CSRコミュニケーションで優位に立つ、ソーシャルメディア活用術

【連載第5回】広報・PR・マーケティング担当者が押さえておくべき「CSRコミュニケーションの基礎」を解説する連載の5回目。今回は、急速に普及が進むソーシャルメディアの活用術を、実際の活用事例を見ながら学びましょう。

記事のポイント

●企業はSNSの公式アカウントを活用しよう
●公式アカウントを利用するメリット
●公式アカウントを利用するデメリットとその対応策
●資生堂、テレビ東京の事例

*この連載記事は2016年3月発行の書籍『CSRデジタルコミュニケーション入門(著:安藤 光展, 猪又 陽一, 江田 健二)』の内容をもとに再編集しお届けしています。

CSRデジタルコミュニケーション入門

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企業におけるCSR担当者はもちろんの事、広報やIR、経営企画など、コーポレートコミュニケーションに携わる全てのビジネスパーソンに役立つ内容となっています。現代のCSRについて、どなたにも読みやすく、すぐに実践できる内容としてまとめた一冊です。

企業は公式アカウントの活用を

CSRコミュニケーションにFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアを活用する場合、企業はどのようにソーシャルメディアに対応していくべきなのでしょうか。

対応の方法として、まずは公式アカウントの作成が挙げられます。公式アカウントとは、企業が情報を発信するために自社全体で公式に取得するアカウントです。このアカウント用のページをソーシャルメディア上に会社として取得し、情報を発信することができます。また、より先進的な事例として、CSRの担当部署で別にアカウントをもつという形が取られる場合もあります。この場合、CSRの担当部署が柔軟にCSRに関する情報を発信することが可能となります。

Facebook、Twitter、YouTubeなどのソーシャルメディアにおいて、公式アカウントがなければ取得し、すでに取得されているならばそれを活用するのがよいでしょう。【図1】
【図1】公式アカウントの活用について

【図1】公式アカウントの活用について

公式アカウントを利用するメリット

公式アカウントを利用するメリットとしては以下のものが挙げられます。

まず、情報の発信に積極的であるという姿勢が自然と伝わり、好印象につながりやすいことです。また、自社サイトへの流入の増加という数値的効果が見込まれます。FacebookやTwitterなどで公式アカウントのファンが増えることで、自社サイト自体へのユーザーの誘導も見込まれます。

主要なソーシャルメディアの公式アカウントの取得自体は無料ですので、低コストでユーザーに働きかけることが可能となります。また、Facebookはアンケートの実施やイベントの企画・招待のための機能ももっていますので、自社イベントにユーザーを誘導しやすくなります。

そして、CSR担当部署の裁量で、CSRのウェブサイトにアクセスが多い時間帯を狙ってFacebookやTwitterの記事投稿が可能ということも大きなメリットです。これにより効果的に情報拡散できます(予約投稿機能などもあるので、前もって投稿をためておくこともできます)。

公式アカウントを利用する上での懸念と対応策

もちろん一方で懸念点もあります。CSR担当者のみなさんと打ち合わせをさせていただく中で、様々な不安の声をお聞きします。ここではそれぞれの懸念に対してどのように対処することができるかをご紹介します。

運営が大変そう、炎上が怖い!

まず、運営が大変そう、炎上が怖いという声をよく耳にします。この懸念はもっともです。しかし、担当者内でしっかりルールを作って投稿することで手間やリスクを軽減することが可能です。

例えば、担当者が運営に慣れない間は、ユーザーからのコメントに対して、感情的なコメントを返すことで、加熱したディスカッションになるケースなどが考えられます。対応策としてはユーザーからのコメントに対する回答ルールや掲載までの承認フローなどを担当者間で取り決めておくのも1つの方法です。

また、「炎上」が起こらないように広報担当と連携をとり、記事の内容について定期的にチェックすることが大切です。会社の立場からの情報発信であることを忘れず、客観性をもった投稿(活動報告)を心がけましょう。

投稿頻度の決め方がわからない

投稿の頻度についてのご相談も多く受けます。週に1回何曜日と厳密に決めてしまうと、それが1つのストレスになってしまいがちです。投稿頻度に関してはそこまで厳密にならずに、「伝えたいことがあるタイミングで月1、2度でもいいから投稿していこう」という気楽な気持ちで始めていくことが重要です。

他の案としては、情報収集を持ち回りにするというものがあります。情報収集と投稿をすべて1人が担った場合、情報を集めることに苦労してしまい、投稿が難しくなってしまうこともあります。最終的にソーシャルメディアに投稿する担当者が1人だったとしても、情報収集は部署内で持ち回りにするなどすれば、投稿に対する心理的負担はかなり小さくなるはずです。

社内で、コスト対効果を理解してもらうために

次に、コスト対効果が見えにくいのではないかという声や、「自分自身はソーシャルメディアを使っているのでCSRの情報発信に利用してもいいように思うが、社内の他のメンバーをどのように説得したらいいのか」という声も耳にします。これらの懸念に対する対応策としては以下のものが考えられます。

まず、前述のとおり、ソーシャルメディアには公式アカウントを通して自社サイトへユーザーを誘導するという数値的効果が見込まれます。
CSR専用の公式アカウントのページにURLを貼っておき、そのURLから自社サイトへどれだけ人が誘導されたのかを、Google Analyticsなどのアクセス解析ツールを利用することによって簡単に見ることができます。こうして数字として成績が表れることで、投稿が大切だということがわかっていただけるのではないかと思います。

また、少し上級者向けではあるのですが、ソーシャルメディアの機能を使うことでアンケートやイベント集客をすることもできます。こちらでも1つの数字的効果を見込めるのではないかと考えます。
そして、どうしても理解を得られない関係者(上司など)がいらっしゃる場合は、その方に実際にソーシャルメディアを利用していただくことをおすすめします。ソーシャルメディアのライブ性やインタラクティブな楽しさは、使った経験がなければ、具体的なイメージをもっていただくことが非常に難しくなってしまいます。やはり実際に使っていただいて、まずはご自身でいい部分や注意すべき点を理解していただくのが望ましいと考えます。

資生堂、テレビ東京。ソーシャルメディアの活用事例

私が様々な企業の公式アカウントを拝見する中で、いくつか非常に良い形でソーシャルメディアを活用されている企業を見つけることができました。ここではソーシャルメディアの活用事例を簡単にご紹介させていただきます。

まず、資生堂のサイトが大変よく機能していると考えます。資生堂はFacebookの公式アカウントをおもちなのですが、ここではCSR関係の情報以外にも様々な情報が日々流れており、CSRの情報に自然と触れることができます。
次に、テレビ東京グループの活用方法も非常に良いものです。テレビ東京グループではCSRの担当部署がFacebookのページを個別に立ち上げられています。【図2】
少し上級者的な取り組みにはなりますが、CSRに対する積極的な姿勢が自然と伝わったり、CSRについての詳しい情報を発信したりということが可能となりますので、是非こうしたことにもチャレンジされてはどうかと思います。

パナソニックはYouTubeで公式サイトをもたれており、海外で行われたCSR活動を動画でまとめて発信されています。

また、富士フイルムはTwitterの公式アカウントの中で、色々な商品情報に関する投稿の中にCSRの情報を流しており、うまくユーザーの誘導をされていると感じました。

以上の事例は、自社の取り組みに対するファンを増やし、ユーザーを自社のサイトなどに誘導する非常にすばらしい例だと思います。
【図2】テレビ東京グループのCSR活動 Faceboo...

【図2】テレビ東京グループのCSR活動 Facebookページ

「共感できるストーリー」を作れ!

ソーシャルメディアに関しては、まずソーシャルメディアが非常に普及しているということをご認識いただいて、公式アカウントを通して自社のCSRの情報を発信することにチャレンジいただければと思います。 

ウェブサイトが、情報を「きちんと伝える(掲載する)」ことで「信頼を得る」メディアであることに対して、ソーシャルメディアは、ステークホルダーの「共感を得る」メディアとも言えます。
ソーシャルメディアでの情報発信は、「CSR掲載ページの閲覧者数が増加した」といった手応えとはまた違った、ステークホルダーの「生」の反応を手にすることでもあります。時にはお叱りの声をいただくこともあるかもしれませんが、その対応の仕方によっては、かえってファンが増える機会に転じることもできます。

ソーシャルメディアを使って、自社のCSR活動をライブ感ある「共感できるストーリー」として伝え、自社オリジナルのCSRコミュニケーションの形成にぜひ挑戦していただければと思います。

■チェックリスト

最後に、自社の取り組みについて以下をチェックしてみましょう。

1 簡単なアンケート等で、従業員全体におけるソーシャルメディア活用者の割合を把握してみましょう。ソーシャルメディアの公式アカウントを検討するには、まず社内での浸透状況を知ることが大切です。

2 社内にCS(カスタマーサポート)の担当部署があれば、クレーム対応マニュアルを共有してもらいましょう。ソーシャルメディア活用の際に、 非常に役立ちます。
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