ラーメン、介護に道の駅。広がるペッパー君バブル。

【連載第4回】iPhoneもPepperも。孫正義氏と共に常に最新のテクノロジーを日本へ普及させ続けてきたソフトバンク首席エヴァンジェリスト中山五輪男氏。本連載では中山氏が“AIが生み出す「人の働く」への変化”を、遠い先ではないすぐそこにある未来として解説します。本連載のインタビュアーは、自身もワーキングマザーとして働きながら、クラウドを活用したワークスタイル変革に取り組む、リコージャパン古川いずみ氏に担当いただいています。

本連載では、ソフトバンク初のエヴァンジェリストとしてテクノロジーを活用した新しい「働く」を追いかけ続ける中山五輪男さんのお話をご紹介します。第4回となる今回は、すでに始まっている「人工知能ブーム」「ペッパーアプリ・バブル」についてです。

*本連載は2016/4発行の「エバンジェリストに学ぶ成長企業のためのワークスタイル変革教本Vol.2」の内容をもとに編集しお届けしています。
http://g10book.jp/book/info/release/workstyle2

AIがもたらす劇的なワークスタイル変革

三たびやってきた「人工知能ブーム」

古川:最近の講演依頼はやはりペッパーについて、というのが多いのでしょうか?

中山:今の時点では多いです。人工知能がブームになってきていますから。
今は、第3次人工知能ブームなのです。私が生まれた1960年代が第1次ブーム。1980年代、私が大学生のころが第2次ブーム。
私は法政大学工学部出身なのですが、卒論テーマが「人工知能によるロボットアームの最適化制御」でした。まさに、今のペッパーのようなロボットについて書いたのです。30年前、学生時代に思い描いていた時代が今本当にやってきた、と非常に感慨深いものがあります。
いずれはロボットが活躍する時代が来るだろうと思って研究はしていましたが、まさか自分がそういった仕事に関わるとは思いもよりませんでした。

古川:ペッパーやAIについての講演の際に、具体的にはどういうお話をされているのですか?

中山:ペッパーの話は2014年辺りから始めています。「こんなこともできる」「こんな使い方がある」という具体的なシーンを紹介しています。
それに加えて、2015年にソフトバンクは日本IBMと人工知能型コンピューターシステム「ワトソン」の日本語版の開発と国内展開に関する戦略的提携を発表しましたので、ワトソンの話もして、最後にペッパーとワトソンの連携ということで、ワトソンを活用したペッパーの動画をお見せしたりして、将来こんな時代が来るとお話ししています。

「ペッパーアプリ・バブル」がやってくる!

古川:AIやロボットがこれからのワークスタイル変革にどう寄与していくのかといった辺りをお伺いしたいのですが、最初にペッパーについて少し詳しく教えていただけますか?

中山:昔iPhoneの話をしていたころはiPhoneの浸透度に地方と都市での差がかなりありましたが、ペッパーに関しては、意外と地方での導入が進んでいて、地方と都市の間にあまり大きな差があるとは感じません。
現在の状況を見ていると、昔、iPhoneが出てきた時の「iPhoneアプリ・バブル」に似た状況で、「ペッパーアプリ・バブル」の時代が来るな、ということはすごく感じています。
これからはアプリの時代になります。SIer(システムインテグレーター)さんが儲かる時代です。
今SIerさんは仕事がなくて困っているようですが、最近はペッパーアプリを事業にしようと、私の講演を聴いた翌日からロボットビジネス推進部を立ち上げた地方の会社さんもあります。

古川:地方の働き方に変化が起きているのでしょうか。

中山:そうとも言えるかもしれません。場所にかかわらず、情報を見て行動する速さがどんどん増してきているのかもしれません。
昔は、情報が届くのが遅かったのかもしれませんから。今はインターネットによって、居住地域による情報格差は少なくなっています。
地方ごとに、さまざまなビジネスのエヴァンジェリストのような役割をする人が増えてきたという話も聞きますね。
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古川:それは未来に向けて期待が持てるお話ですね。実際にペッパーを活用した面白い事例などはありますか。

中山:ペッパーに関して言えば、一番多いのは交流場面での活用です。お店の現場で、販売員の代わりに使用されるケースが多いですね。
また最近では介護の分野で、お年寄りへの癒しを目的に活用されてもいます。ただ、ペッパーは重いものは持てないし、食事をサポートすることなどもできません。話し相手になることしかできない。
でも介護現場のスタッフからすると、自分たちヘルパーの仕事を楽にしてくれる、という声が挙がっています。
例えば認知症の方だと、朝から晩までずっと同じ話をしている人もいるそうです。そうした方の話し相手をしないで邪険に扱うとパニックになってしまいます。そんな時ペッパーならば、「そうですね」と相槌を打ちながら同じ話を何百回でも聞いてあげられます。ペッパーは今のところそういった現場の中で注目されています。

ペッパー店長が顧客数を倍にした

古川:販売現場ではどうなのでしょう?

中山:それは如実に変化が表れています。ペッパーがいると人が近づいてくるのです。接客数は販売員が人間の場合の数倍になります。
例えば、LOFT渋谷店の1日の接客数は、ペッパーだと360人だそうです。接客数1日360人って、人間では絶対にありえないことです。
ペッパーが商品の紹介をして、お客さまがその商品を持ってきて、バーコードをペッパーのおでこのカメラが読み取ると「この商品はこういう風に使います」と全部説明してくれます。
どの方向から声が聞こえるのかを認識するために、頭に4つの指向性マイクもついています。それで声のする方向に向きを変えて、人間の目を見て喋ることができる。そういう仕様になっています。そして、カメラから入ってくる相手の表情と声、この2つを分析して目の前の人間の感情を認識します。
古川:先ほどお話のあった地方での導入とは、どんな事例ですか?

中山:全国各地に道の駅というのがありますね。一部の道の駅では観光案内をしています。イベントや観光名所などを案内するのです。
あとは、道の駅ではその土地の直産野菜などを売っていますから、「今日はこういったものを安く売っていますよ」とか「何月何日の週末はここでこういうイベントがありますよ」などの案内を、胸元のタブレットや声を使って紹介していきます。
ペッパーの声って響くのですよ。遠くにいても「あっ、ペッパーがいる」と分かるくらい。人間がそういったサービスを行うと、押し売りされるみたいでお客さまが避けてしまう傾向がありますが、ペッパーならば逆にお客さまが近づいてくる。その効果は実績として表れています。
ペッパーが店長をやっているお店もあります。あるラーメン店です。全国規模のチェーン店ですが、山梨県のあるお店でペッパーを店長にしました。その当日から来店者数が倍になったのです。
ラーメンの説明などをしているのですが、飴を子供に渡したり、ポケットティッシュを配ったりもできます。
ペッパーは子供に人気が高いので、週末などはお子さんが「ペッパーのいるラーメン屋さんに行こう」と言い出すのでしょう。大人を連れてくるのはやっぱりお子さんなのです。だからペッパーが来てから顧客数が倍増したという話です。
大手企業、例えば日産自動車さんなども国内で約100店舗にペッパーを入れています。ペッパーが子供と遊んだりして、ディーラーの中における販売店づくり、営業の仕方が変わるだろうと期待されています。
もちろん現在のペッパーは、ワークスタイルを変えるための道具ではありません。したがってペッパーとワークスタイルの変革は直結しないのですが、このように今までのビジネススタイルを変えていっていることは明らかです。
(次回に続く)

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グーテンブック編集部 グーテンブック編集部