原稿の精度をあげるために必要な3つの確認ポイント【出版社をやってみて分かった「本と企画のつくり方」】

1.3つの確認ポイント
2.①まずは伝えようとしている内容をチェック
3.②論理的な破綻がないかを確認する
4.③文章として問題ないか、校正する
5.1回の確認で欲張らない
6.セルフチェックも必須
今回は、原稿を確認するポイントについてご説明します。
原稿を書き終えたら、まずは自分自身で読み返して(セルフチェック)、文章や内容に誤りがないか、言うべきことが書かれているかを確認しましょう。著者さん自身で誤りに気付き、修正しておくことで、手戻りが少なくなり、効率的に本づくりが進められます。
著者さんの確認が終わったら、プロの編集者が原稿の精度をあげるための確認をしていきます。

3つの確認ポイント

編集者によってチェックのやり方は異なるので、絶対に正しい確認の仕方というものはないのですが、私が確認する際には、「3つの視点で、3回に分けて確認する」ということを気を付けています。
この確認を行うことで、本づくりにおいてだけではなく、様々なシーンで精度の高い文章を仕上げることができるのではないかと思います。

①まずは伝えようとしている内容をチェック

まずは、著者さんが伝えようとしている内容をチェックします。
原稿に書かれた情報や主張は読者にとって有意義なものになるのか、役にたつものと言えるのかを、細かな表記や文章の構成は置いておいて、内容面に問題がないかを俯瞰してチェックします。

出版企画を作りこんでいく中では「面白い!」と思えている企画だとしても、読者にとっては原稿がすべてです。できあがった原稿を真っ白な気持ちで読んで、主張している内容・情報がすんなり頭に入ってくるかを確認しましょう。
企画段階や目次を作る際には良いと思っていても、文章化すると主張内容に問題を感じる場合が多々あります。もちろん書籍の主役は著者と読者ですので、編集者の立場から内容を否定することは多くはありませんが、読者視点で見て問題を感じるようであれば、やはりそこは主張内容の細部を著者さんとお話しながら、よりよいものへと調整していくことはあります。

「最初の読者」として編集者の力量が試されるステップともいえるでしょう。

②論理的な破綻がないかを確認する

2つ目の視点は、論理的な破綻がないか、前後で書いていることに矛盾がないか、など文章全体のロジックをチェックします。表現や表記というよりは、お話の流れに齟齬がないかを確認しています。
例えば、前ページではAと主張していたのに、同じことを次ページではBと話している。これでは読者も混乱してしまいますよね。著者さんの主張をより分かりやすく読者に届けるために、論理的な矛盾をチェックします。また、間違いではなくても、よりスムーズな論理展開や話の流れが考えられる際は構成の変更を提案することも多くあります。

1つ目の視点より、原稿をもう少し細かく読み込み、読んでいて唐突だったり、不要だったりする話題がないか、逆に足りていない要素はないかなども意識して、読みやすくわかりやすい原稿にブラッシュアップしていきます。

③文章として問題ないか、校正する

3つ目は校正の視点です。表記や言葉遣いに問題がないか、誤った文章はないか、といった文章としての正しさを確認します。
著者さんが書き終えた原稿に誤字や誤り、不適切な表現がないかをチェックし、修正していきます。誤りを正していく、校正の作業です。

2つ目の視点よりさらにミクロなチェックになり、誤字脱字がないか、日本語として正しい文章か、表記の揺れがないか、など、原稿の内容というよりは、言葉に誤りがないかを細かく確認していきます。

今は手書きではないのだから誤字脱字はあまりないのでは? と思われるかもしれませんが、PCでサクサク変換できるからこそ、間違いが発生します。事例をご紹介しましょう。

×「~を期に」 ○「 ~を機に」
×「税を収める」 ○「 税を納める」
×「収穫料」 ○「収穫量」
×「日本国有の領土」 ○「 日本固有の領土」
×「用いらない」 ○「用いられない」

また、次のような場合に表記の揺れがおこりやすくなります。
・「ねこ・ネコ・猫」のように、同じ言葉でも平仮名・カタカナ・漢字で表記できる場合
・「引っ越し・引越し・引越」のように、送り仮名が1種類でない場合
・「午後七時・午後7時・午後7時」「ウェブ・Web・WEB」など、全角・半角や大文字小文字の
表記揺れ
・文末の表記揺れ(〜だ・〜である)(〜です・〜ます)

この「正しい文章かどうか」のチェックを効率よく進めるために、様々な校正ツールを併用することをおすすめします。
私がよく使う校正ツールを2つご紹介します。

Wordに入っている自動校正機能

誤字脱字やスペルチェック、「ら」抜き言葉も校正もしてくれます。ただし1語ずつ機械的にチェックされているだけなので、「です・ます調」など文末表現の不統一といった観点は検知されません。

Just Right!

単純な誤字脱字だけではなく、表記ゆれや文体の統一など全体的なチェックもできます。
https://www.justsystems.com/jp/products/justright/

次の画像は、本連載の文章を一部変えてJust Right!の校正にかけてみた結果です。
 (5644)

「誤まり」「謝り」といった誤字脱字の指摘だけではなく、「いちばん」「さまざまな」といった平仮名表記を漢字表記にしませんかと提案しています。「文賢」は辞書にはない言葉であることや、「俯瞰」は常用漢字ではないという指摘もあります。

1回の確認で欲張らない

3つの視点についてご紹介しましたが、異なる視点を同時に確認しようとしないことが大切です。同時に確認しようとすると、どうしても意識が散漫になり、それぞれの視点がぶれてしまう可能性があるからです。
時間はかかりますが、3つの視点で3回確認するということが、漏れのない確認作業につながります。

セルフチェックも必須

プロの編集者による確認の前に、もちろん、著者さんによるセルフチェックも必要です。
誤字脱字がないか、表現・言い回しが適切か、欠けている・または重複している内容がないか、原稿全体のロジックがおかしくないか、などの観点で、原稿を何度か読み返します。

特に、「欠けている内容がないか」の観点は、プロの編集者のチェックがどうしても弱くなってしまうため、著者さん自身でしっかり確認しておく必要があります。
編集者は書かれた原稿をよりよくブラッシュアップする技術には割と長けていますが、そこに書かれていない内容を「足りない」と指摘するのは難しい場合があります。

必ず誤りがある前提でセルフチェックする

自分で書いた原稿の誤りを見つけることは、他人が書いた原稿の誤りを見つけることより難易度があがります。
書くときに気づけなかった誤りは、確認するときも見過ごしやすくなりますし、間違っていると思いながら書く著者さんはいないので、自分が書いた原稿は心のどこかで正しいと思い込んでしまいます。
漠然とセルフチェックしてしまうと、どうしても確認が甘くなってしまうため、「必ず間違いがある」という意識を持ちながら確認するとよいでしょう。

一般の人にも理解できる内容か

初めてその本を読む人が内容を理解できるのか、という観点も、知識がありすぎる著者さんにとっては確認しづらい観点です。
10を知る人と、1しか知らない人が同じ本を読んでも、理解度は変わってしまうからです。著者さんが一般常識と思って使っている言葉も、実は専門用語で一般の人には伝わらない言葉だった、ということはよくあります。

自分で書いた原稿をセルフチェックするということには限界がありますが、これらの観点を頭の隅に入れながら確認することで、原稿の精度を上げることができます。
今回は、原稿の確認方法についてお伝えしました。

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著者:窪田篤

株式会社masterpeace代表取締役社長。アクセンチュア株式会社で大規模システム設計/運用プロジェクトに参画。2013年、good.book(グーテンブック)立ち上げのため、masterpeaceに参画。新規事業企画・コンテンツ編集責任者を兼任。2018年5月より現職。
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