大前研一「温室よりもPC操作。オランダ農業がスマートアグリである理由」

【連載第5回】今、日本の農業は変わらなければならない。食料安保、食料自給率、農業保護などにおける農業政策の歪みにより日本農業は脆弱化し、世界での競争力を失った。本連載では、IT技術を駆使した「スマートアグリ」で 世界2位の農産物輸出国にまで成長したオランダの農業モデルと日本の農業を照合しながら、日本がオランダ農業から何を学び、どのように変えていくべきかを大前研一氏が解説します。

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農業=農場経営。オフィスでの経営管理が農家の仕事

業務内容も必要な人材も一般企業と同じ

オランダの生産者、施設園芸農家はどのような仕事を行っているのか。図-19で見ていきましょう。
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ひと言で言ってしまえば、農業というよりも、農園「経営」を行っています。

まず、農園経営主の主な業務内容としては、従業員の指導、労務管理、コスト計算、生産管理、納期管理、販売管理、電力の販売、栽培コンサルタントの活用、資金調達。なかでも電力の販売は非常に重要です。

そしてどのような人材が必要かというと、マーケティング、財務管理、生産管理、IT・システム系の人材であり、一般的な企業の経営と同じです。つまり、日本の年金受給者では難しいということです。

日本で同じことをやるならば、若い人材を活用する、あるいは他の産業から人材を起用するほかないように思います。農協の若手グループを活用するのもよいでしょう。

温室よりパソコンの前にいる時間が長い?

図-19の右側を見てください。パソコンでモニタリングやデータ管理ができますので、温室の中にいるよりも、パソコンの前に座っている時間のほうが長いのではないでしょうか。

何を管理するかというと、気温、湿度、CO2濃度、生育状況など。また、経営管理として出荷状況、コスト、収益指標、売電価格などもモニターしていきます。これは本当に経営者の仕事です。

実は、このオランダの生産者と近い農業を行う地域が日本にもあります。一つは長野県川上村 。レタスの栽培で有名ですが、この地域の農家で年収1億円を切っている人はいません。
それから群馬県嬬恋村 のキャベツ農家もそうです。こうした地域の農場では、バングラデシュなどアジア諸国からの労働者もたくさん働いていて、経営者はパソコンを見ながらさまざまな管理をしています。

農家に関しては後継者不足が問題視されていますが、このような地域で合コンをやりますと、都会から若い女性が殺到します。都会でも年収1億円以上の人はめったにいませんから。長野県の八ヶ岳山麓にある八千穂高原でも、高原野菜を作って年収16億円という人がいます。
ですから、日本でもまだ数カ所ですが、オランダのような農業を行っているところがあるということです。
(次回へ続く)
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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部