エネルギービジネスの革命者、イーロン・マスク【スマホでサンマが焼ける日】

【第5回】電気・エネルギー業界は今、50年に1度の大転換期を迎えています。電力自由化をきっかけに各家庭へのスマートメーター導入が開始され、電力産業、電力関連ビジネスは一気にデジタル化の道を歩み始めました。本連載では、RAUL株式会社代表取締役の江田健二氏が、IoTとも密接な関係を持つ電力とエネルギーの未来を、ワイヤレス給電、EV(電気自動車)、ドローン、ビッグデータ、蓄電池、エネルギーハーベスティング、VPPといった最新テクノロジーの話題とからめながら解説します。

本連載は、書籍『スマホでサンマが焼ける日』(2017年1月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。

道路を走る車の約4分の1がEVになる未来

先ほどEV(電気自動車)が将来蓄電池がわりになるという話をしましたが、これからEVはどれくらいのスピードで社会に普及していくのでしょうか。

ある調査(Bloomberg New Energy Finance)によると、2040年までにEV販売は4100万台になると予測されています。
この数字から計算すると、EVが新車の小型乗用車販売で35%のシェアを占め、道路を走る車の約4分の1がEVになる計算になります。この予測がどこまで正しいかは現時点では分かりませんが、いずれにせよEVがこれからの電気・エネルギー産業にとって重要なキーワードになることは間違いないでしょう。

EV先駆者のテスラモーターズ

そして、EVについて語る上ではずせないのがテスラモーターズです。
テスラモーターズは、先ほどお話ししたように、高性能の蓄電池「パワーウォール」を開発・販売している会社ですが、ここで少しテスラモーターズについて触れておきたいと思います。

テスラモーターズは、2003年に現CEOのイーロン・マスクらシリコンバレーのエンジニア数名によって設立された会社ですが、ただの電気自動車メーカーではありません。
前述のように蓄電池「パワーウォール」の開発・販売を行うなど、EVのみならずエネルギー関連のイノベーションに力を注ぐ、今世界から注目を集める革新的なテクノロジー会社です。

テスラモーターズは生産・販売方法も他の自動車メーカーと一線を画しており、ディーラー網を持たず、まるでアップルストアのように、高級ショッピングエリアなどに実物が見られるギャラリーを作り、販売は基本的にウェブを通じて行っています。日本でも東京・港区の南青山に国内唯一のショールームを開設して注目を集めています。

スマホでサンマが焼ける日 電気とエネルギーをシェアする未来の「新発想論」

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この連載では書籍からごく一部のキーワード解説を掲載しています。
50年に1度の大転換期を迎えた電気・エネルギー業界の未来のキーワードをチェックするならぜひご覧ください!

エネルギービジネスのキーパーソン、イーロン・マスクとは?

テスラモーターズのCEO、イーロン・マスクは、EV事業のほかにも「スペースX」という会社を設立して、「人類を火星に送る」ことを目標にロケット開発や打ち上げなど宇宙開発にも取り組んでいることで有名です。

イーロン・マスクは第2のスティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツとも言われる一方、その突飛な発想やアグレッシブな経営の仕方に対しては賛否両論あり、その評価は分かれています。
しかし私は、コンピュータの世界で人類の歴史に名を残すであろうジョブズやゲイツ同様に、イーロン・マスクは電気・エネルギー分野の革命者として人類史に名を残すのではないかと考えています。
先ごろテスラモーターズは、太陽光発電ベンチャーの「ソーラーシティ」という会社を買収、イーロン・マスクはスペースX、テスラモーターズに続く3つ目の事業、ソーラービジネスに乗り出しました。

イーロン・マスクは、宇宙産業、電気自動車産業、電気エネルギー産業、これらすべてを手中に収めつつ、それぞれの分野におけるテクノロジーやシステムを相互に結びつけ、エネルギー産業全体を支配していく。そんな野望を抱いているのでは、とも言われています。

イーロン・マスクに対する評価はさておき、彼がこれからの電気エネルギー産業、エネルギービジネスのキーパーソンであることは間違いありません。次はどんな破壊的イノベーションを我々に見せてくれるのか、大いに楽しみにしたいところです。
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