障がい者施設で働く全ての職員に、正しい知識とスキルを。その支援は「虐待」かもしれない(連載1回目)

(連載1回目)障がいのある方がより自分らしく、豊かな人生を描ける社会を目指し、「障がいのある方にまつわる情報プラットフォームの提供」を展開する、株式会社Lean on Me。障がい者支援に必要な知識を学べるeラーニングサービスなど、現場の課題を解決するための取り組みを進められています。本記事では、代表の志村さんに、事業への思いや今後の展望についてインタビューした内容をまとめています。

「障がい者にやさしい街づくり」ー株式会社Lean on Meの取り組み

株式会社Lean on Me さんでは、障がいのある方がより自分らしく、豊かな人生を描ける社会を目指し、「障がいのある方にまつわる情報プラットフォームの提供」を展開しています。

企業理念は「障がい者にやさしい街づくり」。
障がい者とご家族、その支援者、障がい者を取り巻く社会の3つの視点に立ち、障がい者支援の現場で起きている課題解決につながる取り組みを進めています。

その1つが、「Special Learning」というeラーニングシステム

「Special Learning」とは、障がい者支援に携わる職員に向けて開発されたオンライン研修サービスです。障がいに関する正しい知識や、適切な支援方法を学ぶことができます。
eラーニングであることから、職員や施設管理者が、自分に必要な情報を自分のペースで学習を進められます。

オンライン研修サービス「Special Learning」とは

「Special Learning」とは、主に障がい者施設の職員の研修を目的とした、オンライン研修サービスです。
障がいに関する正しい知識や、適切な支援方法を動画で学ぶことができます。

一般的なeラーニングが約60分〜90分なのに対し、Special Learningは3分程度の短い動画を500以上揃えています。
職員の皆さんや管理職の皆さんが、日常の業務や支援現場で躓いたときやふとしたスキマ時間に、自分にとって必要なタイトルを選んで視聴するだけで課題を乗り越えていけるサポートツールです。

障がいのある方への挨拶について(サンプル)

事業を始めた経緯

大学ではテニスプレーヤーとして活躍していた志村さん。就職を考え始めた頃、同級生の多くは教員を目指しているなかで、志村さんは経営者になる道を考えるようになりました。
その背景には、自身の家庭環境を振り返り、「経済的に余裕のある大人になりたい」という思いがあったそうです。

「私は母親と3歳年下の弟の3人家族で育ちました。母子家庭であり、弟にダウン症の障がいがあったことから、もし自分に何かがあったとしても家族を助けられる人でありたいと思うようになりました。そのためには経済的に余裕を持つ必要があると考え、経営者を目指すことに。
また障がいがある方の支援をする事業をしていくことが、自分の使命ではないかとも考えていました。(志村さん)」

志村さんは大学卒業後、大手飲食店チェーンを運営する企業に就職し、店舗経営について学びます。
その後2014年に「株式会社Lean on Me」を設立。現在に至ります。

以下、事業への思いや今後の展望について、志村さんにインタビューした内容をお伝えします。

職員の研修が行き届かない現状。気付かないうちに、障がい者を虐待してしまうことも

ー「Special Learning」を事業として始められたのは、どのようなことがきっかけだったのでしょうか。

私は事業を始める前に、障がい者施設でアルバイトをしていました。その時の体験が、この「Special Learning」というオンライン研修サービスの基となっています。

施設で働き始めてすぐ、「現場で仕事を覚えて」と言われました。障がいのことや、どんな支援が適切なのかなど、事前に教えられることはありませんでした。
「わからないことは先輩職員に聞いて」とも言われましたが、みなさん忙しそうで声をかけづらい……。

私の場合は障がいを持つ弟がいましたが、わかるのは弟との接し方だけです。他の障がい者にとって、どのような対応が適切なのかはわかりませんでした。

何もわからないまま施設で働くのは良くないと思い、障がい福祉に特化した研修サービスの仕組みはないかと探しました。
しかし当時はそのようなサービスは見つけられず、「ないなら自分でつくろう」と考えたのがきっかけです。

障がい者の人口が年々増えているなかで、障がい者支援に関する研修サービスはこれから求められていくだろうと感じていました。
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ー一般的な企業の場合、研修など教育の仕組みが用意されていることが多いように思います。障がい者施設において職員の教育体制が整っていないのは、なぜなのでしょうか。

まず第一に、職員全体で研修を行うことが物理的に難しいという事情があります。
24時間365日、切れ目なく入所者さんをサポートしなくてはならないという状況において、職員全員が集まって研修を受けるということはできません。

また、職員の入れ替わりが激しい業界でもあります。新しい人が入るたびに研修を行うということも、現実的ではありません。

資格や研修にかかわらず、誰でも職員になれるという実情も関係しているかもしれません。
日本の国家資格には、介護福祉士や社会福祉士、サービス管理責任者などがあります。これらの資格を持っているのは、一部の常勤職員だけです。非常勤職員であれば、資格がなくても就くことができます。

一部しかいない資格所有者が、現場で働く全ての職員を指導することは難しいでしょう。
しかし障がい者施設の職員とは、命を預かる仕事です。全ての職員が、正しい知識とスキルを身に付けることはとても重要だと考えています。
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ー障がい者施設において教育体制が整っていないことによって、どのような問題が起きているのでしょうか。

例えば、重度の知的障がいのある方は、言葉でコミュニケーションをとることが難しい場合があります。言葉で伝えられない方に意思表示をしてもらうには、専門的なスキルが必要です。
それを知らない職員が接すると、体を揺さぶってしまったり、返事がないことを注意をしてしまったりすることがあります。
職員にそのつもりがなくても、知識不足によって虐待にあたる行為をしてしまうことがあるのです。

虐待の一歩手前の、不適切な支援も多く見られますね。
私の弟は27歳ですが、ダウン症の障がいにより、顔や体つきが子どもっぽく見られることがあります。そのため、子どもと接するかのように話しかけてしまう職員がいます。実際には弟のほうが年上なので、一般的には敬語を使って話す場面です。
障がい者と接する際には、当たり前のことですら忘れて対応してしまうケースがあるのが現状です。

(連載第2回へつづく)
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