2020年東京オリパラの理念に「インクルージョン」という言葉を掲げよう!

【連載第11回】IoT/AIによる「障害者のソーシャル・インクルージョンの実現」を目的に設立された「スマート・インクルージョン研究会」代表の竹村和浩氏による連載第11回。今回は、東京都が掲げる2020年の東京オリンピック・パラリンピックの「理念」に対して、問題提起とともに新たな提案を続ける同研究会の考えかたについて、詳しく語っていただきました。

東京オリパラにおいて「インクルージョン」を使うべき理由は、大きく2つあります。

1つ目は、「インクルージョン」と言う言葉が都民・国民に「馴染みがない」からです。だからこそ、使うべきなのです。もし東京都・国が「インクルージョン」という言葉を、敢えて東京オリパラの理念の一つとして高く掲げるならば、多くの日本人が「この言葉は何だ?」と疑問に思うでしょう。そして、疑問に思い、分かりにくければ、にくいほど、テレビや新聞など、多くのメディアがその解説を始めるはずです。

そうすることにより、今は障害に関係した人にしか馴染みのない、この「インクルージョン」という言葉が一気に日本全体に広がり、2020年の東京オリパラを契機として、自然と「障害のある人たちの社会への包含、包摂」という考え方が定着することにつながるはずなのです。

2つ目の理由は、東京オリパラという行事が、世界中の国の人たちが参加し、開催期間中、世界中の人たちが注目する文字通り「国際的なイベント」であることです。その際、とりわけその理念というものが海外では大きく注目され重要視されます。日本では、理念よりも、全員参加や、調和という雰囲気が重んじられますが、海外、特に欧米先進諸国では、会運営の「理念」をとても重視します。

その時、「ユニバーサル・デザイン」や、英語に訳しても海外の人に理解してもらうことが難しい「共生社会」ではなく、今、世界が目指している、「インクルージョン」あるいは、「インクルーシブ社会」という言葉を使うべきなのです。
そうすることで、日本がパラリンピックという障害者の社会参加の活動の一つであるスポーツイベントを、世界とも歩調を合わせ、さらにはスマート技術(ITで便利にする技術)により推進していることを、国内外に広く知らせることができるのです。

「インクルーシブ・スマート技術」を世界に!

さて、最後に、前回のコラムで分かりにくい、というご意見のあった、2020年東京オリパラ選手村の「スマート化(ITを使って便利にすること)」について、もう少し分かりやすく説明しておきます。

そもそも選手村のスマート化については、東京都も私たちの働きかけの成果もあってか、当初より目標の一つとして掲げてくれています。
私たちとしては、このスマート化に、障害者の視点をより多く取り入れてもらいたいと願っていますが、この『障害者の視点からのスマート化』には、大きく2つの利点があると考えています。

1つ目は、日本の「スマート技術が世界最高峰のものになる可能性がある」ということです。障害者の視点からの技術開発はハードルが高いです。ですが、ハードルが高いからこそ、日本の「スマート技術」(ここでは、とくにITの中でも人工知能やIoTを指します)は、高品質にならざるを得ない、という理由です。

2つ目は、「インクルージョン」という言葉を“選手村のスマート化のコンセプト”の一つとして掲げることができれば、国内外に、「障害のある人たちが安心安全に暮らせるインクルージョンという考え方を、広くアピールすることができる」ということです。

これら2つの利点を踏まえて表現する言葉として、これも分かりにくいかもしれませんが、
「インクルーシブ・スマート技術」(障害者を社会に包摂するためのIT技術)と呼びたいと私たちは考えています。

この「インクルーシブ・スマート」という言葉を、東京都・国が掲げれば、おそらく世界は、今から日本の持つ高い技術力、それも未来につながる技術力に可能性を感じ、よい意味での投資を始めるきっかけになると思います。それが日本を経済的により豊かな国にし、ひいては障害のある人たちを、ITの力によって多くの人の負担なく「包摂」できる、物心ともに豊かで優しい日本社会の再構築につながっていく、そう考えているのです。

どうでしょうか? 東京オリパラ選手村のスマート化が、障害者の社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)の促進に寄与することを、理解していただけたでしょうか?
また、ご質問、ご意見を頂ければ大変嬉しく思います。
(次回へ続く)
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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部