本連載は、書籍『大前研一ビジネスジャーナル No.14(企業の「稼ぐ力」をいかに高めるか~生産性を高める8の論点/変化する消費行動を追え~)』(2017年9月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。
今回の記事では、企業の稼ぐ力を高める8の論点から『論点4.同一労働同一賃金を推進するべきか?』をご紹介します。
「同一労働同一賃金」は目指すべきではない
同一労働同一賃金を推進すべきかどうかという論点については、東京とアジアの他都市との投資コストを比較してみれば一目瞭然でしょう(図-18左)。同じ仕事をするのに深圳の労働者は東京の労働者の5分の1以下のコストで済むのです。ダッカに至っては23分の1以下です。
もしも政府が同一労働同一賃金を強いるようになったら、企業は表向きはそれに従い、生産拠点を海外に移すだけでしょう。同一労働でより低賃金のほうを求めて、中国へ、ベトナムへ、バングラデシュへと移っていくのは企業の務めです。
もしも政府が同一労働同一賃金を強いるようになったら、企業は表向きはそれに従い、生産拠点を海外に移すだけでしょう。同一労働でより低賃金のほうを求めて、中国へ、ベトナムへ、バングラデシュへと移っていくのは企業の務めです。
したがって国が旗振り役となってこのようなことを言うのは明らかに間違っているのですが、期せずして米国ではトランプ大統領も同じくらい間違ったことを言っています。
彼は「アメリカ・ファースト」「雇用を取り戻す」と言っていますが、米国の失業率は5%もなく、これは自然失業率を勘案するとけっして高いとは言えない数字です。そもそも雇用の海外流出などしていないのに、彼は米国企業が生産の海外シフトを進めたために失業者が増えたと思い込み、誤ったことを言っているのです。
企業が彼の言うことを聞くわけがなく、グローバル最適化の流れは止めようもありません。安倍内閣が同一労働同一賃金を喧伝するのはこれと同程度に馬鹿げています。
彼は「アメリカ・ファースト」「雇用を取り戻す」と言っていますが、米国の失業率は5%もなく、これは自然失業率を勘案するとけっして高いとは言えない数字です。そもそも雇用の海外流出などしていないのに、彼は米国企業が生産の海外シフトを進めたために失業者が増えたと思い込み、誤ったことを言っているのです。
企業が彼の言うことを聞くわけがなく、グローバル最適化の流れは止めようもありません。安倍内閣が同一労働同一賃金を喧伝するのはこれと同程度に馬鹿げています。
安すぎる日本のCEO報酬
海外との賃金比較という話なら、日本の問題はむしろCEOの報酬が安すぎるという点にあります。
日米英の売上高1兆円以上の企業のCEOの報酬を比較してみると、日本は米国の約10分の1、英国の5分の1です(図-18右)。
米英の場合は株式報酬などの長期インセンティブが非常に巨額になっており、トップの座に長年在職していることがうまみにつながっています。日本の場合ここが少ないのですが、「でももう40年勤めているし、滅私奉公の私ですから」と言ってつつがなく勤め上げてしまうようなトップは問題です。
むしろこの部分をたっぷりともらうようにしたほうがリズムがついてよいのではないでしょうか。
日産自動車のカルロス・ゴーン会長の2016年度の報酬が3年連続で10億円を超え、10億9,800万円であったということが株主総会で開示され、高額だとバッシングを受けましたが、彼の業績であればどこの会社からも引く手あまたでしょうし、ゼネラル・モーターズ(GM)からもスカウトされていますから、早めに移籍したほうがよいでしょう。
ルノーが25年以上も前から排ガス試験で不正を働いていたという問題が浮上しているので、時期としては最適かもしれません。ともあれ、この程度の報酬で文句を言う人は、日本を離れればいなくなります。
ゴーン氏みずからも述べていますが、10億9,800万円は米ドルに換算すると約998万ドル、日産に匹敵するグローバル自動車メーカーのCEOの平均年収は1,770万ドルです。競争力のある報酬で優秀な人材をつなぎ留める必要があることも述べて株主に理解を求めていますが、社内外から批判の声が絶えません。
日米英の売上高1兆円以上の企業のCEOの報酬を比較してみると、日本は米国の約10分の1、英国の5分の1です(図-18右)。
米英の場合は株式報酬などの長期インセンティブが非常に巨額になっており、トップの座に長年在職していることがうまみにつながっています。日本の場合ここが少ないのですが、「でももう40年勤めているし、滅私奉公の私ですから」と言ってつつがなく勤め上げてしまうようなトップは問題です。
むしろこの部分をたっぷりともらうようにしたほうがリズムがついてよいのではないでしょうか。
日産自動車のカルロス・ゴーン会長の2016年度の報酬が3年連続で10億円を超え、10億9,800万円であったということが株主総会で開示され、高額だとバッシングを受けましたが、彼の業績であればどこの会社からも引く手あまたでしょうし、ゼネラル・モーターズ(GM)からもスカウトされていますから、早めに移籍したほうがよいでしょう。
ルノーが25年以上も前から排ガス試験で不正を働いていたという問題が浮上しているので、時期としては最適かもしれません。ともあれ、この程度の報酬で文句を言う人は、日本を離れればいなくなります。
ゴーン氏みずからも述べていますが、10億9,800万円は米ドルに換算すると約998万ドル、日産に匹敵するグローバル自動車メーカーのCEOの平均年収は1,770万ドルです。競争力のある報酬で優秀な人材をつなぎ留める必要があることも述べて株主に理解を求めていますが、社内外から批判の声が絶えません。
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大前研一ビジネスジャーナル No.14(企業の「稼ぐ力」をいかに高めるか~生産性を高める8の論点/変化する消費行動を追え~)
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「大前研一ビジネスジャーナル」シリーズでは、大前研一が主宰する企業経営層のみを対象とした経営勉強会「向研会」の講義内容を読みやすい書籍版として再編集しお届けしています。
日本と世界のビジネスを一歩深く知り、考えるためのビジネスジャーナルです。
■生産性を高める経営 ~「稼ぐ力」を高めるための8の論点~
■変化する消費行動を追え ~消費者をどう見つけ、捉えるか~
日本と世界のビジネスを一歩深く知り、考えるためのビジネスジャーナルです。
■生産性を高める経営 ~「稼ぐ力」を高めるための8の論点~
■変化する消費行動を追え ~消費者をどう見つけ、捉えるか~
日本人の中に根強く残るジェラシーはかなり大きな問題だと思います。
米国の子会社の米国人社長のほうが日本の本社の社長よりも給料が高いと言って不満を募らせたりします。
せっかく米国人の優秀な人材を雇ったとしても、「この野郎、俺よりもいい給料をもらってクリスマスに休みなんか取ってやがる。わが社は12月が締めなんだよ!」となってしまうのです。12月締めのままグローバル化するのはどう考えても無理な話です。一番の繁忙期に彼らはバケーションを取るのです。自分も休めばよいのです。自分も高額報酬をもらえばよいのです。CEOの給料こそ、グローバル企業と「同一労働同一賃金」にすべきではないでしょうか。
米国の子会社の米国人社長のほうが日本の本社の社長よりも給料が高いと言って不満を募らせたりします。
せっかく米国人の優秀な人材を雇ったとしても、「この野郎、俺よりもいい給料をもらってクリスマスに休みなんか取ってやがる。わが社は12月が締めなんだよ!」となってしまうのです。12月締めのままグローバル化するのはどう考えても無理な話です。一番の繁忙期に彼らはバケーションを取るのです。自分も休めばよいのです。自分も高額報酬をもらえばよいのです。CEOの給料こそ、グローバル企業と「同一労働同一賃金」にすべきではないでしょうか。
(次回に続く)
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