働く障がい者の方に伝えたい「積極的障がい者雇用のススメ・働きたい想いをカタチに」(連載5回)

【連載5回目】「障がい者が企業の戦力的なパートナーになる」というと、驚く方がまだまだ少なくありません。本連載では、福岡で障がい者メンバーとチームを組んでITを活用した仕事を続ける就労継続支援A型事業所「カムラック」を運営する賀村さんの書籍『日本一元気な現場から学ぶ 積極的障がい者雇用のススメ』から、障がい者とのパートナーシップの実践をお伝えします。

本連載は書籍『日本一元気な現場から学ぶ 積極的障がい者雇用のススメ』(著:賀村研/2016年9月発行)の一部を抜粋・再編集し収録しています。

自分がどんな働き方をしたいかを考えよう

障がい者には、どんな生き方があるのでしょうか。今回は、障がい者就労支援施設A型事業所・カムラックで障がい者と触れる中で見えてきた、障がい者のキャリアについてお話をしたいと思います。

たとえば障害年金が10万円、生活保護ももらい、事業所での作業により5万円程度が入ってくるとすると、月々にトータルで20万円ほどもらえることになります。生活が安定しているので、それでよい、という考え方もあるでしょう。

しかし、生活の安定と「働きたい」という意欲は必ずしもリンクするものではありません。
一定の収入を得られる状況であっても、働きたいという思いがある方は、働き方を追求するべきだと私は思います。社会の役に立ち、活き活きと働くことで、どんどん変わっていく障がい者の方を目の当たりにしてきたからです。

私は、障がい者は「情報弱者」だということを常々感じています。自分に有益な情報を得られていないから、生き方が見えず、人生に絶望してしまっている人も少なくない。また、自宅にいる時間が長いことから、インターネットの情報に浸かり、頭でっかちになってしまっているケースも見てきました。

まずは、自分で行動し、動き出してみましょう。
実際に誰かに話を聞いたり、事業所などを見学しに行ったりすることで、道が拓けることが多いのです。同じ障がい者の方の生き方に触れてみるのもよいでしょう。

どんなことをして働きたいか、1日何時間くらい働きたいか(働けそうか)、2年後・5年後・10年後はどうなっていたいか、そういったことを洗い出していくと自分がどう生きていきたいか見えてきます。すると、自分に合った働き方や企業・事業所が見えてくるのです。

カムラックでは、最初の面接で「将来どうなっていたいか?」を尋ねます。そして、その目標に合わせて、働く人自身が成長するためのプログラムを組んでいきます。企業や事業所の立場から考えても、障がい者自身に働き方のビジョンがあることは、仕事を進めやすく大変ありがたいことなのです。
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ゆくゆくは企業で働きたい人にはどんな準備が必要か

社会に働きに出るときに重要なのは、「自分中心」という考え方を手放すことです。

カムラックでも、入社の最初の研修でこうした考え方の転換を徹底します。特に重視するのは、「お客様視点に立つ」ということ。自分中心で、「これは嫌だ」「あれも嫌だ」といっていては、仕事はまわってきませんし、成長もできません。

厳しいようですが、「守られている自分」から脱却して、社会の一員として役割を担う覚悟が必要なのです。

そのため、技術よりもまずはマインド面での研修を積み重ねることが重要です。たとえば「自分が休んだならば、誰かにしわ寄せがいく」という意識を持つ。「仕事が滞れば、お客様の信頼がなくなる」、そうした社会人として当たり前の心構えを持つことが求められます。

このような心構えを知るには、新入社員向けの働き方ノウハウ書などを読むとよいかもしれません。

仕事への向き合い方が徹底されれば、健康にも留意するでしょうし、自身の症状を悪化させないように通院や投薬をきちんとマネジメントできるようになるはずです。
たまに、投薬を忘れてしまい、体調を崩してしまう障がい者の方がいます。仕事上のスキルを伸ばすのは、薬で症状をおさえているということが大前提です。障がい者就労支援施設は医療機関ではないので、薬を飲ませることはできません。そこは、障がい者の方が大人として自立して、自分の体を管理していく必要があるのです。

なお、生活習慣も仕事に合わせて見直していくことが重要だと思います。夜更かしをして、仕事中に意識がもうろうとするといったことがないように、早く眠るようにする。バランスの良い食生活にして、健康を崩さないように配慮するなど、生活リズムを整えていくことも働く上では重要です。

カムラックで働き始めて、意識的に運動をするようになり、すっきり痩せた方もいました。
真剣に働いていきたいという意欲を持っているのならば、睡眠・食事・運動などの生活習慣を見直してみるとよいのではないでしょうか。

できること・できないことを補える関係を

ただし、覚悟を持つことは必要ですが、すべてを健常者と同等に行おうとする必要はありません。
たとえば、カムラックでも、口頭のコミュニケーションは苦手なため、チャットツールで対話しているメンバーがいます。過程は違っても、仕事やお客様に対する誠意があれば、結果は同じ。喜んでもらえる成果が出せるはずです。

誠意をもって仕事をしていくと、「苦手なこと」「できないこと」が自分のなかで見えてくるようになります。それが蓄積されていけば、仕事相手に現状を明確に伝えていくことができる。これにより、できないことを補い合える関係性を築くことができるのです。

自分中心ではいけませんが、無理をしすぎて症状を悪化させるのはもっといけません。ちょっと背伸びをしながら、成長していけるような塩梅を見つけていくことが大切です。

(次回に続く)

日本一元気な現場から学ぶ 積極的障がい者雇用のススメ

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福岡博多に就労継続移行支援A型事業所を立ち上げ、ITスキルを学んだ障がい者メンバーが活躍する仕事を創造することで企業・障がい者の新しい未来創りに挑戦する著者が語る「働く人・雇う人・支援する人が知っておきたい本当のパートナーシップ」とは?

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