大前研一「狭い日本はクオリティ型農業で勝負せよ」

【連載第2回】今、日本の農業は変わらなければならない。食料安保、食料自給率、農業保護などにおける農業政策の歪みにより日本農業は脆弱化し、世界での競争力を失った。本連載では、IT技術を駆使した「スマートアグリ」で 世界2位の農産物輸出国にまで成長したオランダの農業モデルと日本の農業を照合しながら、日本がオランダ農業から何を学び、どのように変えていくべきかを大前研一氏が解説します。

本連載では大前研一さんの著作『大前研一ビジネスジャーナルNo.8』より、IT技術を駆使した「スマートアグリ」で世界に名を馳せるオランダの農業モデルと、日本の農業の転換について解説します。
連載第2回は、日本の農業の弱点についてお話いただきました。

大前研一ビジネスジャーナル No.8(アイドルエコノミー~空いているものに隠れたビジネスチャンス~)

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大前研一氏が2015年に新しく打ち出したキーワード、「アイドルエコノミー」をメインテーマとして収録。AirbnbやUberに代表される、ネットワーク技術の発達を背景に台頭してきたモノ・人・情報をシェア/マッチングするビジネスモデルについて解説します。
同時収録特集として「クオリティ型農業国オランダから学ぶ"スマートアグリ"の最前線」を掲載。世界2位の農産物輸出を誇るオランダ農業モデルを題材に、日本の農業の問題点を探ります。

世界2位の農産物輸出額を誇るオランダ

世界の農産物輸出入額

世界の農業のなかで、オランダと日本はどのような状況にあるのかを見ていきましょう。

図-2の2つのグラフをご覧ください。世界の農産物輸出入額の上位国を示しています。
まず輸出額では、米国が1位、次いで2位に893億ドル=約10兆円という額でオランダが入ってきます。3位はドイツ。日本は57位、額も33億ドルと小さいですね。

輸入額では同じように米国が1位。次いで2位に中国、3位にドイツ、4位に日本、オランダも6位と上位国に入ります。
ドイツの輸入額が大きいのは、近隣諸国から良いものを大量に買うスタンスをとっているからでしょう。そういった点においてドイツは、輸出も大きくやるけれど、輸入も大きくやるという点を、しっかりと押さえています。
輸入を禁止するのではなく、良いものは積極的に他国から買い、輸出力もつける。それが産業としての農業だということです。
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小さな農地面積で生産性を上げている

農産物輸出額世界2位を誇るオランダですが、実は国土面積は九州くらいしかありません。したがって農地も限られており、1人当たり農地面積は9.4haです(図-3)。

日本は1.8haで、世界でもまれに見る小ささです。1人当たり生産額はオランダが5.7万ドル、日本が3.5万ドル。しかし、10ha当たり生産金額では、オランダは603ドル/10haと、どの国よりも高いです。

日本は1907ドル/10haと、単純に数字で見れば先進国の中でも断然高いのですが、これは補助金の大きさですから、実力ではありません。
つまり、農地面積は限られているにもかかわらず、オランダの農業はどこよりも生産性が高いということです。

世界の農業モデルと中途半端な日本

新興国・先進国のボリューム型の違い

この生産性の違いには、農業モデルが大きく関わっています。
農業モデルは、その国が広大な土地をもつ巨大国家なのか、狭小国なのか、先進国か新興国かなどで違います。
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図-4では農業モデルを分類しています。
日本は生産額も輸出額も少ないということで、現状は図の左下にあります。
大きな土地をもつボリューム型で新興国の場合は、まず自国民に食べさせることを重要視しますから、あまり輸出にもっていくことはしません。ただ、なかにはブラジルのように、大量の大豆を中国に輸出しているような国もあります。

一方、ボリューム型の先進国は輸出が多いです。ここには米国、オーストラリア、カナダなどが入りますが、ウクライナもチェルノーゼム(黒土)という肥沃な土壌をもっていますから、内戦後はおそらくここに加わるのではないでしょうか。
チェルノーゼムは米国のように肥料を使いすぎても疲弊するようなことがなく、非常に強い潜在力があります。

狭小の先進国はクオリティ型農業で勝負

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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部