夏の恵方巻にお盆玉。季節を演出するコンビニ人工イベント【あなたの知らないコンビニ活用術】

【第3回】日本の誰もが数え切れないほど利用するコンビニ。ただの買い物客よりコンビニを自由に活用するための「コンビニ活用術」を、自身もローソンで働いた経験を持つ流通ジャーナリスト渡辺広明氏が解説します。常に進化するコンビニの裏側を知って、あなたも”コンビニファンタジスタ”になろう!

本連載は、書籍『コンビニの傘はなぜ大きくなったのか』(2017年8月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。

拡大するコンビニの季節商戦

コンビニに入って、「夏なのにおでん!?」と思った経験はありませんか?
ファミリーマートは2017年、一部店舗(全国約4600店)で夏限定の「旨辛おでん」を発売しました。本来は冬に食べる料理をあえて夏に出すというのは、新習慣で新たな消費を掘りこそうと知恵を絞った結果です。
クリスマスやバレンタインといった既存の季節商戦だけでなく、新たな季節商戦が広まりつつある現状を見ていきましょう。

土用の丑の利益率は低い

既存の季節商戦のひとつ、土用丑の日は夏バテを防ぎ、精をつけるためにウナギを食べるという日本の風物詩として知られています。
コンビニ各社では2000年ごろからうな重の予約販売に本格的に力を入れています。以前のうな重は1000〜1500円程度でしたが、近年はパンフレットを見ると2000円以上のうな重ばかりで、庶民にとっては想像以上に高嶺の花です。
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Photo credit: WordRidden via Visual Hunt / CC BY

価格上昇の直接的な要因は国産ウナギの卸値の上昇です。ニホンウナギが2014年に絶滅危惧種に指定され、稚魚の不漁が何年も続いていることをご存知の方も多いでしょう。
国産ウナギにこだわらなければ、「吉野家」や「すき家」といった牛丼チェーンのように1000円以下で提供することもできるのですが、コンビニではあえて予約商品を中心として販売しています。
安さよりも非日常感を演出して販売しようというわけです。そのため、外国産よりもプレミアム感のある国産ウナギにこだわっています。とはいえ、ウナギの卸値の値上がりが激しいため、コンビニの利益率はあまり良くありません。

スーパーのイオンは2017年からパンガシウスというナマズの蒲焼を半身1パック645円と買いやすい値段で販売し始めました。未来の子供たちは土用丑の日に食べる蒲焼がウナギからナマズに変わっていくかもしれません。

季節商品の新たな目玉「恵方巻」

ウナギで利益を上げるのが難しい状況の中、コンビニ各社が第二の夏の風物詩として数年前から積極的に仕掛けているのが「夏の恵方巻」です。

恵方巻は1998年に販売を始めたことから節分(2月)に食べる習慣が広まったと言われていますが、実は節分は年に4回あることから、夏にも恵方巻を売り出そうとしたわけです。
少々強引な戦略だと思われるかもしれませんが、国内の店舗数が約5万8000店まで増加して飽和状態を迎えつつ、今後は人口減によるマーケット縮小が見込まれるとなると、新しいイベントを使って消費増を狙う必要があるのです。
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Photo credit: AMagill via VisualHunt.com / CC BY

いつも通りの売り場やフェアでは日販(1日の売上高)が頭打ちになる中、食が全体の売り上げを左右するコンビニやスーパーが新しいイベントを作って消費者の購買意識を刺激するのは必然とも言えるのです。
実際のところ、2000円超のウナギには手が届かなくても、1000円以下の恵方巻なら「とりあえず食べてみるか」となる人はいるでしょう。

過去を遡れば、チョコレートを贈るバレンタインデーも、そのお返しをするホワイトデーもまた消費を刺激する”人工イベント”です。土用丑の日にウナギを食す風習も江戸時代に考案された”人工イベント”と言えるでしょう。

コンビニの傘はなぜ大きくなったのか ―コンビニファンタジスタ 知れば話したくなる、あなたの知らないコンビニ活用術26―

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脚光を浴び始めた最新商品「夏おせち」

では、今後浸透するかもしれない最新の”人工イベント”を見ていきましょう。

ひとつめは「夏おせち」です。2012年ごろから一部の料亭などが始めたとされていますが、2016年にイオンが取り組み始めたことで脚光を浴びています。
家族が集まる8月のお盆に楽しめるようにという意図で、同社の「ごちそう刺身の宝石箱」や焼き肉用のお肉を集めた「匠和牛ステーキ食べ比べ重」など従来のおせちにとらわれない斬新なラインナップになっています。
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Photo credit: marumeganechan via VisualHunt / CC BY-ND

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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部