【前編】村上憲郎氏に聞く「IoTが切り拓く電力ビジネスの未来と『エネルギー情報業』という新分野ビジネスの可能性」

【連載1回目】電力業界へのデジタル技術の活用というトレンドで強い存在感を見せるエナリス。元グーグル米国本社副社長としても活躍した村上憲郎代表取締役に、電力×IoTの未来について聞きました。(インタビュアー:一般社団法人エネルギー情報センター理事・江田健二氏)

本連載は書籍『3時間でわかるこれからの電力業界―マーケティング編―5つのトレンドワードで見る電力ビジネスの未来』(2016年11月発行)より、電力ビジネスの今後を占うインタビュー記事を再構成して掲載します。(インタビュー:2016/6/7)
(2017年3月24日追記・同日村上氏はエナリス代表取締役を退任されました)

グーグルCEOから与えられた重大なミッション

村上さんはもともと、グーグルというグローバルなIT企業にいらっしゃいましたが、今は電力業界でお仕事をされています。この業界、エナリスに移られた経緯を聞かせていただけますか。

もともとエナリスという会社は新電力会社をサポートするという形で、2004年12月に創業されました。私は2012年に社外取締役に、2014年に社長に就任(2016年10月に会長就任)したのですが、米国グーグルの副社長と日本法人の社長を退任してからエナリスに辿り着いたのには、いくつかのきっかけがありました。

まず、グーグルCEO(当時)のエリック・シュミットから「アメリカのように、スマートグリッドを日本でも広めて欲しい」と言われていたということ。

それから、東日本大震災も1つの大きなきっかけでした。3・11の際に私たちは計画停電を経験しましたが、そのとき痛感したのは「日本にはスマートコミュニティができていない」ということでした。

さらに経済産業省(資源エネルギー庁)から強制節電以外の電力マネジメントについて相談を受け、日本で「デマンドレスポンス」や「ネガワット発電」に取り組んでいる会社はないのか? と探す中でエナリスに出会ったのです。
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「エネルギー情報業」という新ビジネス

今回の電力自由化、電力システム改革を受けて、貴社の業務や経営方針に何か変化はありましたか。

私どもでは需要家みずからが新電力会社となって自社の施設等へ電力供給する小売電気事業者や、地産地消エネルギー供給のお手伝いをしています。
今回の自由化後も、小売電気事業者が電力市場に参入されたときの様々なオペレーションの代行をさせていただいている、という業態に変わりはありません。

これに加え、現在エナリスが包括的に営んでいるのは「エネルギー情報業」です。
「エネルギー情報業」とは、電力が流通するプロセスにおいて偏在するエネルギー情報を管理、提供することで、これまでエネルギーを自由に取引できなかった電力の需要家が最適な電源や電力会社の選択を可能にする事業です。
また、効率的なエネルギー利用を促進する各種サービスも提供しています。

エナリスの事業は2つに大別されます。
先ほどお話しした小売電気事業者向け業務代行と需要家向けエネルギーマネジメントサービスからなる「エネルギーマネジメント事業」および、電源開発、電力卸取引を主たるサービスとする「パワーマーケティング事業」で構成されています。
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経産省からも期待されるエナリスの取り組み

事業内容、とりわけ「エネルギーマネジメント事業」について詳細をお聞かせください。

電気はそのままの状態ではためておくことが困難であるとされてきました。
そのため、使われるときに作ってすぐに送る。安定した利用を実現するためには、使う電気と作る電気が常に同じ量である必要があります。
これを「同時同量」と言いますが、電力業者のシステム特有のチャレンジとしてこの同時同量を実現することが大きな課題です。
簡単に言うと、需給バランスをしっかり取っていくということですね。

そのためには発電量の予測、需要家の消費電力量の予測を上手くマッチングさせていく必要があります。
発電量と消費電力量との不均衡が生じれば、他の電力会社と電気の売買をしてそれを埋め合わせなければなりません。
私たちはその際に生じる電力小売業の方々のオペレーションのサポートや需給バランスなどの面でのお手伝いをさせていただく。これがもともとのエナリスの仕事ですから、そういう意味合いにおいて今回の電力システム改革、電力自由化は大歓迎ですね。

ただ、エナリスがこの電力システム改革という形の中で期待されているのは、やはりデマンドレスポンスなど、どちらかと言えば旧一般電気事業者向けのサービスです。
3・11の後、東京電力や関西電力をお手伝いするような形で少しデマンドレスポンスの経験を積んできているわけですが、そのプロセスもありがたいことに一応経産省からのご指導、ご支援を受けながらやってきておりますので、電力システム改革の中で新しい仕組みを率先して提案する役目を期待されているものと自負しております。
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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部