大前研一「市場規模62兆円。位置情報ビジネスの可能性」

【連載第2回】スマートフォン、SNSの普及に加え、測位技術の発展、さらにはドローンなどの新技術出現によって「位置情報ビジネス」が飛躍的に進化している。そう、世界は今「位置情報3.0」時代に突入しているのだ。 本連載では位置情報を活用したビジネスを取り囲む様々なテクノロジーの現状を大前研一氏が解説します。

●自動運転、物体の検知など、車に利用される位置情報

測位システムとしてはGPSの精度も上がってきてはいますが、今日本でも盛んに研究されている準天頂衛星システム では、さらに精度が上がります(図-3)。

この準天頂衛星システムが、三菱電機の車の自動運転システムに活かされています。ただ、文字通り空から見ているので、道路状況が分かるとはいっても、枯れ葉が落ちているような時に走行可能かどうかまでは判断できない、といったケースもあるようです。

一方、トヨタ自動車や日産自動車の車には、こうした準天頂衛星システムとは違った方法で、自動運転にアプローチしているものもあります。いずれにしても車の自動運転システムは、位置情報技術の進化によって実現され始めたと言えるでしょう。

また、自動運転まではいかないまでも、人やモノを感知して警報を鳴らすなど位置情報を利用した技術を搭載することは、昨今の車においては主流となりつつあります。
図-3:測位システムの精度とカバーエリア

図-3:測位システムの精度とカバーエリア

●位置情報の高精度化で広告やデータ解析などの価値も変化

よりきめ細かな位置情報の取得が可能になることで、位置情報そのものの価値も変化しつつあります(図-4)。

大きな変化のひとつは、これまで「全国のみなさま」といったブロードキャスティングであったのが、「今ここにいるあなた」というポイントキャスティングに変化したことでしょう。ポイントキャスティングが可能になったことで、たとえばある特定の街を歩いている人だけに対して、「今来店すれば、こんな値段で食べられます」というような、ピンポイント広告・販促通知も行われるようになりました。

また、位置情報データ解析や遠隔操作・遠隔モニタリングも重要性が高まりました。身近なところでは、交通量情報や道路混雑状況の解析および最適化に位置情報を利用することで、交通渋滞の回避も可能にしています。農業、警備・防犯、保守メンテナンスなどの分野は、もはや遠隔操作・遠隔モニタリングなくしては、成り立たなくなりつつあります。

さらに医療分野では、患者の遠隔モニタリングだけでなく、手術においても3Dで立体的にマッピングを行い、腫瘍の位置を正確に測ったうえで専用のメガネをかけて手術するといったことまで実現され始めています。
図-4:位置情報の価値の変化

図-4:位置情報の価値の変化

位置情報ビジネス加速の理由

●日本のGDPの13%を占める日が来る?

近年、位置情報ビジネスが急速に拡大し始めたのは、なぜでしょうか?

まず、位置情報ビジネスそのものがまだスタートしたばかりの新しいビジネスであるために、隙間もチャンスも多く、未知の可能性を秘めていることが理由として挙げられます。

さらに、「こんなことができるよね」「こんなものがあればいいよね」といった具合に、自らがユーザー目線に立ってアイデアを出し合い、個人やチームの業務改善から運用をスタートできるフットワークの軽さも魅力となっているのでしょう。

このまま位置情報ビジネスが加速していけば、2012年時点に約20兆円であった市場規模は一気に膨れ上がり、2020年には約62兆円になるとも予測されています(図-5)。つまり、日本のGDPの12%〜13%をこの位置情報関連産業が占めることになる。そんな展望が開けているからこそ、今、位置情報ビジネスを考えない手はないのです。
図-5:国内の位置情報関連産業の市場規模

図-5:国内の位置情報関連産業の市場規模

(次回に続く)

大前研一ビジネスジャーナル No.10(M&Aの成功条件/位置情報3.0時代のビジネスモデル)

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・「絶対に真似をしてはいけない企業」が教えてくれること
・クロスボーダーM&Aが5%しか成功しない4つの理由
・英語のうまい社長には気をつけろ
・ディーラーズ・ハイは後悔のもと。引き返す勇気を持て


■位置情報3.0時代のビジネスモデル
・市場規模62兆円。 位置情報ビジネスの可能性
・位置情報とビッグデータを組み合わせて考える
・小型無人航空機「ドローン」の底力
・アマゾンの倉庫を縦横無尽に走るロボットKiva
・「白雪姫とは握手しない」までをモニターする
・位置情報のリスク「個人情報」「ロケハラ」「プライバシー」
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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部