何が強みか? 何が障害か? 障害のある方の「個の強み」をどう活かすかを大切にしたい(連載1回目)

(連載第1回)「障害者福祉の仕事を通じて福祉業界の『常識』を変えたい。」本連載では、福岡で障害者メンバーとチームを組んでITを活用した仕事を続ける就労継続支援A型事業所「カムラック」でサービス管理責任者統括として働く冨塚さんが、就労支援現場での取り組みをまとめた書籍『ふくしごと』から、福祉の未来を作るための実践をお伝えします。本連載は6回を予定しています。ご興味いただけた方は記事最後に紹介している書籍『ふくしごと』もぜひご覧ください。

本連載は書籍『ふくしごと』(著:冨塚 康成/2019年10月発行)の一部を抜粋・再編集し収録しています。

障害者就労の支援の現場から

私は現在、株式会社カムラック(賀村 研 代表取締役)の社員として、主に障害者総合福祉法における訓練給付のひとつである障害者就労支援事業において、福祉全般について仕事をさせていただいております。

株式会社カムラックは、平成26年に厚生労働省の福祉行政のもと、各自治体が運営費を一部負担することで、障害のある方の働く機会の提供と、一般企業への就労を支援するための福祉サービスである障害者就労支援事業を行っている会社です。IT分野にてパソコンを使って障害のある利用者に仕事をしてもらったり、仕事のスキルを身につけてもらったりするところです。

障害者の「個の部分の強み」をどう活かすか

障害者の中にも、優れたスキルを持った人はいます。会社の戦力として活躍できる人がいるのに、雇用をし、給与を払っているのに、その対価に見合う労働をさせていません。

障害者を「弱者」としてとらえ、障害者を個の戦力として捉えることない社会。「弱者」であることを特に考えることなく受け入れることで、自身が「強者」になっていることに気づいていない障害者。その「常識」が、現在の日本の障害者福祉問題を停滞させています。

「障害」というからには、簡単に「障害による問題」が改善されたり影響を少なくしたりすることはないと思います。ただ、「障害者福祉」の考え方は、障害のある方の「個の部分の強み」をどう活かし、また、その強みを「障害部分」が阻害させないように手段を考える支援こそ、この仕事に携わるにあたって、私が意識したいと思っていることです。

福祉法制度上はいろいろ整ってきて、過去に比べれば障害者にとって生きやすい社会になっていると思いますが、日本が福祉的に充実してきたかといえば疑問があります。雇用率制度も以前に比べ拡充してきたにもかかわらず、行政庁が守っていなかったなど課題は明らかにあります。理念と実践を普段から言葉で結びつけ伝えていくようなことが、日々の忙しい活動の中で物理的(時間的)にも難しくなっています。
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相談支援は「言葉で行なうもの」ですが、支援の中身や意味づけは言葉にしづらく、言葉にし切れていない未熟さがあります。この人に話して良かったと思ってもらえるようになりたい、少なくとも話したことを後悔するような職員にはならないように力をつけたいと思っています。

今まで思い込みや先入観で相手を決めつけていたり、価値観や常識に囚われていたり失敗もたくさんあります。自分と向き合うこと・自分を疑ってみること、自分の感情をコントロールしていかないと、この仕事は続けていけません。逃げ出したくなるようなしんどい気持ちと向き合い理由を自問する。これを繰り返すことで自分自身を見つめなおして支援に活かしていきたいと思います。

主体的に仕事に取り組みながら、俯瞰的に観ていくことはこの世界にいると特に必要なことで、つい目の前のことに追われがちになります。何を耕すのか、何を開拓していくのかは社会の課題が見えていないといけませんし、積極的にそこに関わっていなかったら課題が見えてこないので、社会に関心を持ちながら日々を過ごすことは重要です。
この記事が支援者として働く人、支援してもらい働く障害者の考えるきっかけになればと思っています。

障害者支援法と、支援サービスの現状

障害者総合支援法とは

障害者総合支援法は、平成25年4月1日に施行されて、8年が経過しています(2021年現在)。

障害者総合支援法とは、障害のある方もない方も住み慣れた地域で生活するために日常生活や社会生活の総合的な支援を目的とした法律です。この法律に基づき、障害のある子どもから大人を対象に、必要と認められた福祉サービスや福祉用具の給付や支援を受けることができます。実施主体は主に市区町村、都道府県などの地方公共団体です。
一口に障害といっても、その実情は一人ひとりさまざまです。日常生活の中でも、自分でできるけれど時間がかかったり、自発的に行えなかったり、症状の調子が悪い時にはできなくなるなど、条件付きで「できる」という方もいます。

どの程度生活に支障があるかは人によって異なりますし、「できる」「できない」で障害の程度を判断することは難しいのです。そこで障害者総合支援法では、障害程度区分を改めて「障害支援区分」とし障害者それぞれの生活環境を踏まえ、どのような支援をどの程度必要とするかといった度合いを測ることになりました。

障害者総合支援法のサービスを使うためには原則として障害者手帳が必要ですが、一部を除いて医師の診断書があれば手帳がなくても使うことができます。

障害福祉サービスの課題

ここまでご説明してきた障害者総合支援法ですが、「生活」と「就労」に対する支援をより一層充実させることを目標とした新サービスの創設や、既存のサービスをより充実させるため、いくつかの法改正が行われました。

就労支援を利用し一般企業へ就職しても、環境の変化により遅刻や欠勤の増加、業務中の居眠りなどの新たな生活面の課題が生じる方がいます。課題の解決として創設された就労定着支援事業は、事業所が職場・家族・関係機関への連絡調整や職場・自宅への訪問による生活リズム・体調の指導助言を行う支援ができ、定着率の増加が期待されています。

また、障害福祉サービス事業所の数が大幅に増加する中で、利用者が個々のニーズに応じて良質なサービスを選択できるようにするとともに、事業者によるサービスの質の向上が重要な課題となっています。そこで、事業者に対してサービス内容などを都道府県知事へ報告し、公表する仕組みが作られました。その結果、この情報をもとに、利用したいサービスを提供している事業所を選択することができるようになりました。

ただし利用者にとっての使い勝手としては、まだまだ課題があります。
検索方法は、事業所名・住所からサービスの種類を絞って探すのですが、初めてサービスを受けたいと思っている人にとっては、事業所名はわからないだろうし、事業所の住所より自分の住所を入力して利用できる事業所が出てくる方が便利な筈です。サービスの違いが分からなければ絞ることも難しいかと思います。そこまで絞ってもサービスの内容や給料など、ひとつひとつ検索して出てきた事業所を比較するのは面倒です。

ネットで商品を選ぶように、自分にとって必要な情報を上限下限やキーワードを入れることで一覧が出てくると便利だと思うのですが。こういうところが、まだまだ利用者ファーストとなっていない気がします。
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障害者就労支援事業の目的

障害者が働く場所が誕生した当時、公的な福祉法制度の関与はありませんでした。その後、障害者の就労には自由がない措置制度の下として、戦後20余年後、作業所ができました。
就労継続支援事業A型というのは、福祉的就労の継続した支援です。一般企業での就労が困難な方に、働く場を提供し、知識及び能力向上のための訓練を行うことを目的とします。

利用期限がなく自分のペースで働くことができ、労働契約に基づく最低賃金保証があります。
利用者であると同時に、事業所と雇用契約を結ぶため「福祉的就労」の場として利用者に合わせた活動の幅を持たすことが難しくなっています。

厚生労働省では利用者の賃金は事業所の売上から分配されるとの見解です。つまり、事業所は利用者の賃金分の売上が必要であり、結果、売上単価が高くなるため、難易度の高い業務を行う作業スキルが必要となります。また、短時間勤務希望やスキルや経験の低い方が利用時間の長い事業所を希望しても、その分の売上が見込めないため利用が難しくなります。

法律が変わる中で、就労支援事業所も変わる必要に迫られます。ですが、求められる事は利用者個人の傍らに立ち、声を拾い・応答し、利用者と社会の間の橋渡しをし、「地域の中で当然のように働き・暮らすことを実現してゆく」目的は変わらないと思います。

就労移行支援事業所の特徴

「就労移行支援事業所」とは、障害者が一般企業への就職をするためのサポートをする通所型の福祉サービスです。一般企業にて働き続けるための職業訓練や就職活動の支援、就職後は職場定着の支援を受けることができます。

就労移行支援事業所を利用するメリット

特徴をご理解いただくために、メリットとデメリットをお伝えします。
就労移行支援事業所を利用するメリットは次の五つです。

①企業が最も重要視する「健康管理の力」を身につけることができる
②働き続ける上で課題となる「障害」への対応策を身につけることができる
③就労に向けた専用のプランを障害者就労に詳しいスタッフに立ててもらうことができる
④通いながらスキルアップ研修やトレーニングを受けることができる
⑤就職支援はもちろん、就職後の定着支援(半年)を受けることができる

その他、一般の企業で働くために必要な「ビジネスマナー」や「就職活動」の研修があります。
ですが、何より大切なものは、働き続ける上で課題となる「障害」への対応策を身につけることです。障害の状態は人それぞれ違います。職業スキルの向上だけではなく、「障害」への対応策を身につけることが長く働き続けるためには重要です。

就労移行支援事業所を利用するデメリット

デメリットは、通所期間中に働くことはなく就業準備に専念するため、基本的に給料が発生しないという点です。経済的理由でスキルアップを望んでいても、移行支援サービスを断念する人が多いのも現実です。

名前は似ていますが、「就労継続支援」と「就労移行支援」は全く違うサービスです。就労移行支援は、就労「継続」支援と違いサービス期間が原則2年と定められています。つまり、「2年以内に一般就労が可能」という方が利用するサービスとなります。

現状の問題点としては、雇用契約を結び福祉的支援の下で働きたいと思ったときに、障害において生活リズムなどが安定していても、業務スキルがなければ働けません。業務スキルを身につけたくても経済的余裕がなければ、学ぶ機会を得られないという問題があります。

ふくしごと ~福祉で働く人のための、障害者支援の現場から伝えたい未来を考える力~

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■本書の内容
第1章「障害者支援について」では、特に障害者就労の支援の現場で実際に仕事として行なっている内容を解説し、障害者福祉の現状をお伝えします。
続く第2章「働く障害者の理想を生むためには」、第3章「障害者福祉事業について思うこと」では、障害者雇用の理想と問題、現場から伝えたい目指すべき支援の在り方をお話します。
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