雇用企業担当者に伝えたい「障がい者をビジネスパートナーに変える3つのアプローチ」

【連載2回目】「障がい者が企業の戦力的なパートナーになる」というと、驚く方がまだまだ少なくありません。本連載では、福岡で障がい者メンバーとチームを組んでITを活用した仕事を続ける就労継続支援A型事業所「カムラック」を運営する賀村さんの書籍『日本一元気な現場から学ぶ 積極的障がい者雇用のススメ』から、障がい者とのパートナーシップの実践をお伝えします。

賀村さんが運営する就労継続支援A型事業所「カムラック」

賀村さんが運営する就労継続支援A型事業所「カムラック」
ITスキルを活かして障がい者メンバーが東京から九州の案件までを幅広く手掛ける

求められるのは、「支援される側から支援する側に変わる」波

今回は企業が障がい者を戦力としてとらえるための3つのアプローチについてお話します。

私は就労継続支援A型事業所「カムラック」で、障がい者を戦力とする事業を行っていますが、理想は社会全体にその考えを浸透させることです。障がい者の人数は増加していますので、その認識を日本社会全体が持つ必要があるのです。
福岡県の中小規模の企業の初任給が、月給15万円ほどですが、障がい者のなかで、そこまで稼げている人は本当に少ない。しかし私は、障がい者の方が月給20万円~30万円を稼げるような仕組みを作りたいのです。
障がい者が、「支援される側から支援する側に変わる」波を起こしたいと考えています。

「支援される側から支援する側に変わる」には、障がい者がビジネスパートナーと捉えられ、健常者とともに働いていくことが必要です。経営的視点から障がい者とパートナーシップを結ぶので、企業・障がい者双方にメリットが生まれるようにしなければいけません。

そうした協働体制を築くには、3つのアプローチがあると思います。

障がい者と協働体制を築くためのアプローチ1「戦力として雇用」

一つめは、もっともシンプルに、障がい者を実際に雇用することです。戦力として、企業や障がい者就労支援施設で雇用することで自立を促していくことができます。
ただし、雇用においてはきちんとした覚悟が必要です。互いに歩み寄り、実態を知っていくことが必要です。

障がい者と協働体制を築くためのアプローチ2「障がい者就労支援施設と協働」

障がい者への理解が深まっていない状態では、雇用にあたって不安を感じることもあるでしょう。

そこで、雇用よりもハードルが低い二つめのアプローチとして、障がい者就労支援施設などと協働することがあげられます。
カムラックのような障がい者就労支援施設とパートナーとして、一つのプロジェクトを遂行することで、「障がい者と仕事をする」という実感を得られるでしょう。

また、障がい者就労支援施設が一般企業と提携することは障がい者にとっても大きな意味があります。カムラックでは一緒に仕事をさせてもらったクライアントをお呼びして、「データ入力は彼女がしました」「彼がデザインの担当です!」などと障がい者を紹介していきます。
すると、「ありがとう!」「あのデザインは良かったね!」などと声をかけてもらえる。それが、障がい者にとっての仕事のやりがいと責任につながっていくのです。
thinkstock (2406)

障がい者と協働体制を築くためのアプローチ3「障がい者と協業している企業に業務依頼」

三つめは、障がい者と協業している企業に業務を依頼すること。どういうことか、カムラックを例に取り、説明していきましょう。

最近、カムラックは、「else if」というシステム開発会社と一緒に仕事を受けることが増えてきました。「else if」は福岡にあり、障がい者就労支援施設ではなく、いわゆる普通の事業会社です。ITを活用したソフトウェア開発を事業としています。

株式会社 else if

株式会社 else if
カムラックと業務提携している福岡のシステム開発会社さんです。
ITシステムは、すべてのパーツが連関しており、一部分のみの開発を切り離すことは難しい。しかし、複雑なITシステムの開発すべてを受けられるほどには、カムラックのレベルは至っていません。レベルが達していないから、せっかく依頼が来たのに諦めなければいけないというのは、大変もったいないことですよね。

そこで、「else if」と連携することにしたのです。システム開発の難易度の高いトップレベルのパーツは、「else if」が開発を担当し、ミドルからボトムレベルの業務をカムラックが担う。事務所もすぐ近くにあり、目線を合わせながら開発しています。この協業により、「レベルが合わなくて受けられない」という仕事がなくなりました。

クライアントにとっては、「else if」が窓口として受けることで安心感があるはずです。障がい者の実態がわからず不安に思っているならば、こうした一般企業と障がい者就労支援施設の分業体制ができている組織へ依頼してみるのも手です。

また、こうした仕組みを作ることにより、障がい者には徐々に難しい仕事へチャレンジしてもらうことができます。単純作業の繰り返しだけでは、障がい者は成長しません。「今回はここまでレベルアップしたものをカムラックで担おうか」など、小さなチャレンジを繰り返していくことで、障がい者がよりハイレベルな戦力として成長するのです。

なお、「else if」のような企業が増えることで、クライアントから仕事を受けられる障がい者就労支援施設も増えていくはずです。また、企業との接点が多くなればなるほど、一般就労を目指す障がい者も増加します。

仕事は、企業から障がい者就労支援施設に。人材は、障がい者就労支援施設から企業に。こうした流れを生むことができれば、ビジネスや障がい者雇用はもっと活性化するはずです。

障がい者就労支援施設とelse ifのような役割の企業が協業することで、障がい者と一般企業を大きく巻き込んだ良いサイクルがきっとまわり出す。私はこのビジョンを起業したときから「スーパーカムラック構想」と呼び、今も目指しています。

障がい者雇用の新たなビジョン

スーパーカムラック構想を進めた集大成として、2016年8月に「株式会社スーパーカムラック」を設立しました。
カムラックが障がい者の就労を支援する存在なのに対して、スーパーカムラックは障がい者雇用でつまずいている企業をお手伝いする会社です。法定雇用率の引き上げにより、残念ながら、どのように障がい者とパートナーシップを組んだらよいか迷う企業は増えるはずです。
スーパーカムラックは、こうした企業へ障がい者雇用の体制づくり支援や、継続した雇用整備サポートを行っていきます。

さらに、スーパーカムラック自体を、健常者と障がい者が垣根なく働ける企業にしたいと考えています。カムラックで着実にスキルを身につけたメンバーが、スーパーカムラックの社員になる。そして、この私の思いに賛同してくれ、確固たるスキルを持った人誰でもが一緒に歩める企業にしていきたいと思っています。
障がい者・高齢者・健常者など、枠組みは全く関係ありません。スーパーカムラックは、それぞれが戦力となりうる能力を持って集い、輝く場としようと考えています。
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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部