大前研一「オランダが実践する『選択と集中』の農業」

【連載第4回】今、日本の農業は変わらなければならない。食料安保、食料自給率、農業保護などにおける農業政策の歪みにより日本農業は脆弱化し、世界での競争力を失った。本連載では、IT技術を駆使した「スマートアグリ」で 世界2位の農産物輸出国にまで成長したオランダの農業モデルと日本の農業を照合しながら、日本がオランダ農業から何を学び、どのように変えていくべきかを大前研一氏が解説します。

10倍以上の付加価値をつける加工貿易

オランダの加工貿易の具体例を見てみましょう(図-11、図-12)。

2億ドルかけて、牛乳を安いところから大量に輸入し、同時にドイツとフランスから飼料も輸入し、チーズに加工します。こうしてオランダのゴーダチーズなどができあがり、輸出するわけですが、その輸出額は29億ドル。つまり10倍以上の付加価値がつくということです。

カカオ豆はアフリカなどから輸入し、チョコレートや、バンホーテン のようにココアにして輸出します。これもオランダは強いですね。
さらにアフリカや中南米から、花卉類の種、苗、球根を輸入し、栽培して花卉として輸出します。ところが最近では、③の中継貿易も絡んできており、アフリカなどから直接取引先に届けるケースも出てきています。

また、米国や南米などからタバコ葉を輸入し、加工してタバコ製品として輸出すると、非常に付加価値が高くなります。今は世界中でタバコ工場が余っていますから、そういうところに委託生産して、そこからたとえばJTなどに輸出するケースもあります。
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輸入地域と輸出地域の巧みな使い分け

原材料はEU域外から、完成品はEU内からそれぞれ輸入し、輸出は主にEUへ、というのが特徴的です(図-13)。ブラジルから大豆、タバコの葉、アルゼンチンから大豆、ナッツ、飼料、米国から大豆、タバコの葉、マレーシアからパーム油、天然ゴム、脂肪酸というように、原材料の輸入先はほとんどがEU域外です。
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栽培する野菜も選択と集中

野菜や畜産物も高付加価値路線へシフト

チーズなど高付加価値商品を作り輸出する加工貿易を行っていますが、生産する農産物そのものも高付加価値路線へシフトしています。

穀物自給率に関する箇所でも触れましたが、小麦、トウモロコシなど安い穀物はとにかく輸入する。反対に、付加価値の高い野菜や畜産物は自国で生産し、輸出するのがオランダ流です。

図-14をご覧ください。オランダの施設野菜の栽培面積の8割をトマト、パプリカ、キュウリの3品目が占めています。これらは世界的に見て輸出平均価格が高い品目、つまり輸入の需要が大きい品目です。
畜産物でいえば前述したチーズも輸出平均価格が高いですし、オランダの輸出上位品目でもある牛肉も、輸出平均価格の高い品目です。オランダが、実に賢く高付加価値路線にシフトしたことがよくわかります。
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(次回へ続く)
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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部