チョコ焼きそばに謎肉祭。変味商品にチャレンジするメーカーの思惑【あなたの知らないコンビニ活用術】

【第4回】日本の誰もが数え切れないほど利用するコンビニ。ただの買い物客よりコンビニを自由に活用するための「コンビニ活用術」を、自身もローソンで働いた経験を持つ流通ジャーナリスト渡辺広明氏が解説します。常に進化するコンビニの裏側を知って、あなたも”コンビニファンタジスタ”になろう!

本連載は、書籍『コンビニの傘はなぜ大きくなったのか』(2017年8月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。
※本連載では現在は販売されていない商品について掲載している場合があることをご了承ください。

メーカーが”変味商品”にチャレンジする理由

2017年、明星食品の「一平ちゃん」、まるか食品の「ペヤング」シリーズからそれぞれチョコレート味のカップ焼きそばが発売されたことが話題になりました。ここでは、一見ありえない組み合わせの”変味(へんあじ)”商品にメーカーがあえてチャレンジする理由について紐解いていきます。

2017年頭に注目を集めた”変味(へんあじ)”商品は「一平ちゃん」と「ペヤング」のチョコ味焼きそばです。
特に「一平ちゃん」に到っては2016年末のクリスマス商戦においてショートケーキ味を発売したばかりで2回連続のスイーツ系焼きそばを新商品としたことに「ご乱心?」「暴走!?」といった戸惑いの反応もおきました。
その味の是非については自分で判断していただきたいのですが、都内のコンビニオーナーは東スポの取材にこう答えています。
「一応、話題だと思ったから(ショートケーキ味を)仕入れたけどまったく売れなかった。自分でも食べたけどまずい。1週間置いても動きがないからすぐ在庫処分セールにして半額にした。そこでやっと売れるレベルだったよ…」
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宣伝目的だけじゃない。”変味”商品は新商品より売りやすい

なぜ、メーカーがあえて”変味”商品を出すのか考えてみると、まずは「話題づくり」という答えにたどり着きます。
実際、TwitterやFacebookといったSNSでは、「話題の商品を食べてみた!」という投稿があふれ、テレビCMを打たなくても大きな拡散力を期待できることは明らかです。

しかし、そこにはさらに深い理由があるのです。
”変味”商品のほとんどは既存のブランドを利用していますよね? つまり、新ブランドを立ち上げ、お客に認知させるのはテレビCMが機能しなくなり始めた昨今非常に難しくなりましたが、話題の商品として既存品の”変味”を発売することにより、一時的な売り上げが見込めるのです。

実際、話題の商品を出すことによって既存ブランドの商品も合わせて小売業に仕入れてもらうといった商談が行われています。

話題にならなくなった「季節」「地域」限定商品

この状態はポテトチップスを例にすると理解しやすくなります。ポテトチップスの王道フレーバーといえば、「うす塩」と「のり塩」、「コンソメ」の3つで、これらはどのコンビニに並んでもいます。
王道フレーバーに飽きた人に購入してもらえればと開発されたのが「季節限定」商品。さらに地方に行ったときに思わず手に取りたくなるような「地域限定」商品へと展開が続きました。

ところが、「季節限定」や「地域限定」が増えすぎた結果、当初のように珍しいものではなくなってしまいました。やや話はずれますが、日本初の季節限定ビール「サッポロ 冬物語」が発売されたのが今から約30年前だったということを踏まえれば、「季節限定」が既に真新しいものではないことに納得できるのではないでしょうか?

コンビニの傘はなぜ大きくなったのか ―コンビニファンタジスタ 知れば話したくなる、あなたの知らないコンビニ活用術26―

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既に「季節限定」や「地域限定」が話題にならない、つまり拡散力が弱くなったことで注目されたのが”変味”のような面白商品です。
先ほどのポテトチップスでいえばコイケヤが「みかん」や「もも」を発売したことがありました。さらにコンビニに限って話を進めるなら、王道フレーバーはプライベートブランド(PB)化が進んでいるため、メーカーとしては棚(=売り場)を確保するために話題となる商品を出すという一面もあるのです。

”変味”商品をヒットさせるのは難しい?

ただし、これだけ”変味”商品が増えると「まずい!」という弊害が出てきてしまうのも実情です。お菓子勉強家の松林千宏氏はこう話します。
「”変味”商品は場合によって既存のブランドイメージを毀損してしまいますし、既に一部の消費者には飽きがきていると思います。お菓子業界での成功例は、もともと面白い要素が評価されている『ブラックサンダー』(有楽製菓)や『ガリガリ君』(赤城乳業)といった一部。ロッテが突然、〝変味〞のチョコレートを出すことは考えられません」

これは的を射た指摘だと思います。
カップ焼きそばでいえば、「一平ちゃん」や「ペヤング」は「日清焼そば U・F・O」を追う立場にあるからこそリスクを取って”変味”商品にチャレンジしているのです。

基本的に業界トップはそのようなリスクを冒しませんが、マーケティングに長けた日清食品はさらに上手の戦略を駆使しています。
カップヌードルが2016年に仕掛けた「カップヌードルビッグ”謎肉祭”肉盛りペッパーしょうゆ」は、「謎肉」(=味付豚ミンチ)という自虐的なネーミングの面白さで話題になりつつ、肉が通常の10倍量で既存のカップヌードルファンを喜ばせたという意味で大成功の企画でした。
”変味”商品をまだ味わったことがない人はまず、王道の日清食品から試してみるのがいいかもしれません。
(次回に続く)
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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部