企業も障害者も、両者が幸せになる方法はある!(連載3回目)

(連載第3回)障害者専門の人材サービス会社「パーソルチャレンジ」に発足したパーソルチャレンジ Knowledge Development Project による、経営目線に立った障害者雇用の成功セオリー。障害者の人材紹介や雇用コンサルティングに携わる一方、自社でも多くの障害者を雇用する経験を踏まえ、企業と障害者がwinーwinの関係に近づくための「障害者雇用成功のポイント」を紹介します。

本連載は、書籍『障害者雇用は経営課題だった! 失敗事例から学ぶ、障害者の活躍セオリー』(2019年12月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。

「捨て金」を生む、障害者の据え置き雇用

障害者雇用は簡単なことではありません。
経営判断が必要なレベルから現場担当者レベルまで様々なレイヤーで問題が発生し、改善に向けた地道な努力が必要となります。

その努力を諦め、雇用しただけの状態、言わば「据え置き雇用」を行ってしまう企業も残念ながら存在しています。

出社してもネットサーフィンだけ? 人材として活用していない実態

据え置き雇用の例として、最低賃金で障害者を雇用し、一日中業務にほとんど関係がない簡単な作業をやらせるといったものがあります。
せっかく出社したのに、一日新聞を読むだけ、ネットサーフィンをするだけ、という企業も実際にあります。
また、他の社員には実施している研修や勉強会に、障害者を参加させていない企業も多く見られます。

このような据え置き雇用は、企業の目的が障害者を雇うことにフォーカスされてしまい、障害者を人材として活用しようとしないことに起因します。

据え置き雇用は具体的な法令に抵触する違法雇用ではないかもしれませんが、昨今各社で経営課題としているD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)経営とは正反対の施策であり、コンプライアンス的には問題があると私達は考えています。

※D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)……国籍や人種、性別、宗教、障害の有無などの属性の多様性と、就業時間や勤務場所、雇用形態などのはたらき方の多様性を認め、包括(インクルージョン)すること。

コストの面でも、据え置き雇用は全くおすすめできません。
採用だけでも1人につき100万円前後かかっていて、雇用後は給与も発生します。据え置き雇用をしていると、そのお金が全て「捨て金」になってしまうのです。

次の図(①障害者の雇用分布図)にあるように、現在、障害者雇用は活用が容易な一部の能力が高い障害者に採用が集中し、競争が激化しています。
厚生労働省のデータを見ても、障害者雇用の95・4%が総合職や一般職、アシスタントなどの業務レベルの比較的高い人材です(※厚生労働省「平成29年度障害者雇用状況の集計結果」、同「平成28年度障害者の職業紹介状況等」)。
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しかし、法定雇用率は上昇傾向にあり、業務レベルが高くない人材にも目を向けなければ法定雇用率を達成することができません。

業務レベルの高くない人をも活用する取り組みをしなければ据え置き雇用が増え、「捨て金」も増えてしまう可能性があるのです。

障害者雇用コストを「活き金」に変える方法

しかし、障害者雇用のコストを企業活動への貢献に繋がる「活き金」にする方法もあります。

もし会社で発生している業務を適切に切り出して障害者に任せられれば、会社全体の生産性が向上し、障害者雇用のコストは「活き金」になります。
さらに、研修や勉強会などの投資をすれば、障害者自身の生産性も向上します。障害者自身のモチベーションが上がり、定着率も高まるでしょう。

他の社員には当たり前にしていることを、なぜ障害者にはしないのでしょうか。
せっかくお金をかけて雇用した社員なのですから、業務に取り組む機会を与え、投資をし、成長してもらうべきです。

企業にとって障害者雇用は「百害あって一利なし」というものではありません。
完全な黒字にするのは難しいかもしれませんが、障害者雇用にかかるコストの半分でも活き金にできれば、企業にとって大きな貢献になります。

障害者雇用を成功させることで、はたらきやすさ、生産性、コストなど、様々な面でwin―winの関係に近づけることは不可能ではありません。

障害者をひと括りにするのが、悲劇の始まり

では、企業と障害者がwin―winの関係になるにはどうすればいいのでしょうか。方法は様々ありますが、最も重要なのは「障害者をひと括りにしない」ということです。

「障害者の志向」と「企業の施策」をマッチングさせる

あなたの会社では、障害者を雇用した場合の給与レンジはいくつありますか? 業務パターンはいくつありますか? 

担当できる業務レベルや障害者本人が希望するはたらき方は様々なのに、「給与レンジが一つしかない」「担当業務の選択肢がない」という企業は、私達が支援している現場でも数多く見られます。ほとんどの企業で見られると言っても過言ではありません。

このような状態だと、障害者の志向と企業の施策のミスマッチが発生します。
障害者にも活躍してほしいと言いながら、昇進昇格する機会のない制度を適用するなど、いわゆる「障害者向け業務」しかアサインしないため、障害者の成長意欲や活躍を阻害する結果になっています。

そのような雇用環境では職場の雰囲気の悪化や早期退職による採用・教育が繰り返され、コストの増大といった悪影響が出てくるのです。

本来なら障害者一人ひとりの志向や担当できる業務レベルはそれぞれ違いますが、パーソルチャレンジの支援経験から要約すると、大きく二つのグループに分けることができるようです。
「グループに分ける」といっても、すべての障害者がどちらかのグループに区分されるというものではなく、あくまで一人ひとりの個人差によるところが大きいということに留意してください。

障害者を二つの志向性グループに分けて考える

一つは意欲の高い人材
はたらく意欲も能力もあり、生産性のある人材として事業の成長に貢献できる方たちです。人事制度的には総合職に準じるグループです。
障害があっても一般の枠で応募される方もいらっしゃいます。実力に見合った業務を担当してもらい、成果に応じた評価をしていく「活躍マネジメント」が適しています。

もう一つは自分のペースを守ってはたらきたい人材
「バリバリ活躍して結果を出したい!」というよりは、「障害状態と向き合いながら安定した環境で長くはたらきたい」という志向が強いグループです。数としてはこちらのグループが圧倒的に多数派です。
もちろんこういった志向が悪いわけではありません。環境を整えれば、コツコツと着実に業務をこなしてくださる方もたくさんいらっしゃいます。

法定雇用率が上がり、障害者雇用市場の競争が激化していくことを考えると、このような人材を幅広く採用し長くはたらいていただくことが必要不可欠。その人の能力に応じた仕事をお願いし、配慮や定着を重視したマネジメントが必要です。
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一点注意が必要なのは、同じ人でも体調などによって志向が変化することです。
「体調が悪化したので仕事のペースを落としたい」という場合もあれば、「体調が回復してきたので、仕事のペースを上げたい」という場合もあります。そこを見越して、どちらの場合にも対応できる移行可能な制度にしておくことが必要です。

重要なのは、「障害者の志向」と「企業の施策」のマッチングです。
障害者以外の社員でも、スキルアップや出世に熱心な社員、高い目標を掲げた方が力を発揮できる社員、ルーチンワークやアシスタント業務が得意な社員など、いろいろな方がいらっしゃいます。
障害のある社員にも、他の社員と同じように適性に合った業務を任せ、業務に応じて評価するのが理想です。

しかし、私達は障害者雇用の現場で、理想と大きくかけ離れた状態を数多く見てきました。
次の回からは、障害者の志向と企業の施策のミスマッチから悪影響が出てしまった事例をご紹介します。
全て様々な企業でよく見られる事例ですので、自分の会社でも起こっていないか意識してご覧ください。

障害者雇用は経営課題だった! 失敗事例から学ぶ、障害者の活躍セオリー

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障害者雇用に迷う、すべての企業経営者に!
障害者専門の人材サービス会社「パーソルチャレンジ」に発足したパーソルチャレンジ Knowledge Development Project による、経営目線に立った障害者雇用の成功セオリー。企業と障害者がwinーwinの関係に近づくための「障害者雇用成功のポイント」を紹介します。
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