【中小企業のためのマーケティング・ブランディング戦略】第7回:「アライアンス戦略」の本質を理解して、効果を最大化させる方法

本記事は新しい働き方ぜんぶがわかるメディア「ビジネスノマドジャーナル」さんの提供で配信しています。
前回は、「ブランディング構築プロセス」を大きなテーマとし、企業にとって大切な「ストーリーブランディング」についてご紹介しました。
企業の魅力となる「強み」を分かりやすく発信することで、商品・サービスの価値が顧客に伝わります。

●企業の歴史から、「強み」となる要素を抽出する(シンボリック・ストーリー)
●抽出した強みを、「魅力的」な物語に仕上げる(共感・驚き・発見)
●顧客に「選ばれる」意識で、戦略的に仕掛ける(魅力の発信方法を工夫)

これらの点を意識すれば、企業全体の「ブランド価値」を確実に高めることができます。
さて、今回は「経営資源」のひとつである「ヒト」に注目しながら、「アライアンス」によって生まれる新たな可能性についてご紹介していきます。
企業と企業、企業と個人がアライアンスによって繋がることで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。

アライアンスがもたらすメリットとは何か

企業にとって悩みのタネにもなり得る経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の確保。この問題を解消するために生まれたのが企業間の連携・協力体制を意味する「アライアンス」です。
しかし、ただ協力関係を結んだだけでは、お互いにとって良い効果が見込めないこともあります。

そこで、より成功率が高い方法として注目されているのが「戦略的連携(strategic alliance)」です。戦略的連携では、それぞれの強み(独自性)を活かしながら、技術・生産・販売、などの面で相互補完をし合います。

これにより、お互いを成長させられるような良い仕組みが生まれ、シナジー(相乗効果)が期待できるわけです。

これまでは、主に企業間における戦略的連携が注目されてきましたが、個人の働き方が多様化してきたことに伴い、近年では「個人と企業」における繋がりを重視した、新たな連携も登場しています。

アライアンスの本来の目的であった互いの「経済的なメリット」に留まらず、更なる進化・成長に繋がる連携についても目を向けることで、事業における新たな展開が期待できます。
まずは「人材」という点に注目してみましょう。

優秀な人材確保のために必要なこと【社内編】:人材育成と評価

優秀な人材は企業にとっての宝です。「人材育成」に力を入れている企業も多いことでしょう。働ける「ヒト」を育てていくことは、企業全体を成長させていくうえで、決して欠かしてはいけない部分でもあります。

研修を増やすとか、課題をたくさん与えるというレベルではなく、個人が自ら「得意分野」を伸ばしたい、「新しい技術」を習得したい、と考えられるような環境づくりが必要です。
意欲的な社員を増やすためには、学べる環境を確保することが先決ですが、これに加えて必要なのは、個人の努力を正しく評価できる組織づくりのあり方です。

正当な評価が得られなければ、自分の価値を正しく認めてくれる環境へと意識が向いてしまいます。

「このぐらいできて当然だ」と言われるより、「素晴らしい!もっとやってみよう!」と言ってもらえた方が、やる気もでますよね?せっかく育てた優秀な人材を、簡単に手放したいと思う人はいないはずです。

経営側が、個人の成長意欲や好奇心に答えつつ、個人の価値を認める意識を持つことで、人材の流出を止めることも可能です。満足できる評価が得られ、自分のスキルアップが見込める職場であれば、誰もネガティブな理由で辞めようなどとは思いません。

経営者側に求められていることは、個人の能力を活かし、成長させ、それをきちんと認める組織づくりである、ということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

ここまでは、企業内の人材に目を向けてきましたが、次は外部の人的資源の確保について考えてみたいと思います。

優秀な人材確保のために必要なこと【社外編】:シェアの可能性に目を向ける

優秀な人材と優秀な事業計画があれば、資金調達はいくらでもできる時代になりました。ですが、プロジェクトをよりスムーズに進めていくために、場合によっては新たな人材確保が必要になることがあるかもしれません。

一から人材を育て上げるのは大変なこともあります。そんな時は、クラウドソーシングを活用することで最適な人材を確保することも可能ですし、企業間の戦略的連携がスムーズであれば、お互いの「優秀な人材をシェア」していくことも可能です。

最近では「レンタル移籍」というかたちをとりながら、人材を企業間でシェアする取り組みも行われ始めています。内部と外部の関わりによって得られる化学反応は、企業を進化させていきます。

これを成功させるために必要なのは、柔軟な考え方、そして変化を受け入れる姿勢です。特に、外部からの人材調達または外部への人材派遣に関しては、保守的な昔ながらの考え方を捨てなくてはいけないこともあることでしょう。

終身雇用が当たり前だった時代は、入社した会社で定年まで勤め上げることがサラリーマンとしてのモデルケースだったかもしれません。
しかし、多様なニーズや情報が溢れかえる現在、一つの会社に依存することのリスクも考えなければならない世の中になりつつあります。「ここでは自分の能力が活かされない、成長できない...」と思った人は、新たな可能性を求めて転職する人もいるでしょう。

あるいは、独立して新たなビジネスを始める人もいるかもしれません。優秀な人材ほど、自分を高めていける新たな環境・刺激を求めて、外部に流れ出て行きます。これが人材の流動です。

優秀な人材を囲い込んでしまいたい気持ちもわかりますが、企業内に縛り付けるよりも、外部との積極的な交流を通して多くのことを学んでもらう方が、後々必ず役立ちます。
他社との連携で得られたノウハウを自社に持ち帰って応用してもらう方が、新たな発想を生み出すきっかけとなることでしょう。

新しい刺激を経験(修行)してもらうつもりで、優秀な人材をシェアする取り組みも、今後は必要です。優秀な人材をシェアする時代は、もうすぐそこまでやって来ています!

敵対するよりも大切なことは、シェアから生まれる成長と進化

外部との交流が活発になれば、内部にも変化が生まれます。「必要とされる人材であろう」という良い緊張感が社員の間で生じます。あるいはその反面、異分子とみなし排除しようとする圧力も生じやすくなります。

ここで重要なのは、経営陣はメリットだけではなく、デメリットにも目を向け、事前に想定される問題を認識することにあります。
外部人材が能力を十分発揮できる環境と、引き出す努力をしなければ、せっかく優秀な人材が入ってきても、シナジーではなく、むしろ混乱で終わってしまうケースは枚挙にいとまがありません。

自分の能力を高めて「成長したい」という気持ちは誰もが持っている願望でもあるはずです。個人の得意分野を伸ばしたり、技術習得をしたり、新たなアイディアを出そうという積極的な気持ちを育てる環境と評価基準は、「人材育成」の要です。

それらを前提にアライアンスを積極的に行うことこそが、外部と内部の風通しを良くし、新しい可能性を引き寄せるきっかけになるのです。

ここで一つ、例を挙げて考えてみたいと思います。
少し前のことですが、「異なる食材を組み合わせて、全く別の味を生み出す」という、実験的な「ちょい足し」がブームになったことがありました。
以下を組み合わせで何の味になるか、想像できるでしょうか?

(A)醤油×プリン
(B)蜂蜜×キュウリ
(C)牛乳×たくあん

順番に答えを出していくと、(A)ウニ、(B)メロン、(C)コーンスープ、となるそうです。(混ぜ具合やそれぞれの食材の割合なども、美味しく食べるために工夫する必要があるようですが...)

意外なもの同士を組み合わせて全く別の味を創りだすという発想力には驚かされるものがあります。
そして、意外な発想は外部との関わりによって生まれることがほとんどです。うまく混ぜれば、全く別の味が生まれるのと同じように、人材のシェアにより、互いのノウハウをうまく応用し合うことで、これまで誰も思いつかなかった、新たな発見を生み出す可能性が高まるわけです。

アライアンスによる共創戦略で、新たな未来が見えてくる

「リンク」「フラット」「シェア」が当たり前になった時代に必要なのは「共創」です。
個人としては、自分の能力を向上させるための努力が必要です。また経営者側は、柔軟な「発想力」と「実行力」で企業を成長させていかなければなりません。

アライアンスの本質は、お互いの強みと弱みの「相互補完」。自社だけでは実現できなかったことが、外部との連携で可能になります。
新たな取り組みが可能になれば、差別化が難しい時代であっても、独自の強みをさらに進化させ、チャンスの幅を広げることができるのです。

今後、中小企業が成長するために必要なのは、アライアンスプラットフォームの構築だと考えています。これには、戦略的でクリエイティブな発想が必要です。複雑な仕組みを考えるよりも、「シンプル」で「本質的」なものをイメージしてみてください。

分かりやすさを意識し、目的を達成するための「効率性」も考えることで、新しい取り組みへの負担が軽減されます。時間も節約できます。

我々の使命は、業界の垣根を超えたシームレスな存在として、アライアンスプラットフォームを世の中に深く浸透させることにあります。シームレスで多角的な視野が「知」を、プロが組み立てる戦略が効率という「時間」を生み出します。
アライアンス戦略が生み出すものは、可能性以上のシナジーです。

企業成長のカギを握る「アライアンス」について、これを機会に改めて考えてみてはいかがでしょうか。

次回は、「デジタルシフト」をキーワードに、デジタルツールの活用によって「生産性」アップと「経費削減」の両方を実現させる、新しいアイディアをご紹介していきます。
(次回へ続く。本連載は隔週の更新を予定しています。)
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