AI(人工知能)は、障害者支援の夢を見るか?

【連載第7回】IoT/AIによる「障害者のソーシャル・インクルージョンの実現」を目的に設立された「スマート・インクルージョン研究会」代表の竹村和浩氏による連載第7回。今回は、AI(人工知能)とIoTによる「社会デザイン」について語っていただきました。

AIとIoTの技術は、今後社会、世界全体に大きなインパクトを与えていくと予想されます。そのため、私たちは予め、必要とされる社会のニーズをデザインしておく必要があります。いかなる技術も、その使い道次第なのです。ところが、あるべき社会の姿というものは、描けそうでそう簡単に描けるものではありません。ただ、視点を障害者の持つニーズに焦点を合わせるとき、大きく、2つの分野にその技術開発分野を絞り込むことが可能になります。一つは「スマート・ハウス」の分野であり、もう一つは「移動支援システム」の分野です。

私が教鞭をとらせていただいている、BBT(ビジネス・ブレークスルー大学)の学長、大前研一氏も述べているように、これからは移動通信ビジネスが大きな市場規模を持ってきます。それと連動して、スマート・ハウスも大きな可能性を秘めています。ただ、既に様々なIoTやAIの技術は存在してはいるものの、それらの技術はまだ「ただ何かができる」というだけで、必ずしも相互に連動してはいません。

しかしながら、障害、とりわけ知的障害のある子の親である私から見れば、そこに必用とされる技術は極めて明確です。それは、「子供の安心・安全の見守りの社会システム」です。スマート・ハウスと移動支援システム、この2つの分野をそれぞれ連動させるシステムを構築すれば、ほぼ社会全体での自動化システムを構築することが可能になります。

個々の商品は、細部にわたりこの2つの枠組みを踏まえ、常に付随連動する形で開発される必要があります。私たちの社会生活は、基本、この「居住」と「移動」の2点に集約することが可能になるのであり、これは障害のある子供の生活を観察することで得られる視点であるといえます。社会デザインの視点は、この「家」と「移動」の2つの分野の連動にあるのです。

3. 具体的ニーズとテクノロジーの視点

では、具体的にどのようにそのニーズを解明すればよいのか?先に述べた「社会デザインの2つの分野」で見てみましょう。まず「移動支援システムの可能性」「移動支援に必要なテクノロジーは何か?」についてですが、ここで重要なキーワードとなってくるのが「高度なセンサー&センター機能」です。 障害および知的障害等のある人の状態を本人が自覚せず、自ら通告できない場合でもその状態を把握するためのセンサー機能とは、次のようなものです。

1.身体状態のセンシング:(ウェアラブル)
発汗・動悸、心拍数、呼吸回数などにより本人の危機的状況を把握する(→自動通知システム)
2.予定ルートを外れた場合の警告・告知
3.予定時間を過ぎた場合の警告・告知
4.本人への音声等による、確認プログラム
5.保護者・支援者との連絡システム
6.位置情報による逐次の位置把握、移動把握、
7.移動支援者との待ち合わせ、2人の接触、コンタクトを自動的に保護者に通知する
8.緊急時の自動応答連絡システム

また「スマート・ハウスの可能性」について言えば、「エネルギー&セキュリティーシステム」が重要になってきます。つまり、「安心・安全・見守りのためのテクノロジー」です。それは具体的には下記のようなものです。

1. 身体・心理状態のセンシング:(組込み型センサー・ウェアラブルとの連動)
2. AIとの連動による、スマート・センシング技術(学習による見守り)*HEMS+α?
3. 本人、障害特性情報の登録と交信・更新 医療・福祉行政連動
4. 地方自治体・医療・緊急対応・支援団体とのネットワーク(コミュニティー)
5. 外出先からの遠隔対応・移動の際の遠隔対応センター機能
6. 生存および緊急告知システム
7. 排泄・移動・食餌等の利便性
8. 緊急時の自動応答連絡システム(コミュニティーセキュリティー機能)*地域連動

このように、障害を持つ人の視点からのニーズは明確であり、この視点からの技術開発はハードルは極めて高いものの、「エクストリーム(極端な)シナリオは、人間工学の限界を試す」がゆえに、十全なシステムの開発にもつながると言えるのです。

(次回へ続く)
20 件

この記事のキーワード

この記事の書き手

グーテンブック編集部 グーテンブック編集部