【大前研一「企業の稼ぐ力を高める論点」】中間管理職の是非。企業に必要な人材は変化する

【連載第2回】今、日本企業の「稼ぐ力」が大幅に低下しています。長時間労働の常態化により生産性が低く、独自の施策によって効率化を進めることが重要課題となっています。経営トップは常にアンテナを高くして、自社や業界がどれだけの危機にさらされているのかを正確に知覚し、正しい経営判断につなげていく必要があります。本連載では、企業の「稼ぐ力」を高めるための8つのヒントをお伝えします。

本連載は、書籍『大前研一ビジネスジャーナル No.14(企業の「稼ぐ力」をいかに高めるか~生産性を高める8の論点/変化する消費行動を追え~)』(2017年9月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。

中間管理職は必要か?

ICT時代の組織ピラミッドの変化

部長や課長、すなわちミドルマネージメントですが、そもそも今の時代にミドルマネージメントが必要だろうかというのが次の論点です(図-10)。

中間管理職の主な職務は、上意下達で指示を出したり、逆に平社員の意見や顧客の声を上に伝えることですが、それは従来のピラミッド組織の中での単なるメッセンジャーの役割にすぎません。こうした組織のあり方をICT時代においては抜本的に見直す必要があります。
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鴻海精密工業(ホンハイ)に買収されてからのシャープを例にとって見てみましょう。
ホンハイグループの副総裁である戴正呉(タイセイゴ)氏がシャープの社長に就任しましたが、この人はシャープ社員全員に直接メールします。
氏は20年間ホンハイにいて、しかも日本語がペラペラです。こうなればもうミドルマネージメントは不要になります。
むしろ中間管理職がいると「戴正呉副総裁と郭台銘(テリー・ゴウ)総裁の本当の考えはこれだ」などと自分で勝手に解釈して下のほうの混乱を生んだり、下も上に届くと思って「これを伝えてください」となります。実に無駄です。

1つの社内にダメ常務が2人いたとして、いつも役員室でお昼ご飯を一緒に食べているくせにお互いに文句は言わず、部下を介してやり合うという現象があります。
「おい、隣の常務んところひでえことやってるからお前言ってこい」という命令が上から下に下りて、それが隣の下のほうからまた上に上がっていき、そちらの常務が「あの野郎、そんなこと言ってたか、こう言ってやれ」とまた戻ってくるのです。これをU字管現象と言います。
そのうち「こんなこと、うちの上に言えないよね」と途中で止まってしまうようになりますが、これはJ字管現象です。これが古くなった企業の特徴です。

役員どうし毎日顔を合わせていてなぜ直にやらないのでしょうか。「会社の中の仕事の大半は、社員どうしの連絡」とは言え、こんな非効率極まりない間接業務をミドルマネージメントが担当しているとしたら真っ先に廃止すべきで、メール一通で終わることです。
クリエイティブなミドルマネージメント、つまり名札のあるミドルマネージメントは重要ですが、このようなミドルマネージメントは本当に必要なのか考え直しましょう。

大前研一ビジネスジャーナル No.14(企業の「稼ぐ力」をいかに高めるか~生産性を高める8の論点/変化する消費行動を追え~)

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「大前研一ビジネスジャーナル」シリーズでは、大前研一が主宰する企業経営層のみを対象とした経営勉強会「向研会」の講義内容を読みやすい書籍版として再編集しお届けしています。
日本と世界のビジネスを一歩深く知り、考えるためのビジネスジャーナルです。
■生産性を高める経営 ~「稼ぐ力」を高めるための8の論点~
■変化する消費行動を追え ~消費者をどう見つけ、捉えるか~

どのような「人材/機械のポートフォリオ」を構成するべきか

企業の視点から見た「人材/機械のポートフォリオ」の考え方

正規雇用・非正規雇用を問わず、社内でやる業務、社外に出す業務、自動化させる業務、と業務を仕分けしていくと、おそらく効率は10倍くらいになり、人員も10分の1くらいまで削減され、クリエイティブな人間、つまり名札のつく人だけを社内に残すという具合に整理されていきます。

今は世界中の会社がこういう方向に進んでいます。人材について、すべて自前で揃えるのではなく、クラウドソーシングやビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)、AIやロボットなどを含めてどのような分散構成にしていくのか、すなわち「人材/機械のポートフォリオ」を考える必要があります(図-11)。

間接業務というのはここまで1回ほぐして、霜降り肉の赤身だけを集めてそれで会社を経営するようにつくり直さなければいけません。
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クラウドソーシングによる人材採用の変化

人材採用も、今までは正規社員を新卒採用して、あえて下積みの仕事をさせながらだんだん昇進させていくというやり方でしたが、これからはアウトソーシング、クラウドソーシングの活用によって正規社員を絞り込むことが可能になっています(図-12)。
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クラウドソーシングサイトのクラウドワークスには100万人くらい、Upworkにも日本語のできる人が世界中で1,000万人くらい登録しています。
こうしたものを使って仕事を切り出していくと、正規社員というのはとことんコアの仕事、クリエイティブな仕事、守秘義務があって外部に出せないような仕事をやる存在へと、人材の質が変わってくるだろうと思います。

(次回に続く)
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