プラスチックは本当に環境の敵? 日本の資源循環に変化を起こす、新しいブロックチェーンとは(連載8回目)

【連載8回目】技術はどんどん進化しているのに、暮らしやすくなったり、日々が豊かになったような気があまりしない……。どうしてだろう? 皆さんはそんな風に感じたことはありませんか? この連載では、いろいろな会社や学校などと共に、より「良く生きる」ためのテクノロジーの活用方法を追求している日本アイ・ビー・エム株式会社のとあるチームの取り組みをご紹介させていただきます。

本記事の原稿は、AIやIoTを活用し、さまざまな企業・組織と協働して社会課題の解決につなげる活動をされている、日本アイ・ビー・エム株式会社の八木橋パチさんに寄稿していただきました。
(グーテンブック編集部)
海洋プラスチックごみに苦しむ動物の姿から、「プラスチックは環境の敵」というイメージを持っている人も少なくないかもしれません。

でも、よくよく考えてみれば、海洋プラスチックごみが増え続けている一番の大きな理由は、プラスチックを「ごみ」として廃棄しているからですよね。
きちんと回収されて再生されれば、それがごみとなることも、海に流れ着きマイクロプラスチックとなってしまうこともグッと少なくなるはずです。

海外では、2019年頃から「reciChain」「Circularise」という、プラスチック資源のサーキュラー化プロジェクトが本格化していました。

一方日本では、大規模なプラスチック・リサイクルの取り組みはつい最近まで見られませんでした。
また、小規模なものであっても、資源として繰り返し使用するのに重要な「回収〜分別〜成形〜販売」の循環サークルの結びつきが弱いことが多かったのです。

今回は、そんな日本のプラスチック資源循環に変化を起こしているブロックチェーンの動きをご紹介します。

旭化成のプラスチック資源循環プロジェクト「BLUE Plastics」

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「BLUE Plastics(ブルー・プラスチックス)」プロジェクトは、旭化成をリーダーに、ライオンやメビウスパッケージング、富山環境整備や日本IBMがチームを組み、プラスチックのリサイクル推進により環境負荷の低い「資源循環社会」の実現を目的としています。
その特徴は、下記の3つに代表されます。

1.ブロックチェーンによる認証でリサイクル証明を担保
IBMのブロックチェーン技術を応用して再生プラスチックのリサイクル率を証明。
消費者はQRコード等を読み取ることで、再生プラスチックのリサイクル率を確認できます。

2.リサイクルチェーンの可視化により消費者の安心感を醸成
QRコード等を読み取ることでリサイクルチェーンとプレイヤーをさかのぼって確認。
データはブロックチェーンで管理されており、来歴の透明性を担保することで消費者の安心感を醸成します。

3.消費者のリサイクル行動の変容を促す仕組みづくり
リサイクル行動にポイントを付すことで、消費者の行動変容を喚起。
実証実験や社会実装を通じてさらに効果的な仕組みづくりに努め、新たなリサイクル文化の創造を目指します。

世界トップレベルの素材メーカーから、商品ブランドオーナーや成型加工メーカー、リサイクルメーカー、ブロックチェーンプラットフォーム技術開発企業がすべて揃っていることで、「回収〜分別〜成形〜販売」の大きなサークルが完成します。
そして今後、追加参画企業の発表も予定されていることから、資源循環のサークルはもっともっと大きくなることでしょう。

より少ない資源で、より環境負荷を少なく、より効率的に。
BLUE Plasticsは、新たなリサイクル文化の創造を目指しています。

三井化学の資源循環プラットフォーム

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三井化学は日本IBMと共に、2022年中内に化学メーカーや家電メーカー、リサイクル業者などでつくる資源循環のためのコンソーシアム設立を目指しています。

そのための具体的なアクションとして、プラスチック素材の原料販売から製品化、回収、粉砕などの過程を追跡するシステムを構築し、資源ライフサイクルにおけるトレーサビリティーを担保しリサイクル材の円滑な流通を支援する、「ブロックチェーン技術を活用したプラスチック資源循環プラットフォーム」の取り組みをスタートしています。

三井化学の化学素材と資源循環に対する強いこだわりは、「そざいの魅力ラボ MOLp(MITSUI CHEMICALS MATERIAL ORIENTED LABORATORY)」にも表れています。

先日開催されたMOLpの展示会でも、レジ袋をアップサイクルしたパスケースなど、再生プラスチックを用いた多くの製品が展示販売されていたそうです。

ブロックチェーンを用いた「人権問題」への取り組み

最後に、環境問題と並びSDGs実現の鍵を握っている「人権問題」へのブロックチェーンを活用した取り組みを紹介します。
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スマートフォンや電気自動車(EV)に利用されている希少金属「コバルト」は、その多くがコンゴ民主共和国で採掘されています。
そのうちの20%には数万人にものぼる児童労働が関わっているとされています。さらには、採掘が引き起こす水や大気の汚染、化学物質による汚染が大きな社会問題になっています。

このように複数の大きな社会問題を抱える資源調達のトレーサビリティにブロックチェーンを適用し、資源が商品となり消費者に届くまでの間で人権侵害・環境被害・就労違反をしている事業者を排除しようというのが、国際コンソーシアムでありブロックチェーン・プラットフォームでもある「RSBN: Responsible Sourcing Blockchain Network」です。

紛争や人権侵害、環境被害を無くすために、コバルト以外にも鉱物やパーム油、綿やパルプなど、さまざまな資源の「責任ある調達」に今後ますます注目が集まるでしょう。
以前であれば、資源調達の構造の複雑さなどから、私たち消費者はその不透明さを「仕方がない」ものと考えていました。しかし今、ブロックチェーンという新しいテクノロジーがそれにチャレンジしています。
社会を、より安全でサステナブルな場所へ変えようとしているのです。

Happy Collaboration!
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