中小企業の自己診断に「法務デューデリジェンスチェックリスト」活用を!

【連載第2回】IPOをめざす企業にとってはもちろん、特にその予定のない中小企業にとっても、自社のリーガルリスクをチェックし対策を講じておくことが必要だ。先ごろ、書籍『法務デューデリジェンスチェックリスト』を出版した弁護士・佐藤義幸氏の連載第2回。今回は、「訴訟」というリーガルリスクのポイントと、リスク回避のための法務デューデリジェンスの必要性について語っていただいた。

多額な費用を要する「訴訟問題」への備えを!

―「法務デューデリジェンス」は、企業がM&A(買収等)やIPO(上場)を行う上で必要不可欠ですが、M&A等を考えていなくても、自社のリーガルリスクを洗い出して対策をとっておくことは必要ですよね。

佐藤:はい、その通りです。企業によってリーガルリスクへの考え方、取り組みや体制はさまざまですが、費用がかかる、時間がかかる、人手不足という理由から、どうしても法務関連業務への取り組みは後回しになってしまう企業が多いようです。

しかし、見ないふりをしていても、リーガルリスクが自然と消えてくれることは期待できませんから、それをそのまま放置しておいてよいはずがありません。早めに自社のリーガルリスクをチェックして、問題が顕在化する前に事前に芽をつんでおく必要があると思います。

― 企業のリーガルリスクの代表的なものとしては、企業間の損害賠償などの訴訟問題があります。もし訴訟問題が起こったら、企業は巨額の損失を被るケースもありますよね。

佐藤:そうでうね、たとえば訴訟大国と言われるアメリカなどでは、企業は常に巨額賠償のリスクを抱えていて、もし損害賠償などの訴訟を起こされたら、日本円で数十億、数百億といった巨額な賠償金を支払わなければならないケースもあります。

また、アメリカの民事訴訟には「ディスカバリー制度」というものがあるのですが、これは何かというと、民事訴訟のとき審理に備えて、当事者双方が相手方に対して、証拠(書類や証言など)の開示・提示を求めることができる手続きです。
このディスカバリーへの対応に巨額な費用がかかる場合があって、1つの訴訟だけで何億円もかかってしまうこともあります。

― なるほど。もし訴訟問題に巻き込まれたら、たとえ裁判に負けて損害賠償金を支払うことがなかったとしても、訴訟への対応の段階で莫大な費用がかかってしまう場合があるということですね?

佐藤:はい。そのため日本でも、いわゆるグローバル企業では、そのあたりのコスト感を理解した上で、リーガルリスクへの対応をしっかりと行っている会社が多いです。

でも、海外に比べて訴訟リスクの低い日本の企業の多くは「別にそこまでは考えなくてもいいのでは?」と思っているのではないでしょうか。
しかし、アメリカのように訴訟で巨額な費用がかかるリスクは低いとしても、訴訟やレピュテーションの低下などのリーガルリスクに対処するための対策を取っておくことは、ビジネスのグローバル化が進む今、国内企業にとっても必要なことでしょうね。

増加する「企業内弁護士」。その背景にあるものは?

― 今、日本企業の法務に対する取り組み、体制づくりはどのようになっているのでしょうか?

佐藤:例えば今、商社などを見ると、国内外の有資格者を数十名そろえて、一種のローファーム(法律事務所)のようなものを作っている会社もあります。
また、中には特に専任の法務担当を置いていない、という上場会社ありますから、そのあたりは本当に企業によってさまざまですね。

一方、日本では、以前は企業内弁護士(企業に雇用されて、企業内で働く弁護士)の数は少なかったのですが、最近では非常に増えています。

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― なぜ企業内弁護士が増えているのでしょうか?

佐藤:やはり「リーガルリスクを回避するための体制を強化しないといけない」と考える企業が増えているのだと思います。
リーガルリスクを減らすために、コンプライアンス(法令遵守)やコーポレートガバナンス(企業統治)を重視している企業は、さらにそこを強化・充実させていこう、という傾向にありますね。

供給サイドである弁護士業界からの視点で見ると、その背景としては、司法制度改革として、司法試験の合格者を大幅に増やしたこともありますが、ワークライフバランスを重視する人が増えたことも大きいと思います。

時間とお金がない中小企業こそ「法務デューデリジェンスチェックリスト」の活用を!

佐藤:特に、海外で事業展開していたり、海外とのの取り引きが多く、訴訟リスクにさらされている会社は、リーガルリスクに対する意識が非常に高いので、他の企業に比べて社内弁護士も法務担当者も充実しています。
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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部