【ビジネススキル:フレームワーク】下町ロケットで学ぶフレームワーク思考実践講座 第1回 フレームワークは身近な存在

フレームワークと聞いてどんなことを連想しますか? フレームワークはビジネスシーンにおいて、論理的に思考する手助けをしてくれる存在です。社会人になって駆け出しのころに、「5W1H」で考えろとか、「ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)」をしっかりとするようにとか、「PDCA」で業務を進めるとか、先輩社員から指導を受けたことがある方も多いと思います。「5W1H」「ほう・れん・そう」「PDCA」のいずれもがフレームワークに分類されます。フレームワークとは、汎用性がある「枠組み」と捉えることができます。また、フレームワークは汎用性があるので、多くのビジネスパーソンが活用しています。 今回の連載では、池井戸潤氏の代表作である「下町ロケット」を題材として取り上げながら、ビジネスシーンにおいて、有用なフレームワークを紹介したいと思います。読者はフレームワークの初心者を想定しています。フレームワークをあまり知らない方でも理解して頂ける内容で進めたいと思います。

本記事は新しい働き方ぜんぶがわかるメディア「ビジネスノマドジャーナル」さんの提供で配信しています。

フレームワークのメリット

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フレームワークを使うことによって、次のようなメリットが享受できます。

1.効率的に物事を思考できる。
2.全体像を捉えることができる。
3.円滑なコミュニケーションを図れるようになる。

身近にあふれているフレームワーク

まず手始めに、自分たちの身の回りには、ビジネスシーンに限らずフレームワークが満ちあふれていることを紹介したいと思います。
野球の実況中継の解説で「走攻守」揃った選手と評しているのを聞いたことがありますでしょうか。これは、野球選手に求められる能力を表現したフレームワークです。
例えば、イチロー選手は「走攻守」揃った野球人として世界が認めている存在です。

•走 ・・・ 走塁
•攻 ・・・ バッティング
•守 ・・・ 守備

ストーリーの構成要素としての「起承転結」もフレームワークといえます。

•起 ・・・ 物語の始まり、主人公の境遇や登場人物の紹介など
•承 ・・・ アクシデントなどがあり、ストーリーが展開するきっかけ
•転 ・・・ クライマックス
•結 ・・・ フィナーレ

他にも例を挙げると、献立に用いる「主食・汁物・主菜・副菜」、人が持つ五感「視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚」などもフレームワークです。
フレームワークという言葉に馴染みがなくとも、何気なく日常的に存在しているのです。

論理的思考の道しるべ

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論理的に思考するといわれても難しそうだし、無理かもと感じるかも知れません。
そこで、論理的な思考に導いてくれる「空・雨・傘」フレームワークを紹介したいと思います。

これは、「空を見ると、くもっている。雨が降りそうに思う。だから、傘を持って行こう。」と思考する流れになっています。
また、「空」「雨」「傘」のそれぞれが、「事実の把握」→「事実に基づく分析・解釈」→「分析・解釈に基づく行動あるいは提案」の思考過程を示しています。

•空 ・・・ 事実の把握 「くもっている。」
•雨 ・・・ 事実に基づく分析・解釈 「雨が降りそうに思う。」
•傘 ・・・ 分析・解釈に基づく行動あるいは提案 「傘を持って行こう。」

重要なのは、目的を達成できる傘(行動あるいは提案)になっていることです。
雨が降りそうだから「出掛けるのを止める」も行動の選択肢としてあり得ると思うかも知れませんが、出掛ける目的があったはずです。
また、「レインコートを持って行く」も選択肢としてあり得ますが、レインコートを持っていないのかも知れません。持っていたとしても、デザインが気に入らないのかも知れません。そのような事情も考慮したうえでの傘(行動あるいは提案)です。

ここで、雨(分析・解釈)を抜かしてみましょう。
「くもっている。だから、傘を持って行こう。」となります。一見して、正しそうに見えますが、正しくない傘(行動あるいは提案)を導いている可能性があります。それは、「これから晴れそう」という雨(分析・解釈)もあり得るからです。

•空 ・・・ 事実の把握 「くもっている。」
•雨 ・・・ 事実に基づく分析・解釈 「でも、これから晴れそう。」
•傘 ・・・ 分析・解釈に基づく行動あるいは提案 「雨具を持っていく必要はない。」

即ち、こういうことです。
くもっているから、傘を持って行こう → 事実を根拠にしている。
雨が降りそうだから、傘を持って行こう → 分析・解釈を根拠にしている。
コミュニケーションにおいて、伝える相手に対して、事実をどう評価したのかを示さないことには、相手方は、どうしてそういえるのか疑問に感じてしまうことになります。

コミュニケーションを伝える側の立場としては、事実は客観的であり説得力があるだろうと思ってしまうが故に、このようなことになりがちです。
ときとして、事実を根拠としているのか、事実の分析・解釈を根拠としているのか、判然としない論になっていることもあります。
このような論になってしまうと、コミュニケーションの相手方にとっては信憑性がない話しとなります。

雨(分析・解釈)を抜かしてしまうような、思考の過程に欠落があることを「論理の飛躍」といいます。話しが飛んでいるように感じるときは、「論理の飛躍」がある可能性があります。「空・雨・傘」を知っていれば、「論理の飛躍」を防ぐことが可能となります。

下町ロケットを思考

下町ロケットを題材にして「空・雨・傘」を使ってみましょう。
佃製作所の部品供給先となる帝国重工では、キーデバイスを内製化することにしています。ですが、特許の取得で佃製作所に先を越されてしまいます。そこで、帝国重工の社内でもめることになります。

•空 ・・・ 特許の取得に失敗した現実。代替え技術を開発する時間はない。
•雨 ・・・ ロケット打ち上げの準備を計画通りに進められない。
•傘 ・・・ では、どうする?

帝国重工には、4つの傘(行動あるいは提案)の可能性があります。
•佃製作所から特許を買い取る。
•佃製作所から特許の使用権を得る。
•キーデバイスだが、佃製作所から供給を受ける。
•佃製作所を買収する。

ところで、どうしてキーデバイスを内製化することにしているのでしょうか?

•空 ・・・ 日本はロケット開発に遅れており、使用部品を他国から輸入せざるを得ない。
•雨 ・・・ 他国の思惑により、部品供給を受けられないリスクがある。
•傘 ・・・ キーデバイスは、自社で開発してリスクを回避する。
しかし、帝国重工の財前部長は空(事実)が変化していることに気がつきます。
財前部長は、佃製作所からの部品供給に難色を示す部下に対して、「佃の技術が本物で、かつ安価であれば、それを利用しない手はない。君は勘違いをしているようだが、宇宙航空分野における真の競争相手は、佃製作所ではない。アメリカであり欧州であり、ロシアだ。彼らのロケットよりも高性能で信頼性が高く、かつ安いコストでなければならないんだ。そのためになにができるか。我々が考えるべきはそれだろ?意地の張り合いをしてどうする。これはビジネスなんだぞ」といって、説き伏せます。

•空 ・・・ 日本でも先進的なロケット技術が生まれている。しかも、信頼性がありコストも安い。
•雨 ・・・ 他国の思惑により、部品供給を受けられないリスクが解消されつつある。
•傘 ・・・ 佃製作所からキーデバイスの供給を受けることもあり得る。

このように、「空・雨・傘」の枠組みにはめることで、論理的に思考を展開することが可能となります。論理的思考と聞くと難しく感じるかも知れませんが、フレームワークが論理的に思考することを手助けしてくれるのです。

そして、フレームワークを自分で生み出す必要はありません。先人たちが考えてくれたフレームワークに便乗すれば良いのです。
(次回へ続く。本連載は隔週の更新を予定しています。)
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