【後編】東急パワーサプライ村井健二氏に聞く「電気を通して作る生活モデルと電力業界が求める人材像」

【連載4回目】電力業界への「異業種企業の新規参入」の代表格である株式会社東急パワーサプライ。鉄道や百貨店、不動産、ホテルなどで知られる東急グループの電力業界参入には、どのような背景があったのか。〝沿線密着〟〝地域特化〟型ビジネスモデルについて、代表取締役社長の村井健二氏にお話を伺いました。(インタビュアー:一般社団法人エネルギー情報センター理事・江田健二氏)

本連載は書籍『3時間でわかるこれからの電力業界―マーケティング編―5つのトレンドワードで見る電力ビジネスの未来』(2016年11月発行)より、電力ビジネスの今後を占うインタビュー記事を再構成して掲載します。(インタビュー日:2016/6/21)

地元の店舗とも連携。地域全体でエコ生活の流れをつくる

ところで東急線の沿線住民世帯数は250万世帯だそうですが、貴社はその中の55万世帯くらいを中長期的な契約世帯数の目標とされているそうですね

現在、契約世帯数の密度が一番高いのは横浜市青葉区です。ここで約1割の住民の方々がすでに私どものお客さまになってくださいました。
駅で言うとたまプラーザ、あざみ野、青葉台……昔から東急線が走っている住宅街、人口的にも厚みのある地域です。
そこの方々にわずか3ヵ月で約1割入っていただきましたので、私どもはやはり先ほどお話ししたような考え方をどんどん提案していくとよいのではと思っております。

ちなみに、東急線沿線エリア以外でも電力販売のサービスを展開していて、すでに静岡県や埼玉県の方々も数多く契約されています。
実は首都圏でいくつかのケーブルテレビ事業者と提携しておりまして、そちらにはこの東急線沿線モデルを移植する形で展開していただきたいと思っています。
私どもの取り組みを1つのモデルとして、地域の商店街と一緒にやっていくとか、地域全体でエコ生活を進める流れをつくっていくときの材料に使っていただければ、と考えています。

電気を使えば使うほど安くなるような設定で売っていくやり方がある一方で、使わないことでお得になりますという逆説的な販売促進が貴社には見られますよね。これはやはり節電を意識されてのことでしょうか。

そうですね。電力業界の一プレイヤーとして節電を訴える役割は担っていると自覚しております。
ただし、そこで重要になってくるのが節電方法の提案の仕方です。

例えば、夏の冷房温度は28度にしてくださいと頭ごなしに要請することが本当に正しい方法なのかどうか、よく考えてみる必要があると思います。
28度というのはお年寄りやお子さんなど人によっては厳しい温度設定でしょうし、それで熱中症を起こされては大変です。
そこで、家の中が暑いのであれば日中は外に出て涼んでもらったほうがよいという話になります。
電力産業としても、電力需要を減らしたい時間帯というものがあります。ですから、その辺りは訴求の仕方を工夫する必要があります。

こうした考え方は通勤についても言えることです。私どもでは朝7時までに東急線各駅の自動改札機から入場するとTOKYU POINTが10ポイント貯まるというプランをご用意していますが、こうした提案は通勤ラッシュの混雑緩和だけでなく、朝食時の電力使用ピークを前倒しにするという効果もあります。
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東急型ビジネスモデルは、地方都市や他の鉄道事業者では活かせないのか?

今、全国各地で地域に根差した新しい電力ビジネスが起こっています。東急さんとはバックグラウンドも規模もやり方も違うと思いますが、貴社の取り組みや仕組みが地方にとってもヒントになるのではないでしょうか。

そうなると嬉しいですね。地方創生の取り組みの中で〝地産地消〟が重要なキーワードになっています。
電力ビジネスに関しても、地方自治体の出資を受けた新たな電力会社が、ソーラーパネルを設置したりバイオマス発電所を建設したりし、そこで作られた電気を地元の電力会社が購入して、その地域に供給していくという仕組みが広がりつつあります。

私どもの場合は都市部ですので、この地産地消の仕組みを取り入れるのが難しいのですが、その代わりと言ったら何ですが、私どもは電気というサービスを通じてその地域を巻き込むということをやっているわけです。

地産地消型の電力ビジネスは消費を促し雇用の創出につなげるという狙いもありますが、私どもの場合は東急グループの施設に出かけて食事や買い物をしていただくなど、ライフスタイル提案型ビジネスで消費を促しているのです。
これが都市部でできる地産地消なのでは、と考えています。
弊社のこうしたビジネスモデルが地方で電力事業に携わっている方々の参考になるのであれば、例えば地方では皆さん電車はあまり使わないかもしれませんが、公民館あるいはスーパーマーケットでコンサートを開催することなどで同じような展開が見込めるかもしれません。

これまでにも地域コミュニティの中でイベントを催した事例などの蓄積はあるでしょうから、それを電力ビジネスと結びつけることはできるのではないでしょうか。

村井氏インタビュー完全版も「電力×異業種参入」の可能性解説もまとめて読むならコチラ

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『3時間でわかるこれからの電力業界 ―マーケティング編―5つのトレンドワードで見る電力ビジネスの未来』
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お話をお伺いして、やはり鉄道が基盤にあるということが貴社の特徴であり強みなのだと再認識しました。

東急グループは鉄道だけではない事業の多角化が高度に進んでおりますし、〝東急マン〟としても鉄道会社というよりは「都市生活会社」とみずから定義している部分がございますので、他社との違いはその辺りかもしれません。
また、東急線沿〝線〟とは申しますが、沿線全体が〝面〟になっている感じがあって、地域住民の方々全体へのサービスに目を向けているのが東急グループの強みです。
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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部