってきます。

このような外部環境において、佃航平はどのような戦略を立てていくのでしょうか。佃製作所の経営資源、強みをどう活かしてくるのでしょうか?

次回(第4回)は、企業の経営資源を評価するフレームワーク「VRIO分析」で、佃製作所の経営資源がどのように競争優位につながっているのかを分析します。
(次回へ続く。本連載は週次の更新を予定しています。)

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