SDGsの目標「1. 貧困をなくそう」と「15.陸の豊かさも守ろう」の達成に一歩でも近づくために。許可型ブロックチェーンが変える未来(連載7回目)

【連載7回目】技術はどんどん進化しているのに、暮らしやすくなったり、日々が豊かになったような気があまりしない……。どうしてだろう? 皆さんはそんな風に感じたことはありませんか? この連載では、いろいろな会社や学校などと共に、より「良く生きる」ためのテクノロジーの活用方法を追求している日本アイ・ビー・エム株式会社のとあるチームの取り組みをご紹介させていただきます。

本記事の原稿は、AIやIoTを活用し、さまざまな企業・組織と協働して社会課題の解決につなげる活動をされている、日本アイ・ビー・エム株式会社の八木橋パチさんに寄稿していただきました。
(グーテンブック編集部)
前回は「ブロックチェーン(Blockchain)」の基礎的な話として、パブリック型と許可型の違いと特徴について、そして許可型ブロックチェーンがどのように「SDGsの目標14 海の豊かさを守ろう」を後押ししているかという事例をご紹介しました。

今回は、許可型ブロックチェーンが小規模コーヒー農家の人びとや「森の住人」オランウータンをどう支援しているのか、さらには気候変動や地域コミュニティーをどのように支援できるのかについてご紹介します。

前回の記事がSDGsの目標14の達成をサポートするものだったのに対し、今回は主に「1. 貧困をなくそう」と「15.陸の豊かさも守ろう」という目標達成をサポートするものです。

SDGsの169のターゲットとは

ブロックチェーンによるSDGs支援の詳細に入る前に、1つ皆さんに質問です。
SDGsの17の目標には、より具体的な行動や達成方法が書かれた169の「ターゲット」と呼ばれるものがあるのをご存知ですか?

今回紹介する小規模農家や森を守る取り組みは、以下のターゲットに対する具体的なアクションとなっています。
1. 貧困をなくそう
1.1    2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。

1.5    2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
15. 陸の豊かさも守ろう
15.4    2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。

15.a    生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。

15.b    保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。
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こちらのオリジナルデザインのSDGsカード(「1. 貧困をなくそう」「15. 陸の豊かさも守ろう」)は、書籍『SDGsが生み出す未来のビジネス』にて紹介しているものです。著者の許可を得て掲載しています。

コーヒーとコーヒー農家にまつわるあまり知られていない、でも知っておきたい事実

・ 日本は個人当たりのコーヒー消費量世界第4位。

・ ブラジルを除き、ほとんどすべてのコーヒー栽培国で、コーヒー豆は熱帯気候の地域で小規模農家により栽培されている。

・ 多くの場合、現地の小規模農家にとってコーヒーは唯一の収入源であり大切な換金作物。

・ コーヒー農家の生活はコーヒー豆の価格変動に大きく依存しており、価格が低く厳しい年には農家の収入はゼロに等しくなってしまう。

・ 近年では、2018年に業界全体のコーヒー栽培平均利益率がマイナス2%を記録している。

・ コーヒー豆のほとんどを生産している小規模コーヒー農家の平均年間世帯収入は3,000米ドル以下

・ 以前はかなりの精度で予測できたコーヒー豆の収穫量と質が、現在は大規模な気候変動によりほぼ予測不可能となっている。

・ 広大な熱帯雨林がパーム油採取のための大規模農園を作るために伐採されてしまい、コーヒー農家は周辺コミュニティと共に気候被害に苦しんでいる。

・ 先進国のコーヒーショップで売られているコーヒー一杯500円のうち、コーヒー豆農家の取り分は5円程度と推測される。

・ 18歳から24歳までのコーヒー消費者たちの3分の2が、持続可能かつ倫理的に生産され調達されたコーヒーを飲みたいと言っており、そのためであればいくらかの割増料金を支払うことも厭わないと考えている。
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オランウータン・コーヒー | テクノロジーを通じて消費をより人間的にする

上記の「あまり知られていない、でも知っておきたい事実」を踏まえた上で、以下の記事からの引用をご覧ください。
オランウータン・コーヒーは、急速に衰退するスマトラ・オランウータンの生息地である熱帯雨林を救おうという使命を持った、単一品種・農園・生産処理を施されたシングルオリジンコーヒーです。
ブロックチェーン「Farmer Connect」には、オランウータン・コーヒーがコーヒー愛好者の手元に届くまでのサプライチェーンのすべてが記録されています。

消費者はパッケージに印刷されたQRコードをスキャンするだけで、「Thank My Farmer」プラットフォームに移動し、コーヒーの栽培、焙煎、輸出が行われた場所を地図上で確認することができます。また同時に、農家とスマトラ・オランウータン保護プログラムを支援するための寄付を行う機会を得られます。

私たちは、消費者や小売業者に原産地の農家まで正確にさかのぼることのできる信頼できる手段と、寄付金を通じて農家と直接つながれる手段とを提供することで、持続可能な消費を一層高めることができるのではないかと考えています。
企業が提供している商品や価値に対する消費者の意識を高めることにより、業界全体の持続可能性に対する基準を引き上げることができるのではないでしょうか。

農家の人びとは、以前から自分たちのコーヒーがどこに行き着くのかを知りたいと思っていました。そして今回、コーヒー愛飲家が豆の出生地に興味を持ち、生産者への支援を申し出てくれていることに喜びと感謝を感じているのです。

私たちUCCコーヒーにとって、プロジェクト着手にあたり適切なパートナーと協力することが重要でした。
そんな中「テクノロジーを通じて消費をより人間的にする」という「Farmer Connect」のビジョンは、私たちの考えと完全に一致していましたし、最先端のIBM Blockchain技術を利用している「IBM Food Trust」を用いるという彼らのスタンスは、信頼性と効率性に重きを置いていることを示す明確なサインでした。

ギフトエコノミー | 感謝の気持ちと行動をブロックチェーンでつなぐ

先ほどのオランウータン・コーヒーがインドネシア、スマトラ地区のコーヒー農家と自然環境を支援するものだったのに対し、こちらはコロンビアから世界へと広がっている取り組みです。
2020年の1月、IBMとFarmer Connect、そして大手食品メーカーJ.M. スマッカーを含むコーヒー業界の主要メンバー・グループは、ブロックチェーンアプリ「Thank My Farmer」を発表しました。

「Thank My Farmer」はコーヒー消費者向けのアプリで、使用しているコーヒー豆についてどのような種類の豆がどのように栽培され、調達されたのかを確認することができるものです。
さらに「Thank My Farmer」を通じて、コーヒー愛好家は小規模農家のコーヒー苗木や農業機械の購入資金や、農家や地域の学校に清潔な水を届けるインフラ整備費用、地域の子どもたちのための学用品購買費用など、コーヒー農家とその周辺地区の生活改善支援プログラムに金銭支援をすることもできます。

そしてこの新サービスにより、コーヒー愛好家は「Thank My Farmer」アプリを通じて、自分のお気に入りのコーヒーがどのような旅路を廻り、自分の元までやってきたのかを確認することができます。
そして手軽に感謝のチップを送ることで、コーヒーが栽培されているコロンビアのコーヒー農家を支援する地域プロジェクトと、現地の社会起業家を支援することができます。

ブロックチェーン・プラットフォームのシングルオリジンコーヒーへの展開は、今後、最も広く流通しているマルチオリジン・ブレンドコーヒーのトレーサビリティの基礎を築くものとなるでしょう。
そして今後、信頼できるブロックチェーンを通じて、もっと多くのコーヒー農家とデジタルにつながり、私たちは感謝の気持ちを伝えられるようになるでしょう。

「Thank My Farmer」は、私たちの小さな感謝の気持ちを、遠く離れた小規模コーヒー農家へと集めていく「贈与経済(ギフトエコノミー)」的な行動の社会実装の一事例です。
 (6841)

今後は日本でも、ブロックチェーンというテクノロジーを活かした人とコーヒーの「より良い」つながりがきっと増えてくるのではないでしょうか。
私はコーヒー好きで1日に3〜4杯は飲むのですが、今回紹介させていただいた「コーヒーに関する事実」を知ったことで、コーヒー豆の選び方や買い方を少し変化させました。

最後に、今すぐ実施できる「エシカルにコーヒーを楽しむ2つの方法」を紹介させていただきますね。もし、あなたがコーヒー好きなら、ぜひこちらもチェックしてみてください。

キズナコーヒー​|障害者に、楽しく働ける職場と自活できる収入を
ハンデキャップのある珈琲焙煎士が活躍している焙煎工房によるコーヒー豆販売。

オランウータンを守るEcoffee Cup(エコーヒーカップ)
売り上げの3%がオランウータンの暮らす森の保全に活かされる、竹でできたエコなコーヒーカップ。

Happy Collaboration!
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